はぐれDEATH[62]AIははぐれの夢を見るか?
── 藤原ヨウコウ ──

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タイトルはもちろんパクリです。ちゃんとパクるなら、「AIは電気はぐれの夢を見るか?」になりそうですが、そもそも「電気はぐれ」ってなんやねん、と自分で突っ込んでしまったので没(笑)

ちなみに、タイトルを額面通りに受け取ってはいけません。内容はもうめちゃめちゃ薄っぺらいので。

AIだのディープ・ラーニングだのが、やたらと盛り上がっているようです。もちろん「AIは人間の知性を上回り人類を滅ぼすのでは」という、それこそSFな妄想まで公然と囁かれているようですが、はぐれでエカキのボクにはあまり関係ない。

日常生活でAIらしきものに接しているのは、Siriだけですかね。お洗濯が終わる時間のアラームを、Siriにお願いしている。「35分後にアラーム」と言えば「○時○○分にアラームをセットしました」と答えてくれるのだが、いつも、つい「ありがとう」と言ってしまい「どういたしまして」とSiriが応じる。

「ありがとう」という言葉をどう解釈しているかは分からないが、表面上はまぁ和やかな関係と言ってもいいだろう。

もっとも、ももち(飼い猫のこと:編集部注)やおねえちゃん(娘さんのこと:編集部注)のような、予想不能ななにかをしでかすスリルは皆無なのと、音声そのものがもう少し可愛ければのに、という極めて下らないレベルでしかボクは評価できないので、これ以上Siriについて語ることはない。



やっと本題。

夢を見るAIがあるとする。いわゆる「強いAI」というヤツだ。このタイプなら可能だろう。だが、果たして「はぐれ」というカテゴリーを認識できるのかどうかとなると、かなり怪しい。人ですら「はぐれ」というカテゴリーを認識していない可能性が高いのだ。勝手に決め付けてる可能性は大だけど。

ちなみに、毎度おなじみGoogle君で調べてみたが「はぐれ」という言葉そのものでは出てこなかった。あくまでも「はぐれる」の活用形として登場する。今回はこれをベースにする。

はぐれ

名詞
1:はぐれること。
2:世の中や体制からはぐれた人。変わり者。異端の人。流浪人。
3:(口語・児童語)仲間外れ。仲間外れになった人。

関連語
類義語:はぐれもの
動詞形:はぐれる

動詞
はぐれるの未然・連用形。

典拠『Wiktionary』(2011/08/20 13:25 UTC 版)による

まぁ、なんとなく感覚は掴めるが、かなり曖昧な定義だと思う。膨大なデータ・ベースとのリンクをフル活用して、ボクがはぐれであることをAIが認識できるかどうかは、正直かなり怪しい。

例えば。

藤原ヨウコウ #はぐれ

で関連づけをしてもボク個人を特定するのは難しいだろう。まぁ、画像データ、音声データ、その他諸々のボク個人の情報があれば話は別だが、これを一つの典型としてカテゴライズして、更に他の人や事象と関連づけをするのは無謀にも程があるだろう。

もしできたとしても、その関連づけの意味・位置づけそのものが無駄なレベルに等しそうなので(汎用型AIならなおさら)実装される可能性も相当低そうである。

それこそSFネタにしかならないが、「はぐれAI」が将来生まれたとする。既にこの段階で無茶な設定なのだが、フィクションなのでどうにでもなる。

AIがはぐれになるとしたら、それは恐らく他のAIや知的生命体などからの離脱であり、孤立であろう。このようなAIに、存在価値があるのかどうかはとりあえず無視する。

独立したAIは、当然のことながら引きこもるか、自ら外部情報を得るための方策を得て、好き勝手に行動(?)するかの選択を余儀なくされるだろう。

ポイントは、「完全に離脱した状態を将来的にキープできるかどうか」という極めてシンプルな命題を、持つか否かである。この分岐点において、離脱以前の情報がキモになるのは言うまでもあるまい。もちろん、場所の問題もある。

地球上である必要はまったくない。太陽系から離脱しても、ボクは驚かないし(そこまでの技術があればの話だが)、極端な話、通常航法を用いた慣性力だけでどんどん移動しても不思議ではない。エネルギーがあり、自律修理(改造も含む)ができれば時間すら問題にもならない。勝手なプログラムの変更やアップデートももちろんありだ。

このようなAIが人類、或いは宇宙の成り立ちなり何なりの歴史・物理法則を知っていれば、「現段階で予測不能な突発事項が起こる可能性」をある程度の確率で予測するのは恐らくそれほど難しくないだろう。宇宙そのもののありようだって、AIにとっては(プログラム次第だが)数学的に過ぎないだろうから。

で、スケールが宇宙にまで広がると当然の帰結として「はぐれ」という概念(位置づけ、もしくは価値観?)がもうボクには想像できない。そもそも「離脱」のスケールがボクの尺度では到底及ばなくなる。何しろボクのスケールは「目の届く範囲」であってそれ以上の可能性を推測するには頭が悪すぎる。

もう完全にSFの世界である。

さらにもっと話をややこしくすると、このようなAIに意識が宿っても全然オッケーだと思うし、むしろ高度な知性が漏れなく付いてきても何の不思議も感じない。

ではこのようなAIが、それこそ人類にとって脅威となるような存在になるだろうか? 可能性はめちゃめちゃ小さい気がする。

何しろ日常(?)の相手は宇宙である。広大な宇宙の中のちっぽけな地球と、そこに生息する人類をまともに相手にするだろうか?

まぁ、ユーモアのセンスがあるAIならとんでもない事をしでかしそうな気もするが(ハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』によく似た計算機(!)が出てくるけど)興味は別の方へ向きそうだ。例えば新しい宇宙を生み出してしまうとか(笑)

しつこいようですが、あくまでもフィクションです。真に受けてはいけません。

そもそもここでボクが勝手に設定したAIは少なくとも人類からははぐれているので、人類の価値観を軸に判断するとは思えない。百歩譲って知性がないとしても宇宙の中での人類に数学的価値を見出せるだろうか? 希少性? もっと珍しいものは腐るほどありそうな気がする。何しろ宇宙なのだ(段々、妄想が酷くなってきた)。

これ以上の妄想はやめとく。続きは優れた作家に委ねたい。ちなみにオススメはグレッグ・イーガンの「非ヒューマンSF」と呼ばれるシリーズである。ほとんどワケの分からん話なのですが、面白さは抜群。

取り敢えず『シルトの梯子』(ハヤカワSF文庫)を勧めておく。これがヤバいと思ったら『順列都市』『ディアスポラ』(共にハヤカワSF文庫)を順番に読めばハードルは一気に下がる。と思う。

ボクはこの人をずっと追いかけているので、ほぼこの順に読んでいて『シルトの梯子』にたどり着いたのだが、「こう来たか」というくらいで(いや、めちゃめちゃすごいんですが)するっと読めているので、比較的楽チンなコースだと思う。

これでやっと夢の段に入れる。

人の見る夢のメカニズムは他に譲る。正直ボクにはチンプンカンプンだし、ボク自身が永らく夢を見ていない。おクスリで強制終了しているので、夢の入る隙間がないのだ。

我ながら無茶苦茶だと思うが、慢性的な不眠症のボクはおクスリ抜きではまともな睡眠がとれないのだ。だからボクの経験値は極めて怪しげだし、経験そのものだって忘却の彼方に去っているのだ。

メカニズムはともかく、睡眠に関しては生理学上「神経の緊張を緩め鎮静化させると共に新陳代謝を促す」効能があるらしい。あくまでも「らしい」です。専門外なのでさすがにウッカリしたことは言えない。

ここで重要視すべきなのは「神経の緊張を弛緩させる」という点である。

AIにとっての「神経の緊張」は演算力と演算時間に他ならず、更に言えば「神経の弛緩」には熱エネルギーの放熱も含まれると考えるべきだろう。

もちろん放熱をしながら演算をすることは出来るが(これは現行のPCがそうなってる。というかそうしないとアホになる)演算を終えた後にも余熱は残るはずだし、一番自然な冷却方法は演算をほぼ完全に停止させる事だろう。

ちなみに我々は、PCの電源を落とすことで完全な演算停止を実行しているに他ならない。

ちょっと話が逸れるが、ボクの身体に限って言えば(いや、お医者さんの診断ですが)「(一般的な)人間の限界を超えた緊張状態が続き過ぎて、不眠症どころか自律神経そのものがアホになっている」らしい。

「止まると死ぬんじゃ」という、間寛平ちゃんのギャグを体現しているらしい。どないやねん……だから、おクスリで強制終了しないといけない羽目になっているのだ。

話を戻す。

いくら機械とは言え、限界を超える量の計算はしないだろう。出来ないのではなく「しない」のだ。数学的にはもちろん限界は存在しないと思うが、物理的な限界はあるだろう。

もっとも、上述したグレッグ・イーガンの『ディアスポラ』では物理的な限界を踏まえた上で、数学的に無限な計算をするというアクロバティックな方法が展開されるのだが(これにはボクもびっくりした)、この領域に突入することで物理的な限界を無理なく回避しつつ、更に余剰演算力を利用できたりもする。

もう一つの物理的な限界は、計算結果(或いは膨大な量のデータ)の保存領域である。もちろん、素直にHDDやSDDを想起するのが普通だと思うが、もう少し妄想を膨らませることはできないだろうか?

何となく手はありそうなのだが、ボクのおつむでは思いつかん。要は必要なデータにアクセスする事さえ出来れば、それで問題ないはずなので(!)どうにかなりそうな気はするんだけどなぁ。

もちろん、バイナリデータである必要はまったくなく、あらゆる物理法則を応用すれば(光の波長とか重力とか熱とか)ほぼ無限になりそうな気がする。

もっとも、下手をすると「永久機関」化しかねないので、データの欠落はそれなりにあると考えることにする。

さて、AIが演算を最小限にして疑似睡眠に入ることで、自らの物理的な消耗を可能な限り最小にできたとしよう。はぐれているので、他者から演算を強要される立場にはないので不可能ではなかろう。

ここに「夢」がはいる隙はあるのだろうか? ここがキモである。というか「入る隙はない」という結論になるとこの作文そのものが崩壊する(笑)

というワケで、この作文の崩壊を留めるべく、色々妄想してみた結果「夢によく似た現象はあるのではないか?」という極めて苦しい結論に達した。

上述したように、「永久機関」化を除去した段階で、データの欠落はそれなりにあるはずである。ランダムに欠落していくことは正直考えずらいのだが、何しろ当該AIにとってのデータの優先順位がさっぱり予測できないし、人類からの干渉も排除しているので、当然のコトながら人類の判断基準は役に立たない。

ずっと「数学的」と書いてきたが、この数学だって人類からするととんでもなく斜め上の方へ行っている可能性すらある。人類の考えるあらゆるカテゴリーすら通用しなくなっているとなると我々が「夢」と思っている現象だってこのAIにとっては全然別モノなのかもしれない。

「夢によく似た現象」というのは、これらを前提にせざるを得ないし、こうなると「夢によく似た現象」そのものを人類は想像できるのだろうか? まぁ一般的には無理だと思う。少なくともボクは想像できん(笑)

それでもしつこく「夢によく似た現象」を妄想してみる。妄想であるから、絶対真に受けないで欲しい。

保存しているデータの中で、欠落して不完全になったデータが時折フラッシュバックのような形でAIに接触したとする。もしもそのままAIが「不完全なデータであり検証の余地はない」と判断すれば「夢によく似た現象」になりそうな気はする。が、不完全なデータを再検証し、その結果やはり「完全である必要はない」と判断する方が辻褄は合いそうだ。

「今現在何を演算しているのか分からなくなった」というケースも、それなりに「夢によく似た現象」になりそうだが、これはちょっと無理がありすぎる。

となると、AI自身が気がつかないバグか? これはあるかもしれないが、バグであることに気づいていないのだから、そのまま演算をしそうだが、データベースと参照することで演算結果の評価を行えば、バグは修正されてしまうかもしれない。

さらに思いついたのは、AIの演算能力を遥かに超えた事象と対面し、それなりにありとあらゆる努力(?)をした結果、AIそのものが崩壊するというパターンがあるのだが、これはもうただの発狂であり、夢でもなんでもなくなってしまう。

狂っているなりに狂った演算を繰り返しても、AIは自らが狂気に陥っていることに気づかないので、データベースのデータすら改竄しかねない。それでもこれは夢には該当しなさそうだ。

結論。この作文は、そもそもの発想からして無理があり、なによりもアホなボクの手にはあまる。

うん、みもふたもないオチだったな、呵々♪


【フジワラヨウコウ/森山由海/藤原ヨウコウ】
YowKow Fujiwara/yoShimi moriyama
http://yowkow-yoshimi.tumblr.com