りんごを食べていた時、歯が欠けてしまった。ガリっとしたので見てみると、奥歯の側面のカケラだったのだ。そんなに硬いりんごでもなかったのに、元々弱っていた歯だったのかもしれない。
しかも、歯が欠けたことに気づかずにガリっと噛んだせいで、カケラは三つに割れていた。自分の歯を自分で噛み砕いてしまったのである。
歯って人間の組織の中で最も硬いらしい。歯のモース硬度は6~7で、モース硬度5のガラスや5.5のナイフの刃よりも硬い。実際に私の歯のカケラも、指で触ると物凄く硬かった。
私はこんなに硬い歯をガリンと噛み砕けたのに、果物のりんごに負けたことが不思議でならない。
りんごって一体、何様?
昔から歯のCMでもりんごが出てきたように、りんごというのは歯にとっておそらく天敵なのだと思う。
歯自慢の人が誇らしげに、皮付きのりんごを丸かじりで食べているイメージ。天敵を制することができる丈夫な歯と歯茎の持ち主だから、ドヤ顏のCMだったのだ。
しかし、りんごが歯にとって天敵だという根拠ってあるのだろうか。負けた悔しさから、ひねくれて色々と検索してみた。
その結果、りんごは食物繊維が多く、歯茎の健康に良いビタミンCも豊富に含まれている。丸かじりすれば、歯の表面の汚れや歯間の食べかすをきれいにしてくれる効果も期待できるという。さらにりんごのポリフェノールには殺菌効果もあるとか。うーん、良いことばっかりだ。
りんごは歯の味方という側の説だ。しかし、見つけた。りんごが炭酸飲料の4倍も歯に悪いという記事を。
・驚! 炭酸飲料の4倍も歯に悪い食べ物!?
http://news.line.me/issue/oa-allabout/b88153b9264a
参考:「An apple is worse for your teeth than a fizzy drink」
Mail Online
読んでみたのでまとめると、りんごは酸性食品であり食べるのに時間がかかる点で、歯にとって良くないとのことだ。
炭酸飲料は口の中を通り過ぎるだけだけれど、サクサクカミカミを続けるりんごは、口の中をより長く酸性にしてしまうのだろう。
食後すぐに歯を磨いてるから大丈夫と言う人は多いと思うけれど、食べ始めてすぐに酸による歯の脱灰が始まるという。そうだったのか。
上の記事にもあるけれど、りんごの酸性度の高さを中和する方法として、チーズや牛乳を一緒に食べるのが良いそうだ。
確かに私はリンゴのサラダを作る時にチーズを入れるし、口の中の酸っぱさをマイルドに包み込んでくれそうだ。食べている最中の歯にも優しいのは嬉しい。りんごだけが酸性の食べ物ではないから、食事中につまめるようにキャンディサイズのチーズを出しておくのも良い方法かもしれない。
しかし、成分が酸性かどうかというのは、かじる行為そのものとはあまり関係がないので、天敵の根拠としてはちょっと違った。
●噛むことの効果
私はりんごのあのキュッキュッと音がなる独特の食感に、摩擦係数の高さを感じる。りんごの中に歯が入った時に潰されたりんごが、グイっと歯を掴んで離さないようなイメージだ。発砲スチロール的というか、元のサイズに戻ろうとする力がとても高い食品だと思う
今回はりんごが物理的に一番歯にとって厳しいということを、比較しているような記事は見当たらなかった。
しかし、ダイエットに役立つ「かむ回数ランキング」というのを見つけた。食材別にかむ回数がかかるものを比較していて面白い。皮付きりんごは74回で中ぐらいに位置している。
・「ゆっくり食べるだけ!ダイエット」に役立つよくかむ食材ランキング
https://doors.nikkei.com/atcl/wol/magazine/15/010410054/011200003/
結局は噛むのに力が必要だったり、噛む回数が必要な食材は、かえって歯と体の健康に良いらしい。酸性の問題だけ、気をつけていればよいということだと思う。
実はうちの夫の大好物がりんごなのだ。必然的に食べる回数は多いけれど、私はふた切れぐらいしか食べない。皮付きが体に良いというけれど、全部皮を残すのではなく、半分程度皮を残した食べ方にしている。
●噛むことをあきらめない
せっかく噛むことについて調べたので、追加で残存歯について書いておきたい。
私はデンタルフロスの習慣がついたおかげか、抜歯したのは親知らずだけで残存歯は28本全部。これは年齢の割に良いみたいだけれど、50歳を超えるあたりからガクっと残存歯数のグラフが下降していくらしい。私もなんだかそれを実感してきた。
私の欠けた奥歯はクラウンがかぶさっているし、神経を抜いた差し歯も多い。しかし歯の根っこさえあれば残存歯に数えるらしい。
80歳を超えた時にも20本の残存歯を目指そうという「8020運動」というのがあるらしいけれど、日本は残存歯数が他の国よりも低い国なんだそうだ。
今でこそなるべく歯を残した治療を歯科医が考えてくれるけれど、昔は何か問題があれば結構歯を抜いていたという。生きてきた時代の影響も大きいのだ。
80歳を超えたうちの母も、入れ歯を支えるだけの自分の歯があるだけで、数を数えるのもかわいそうなくらいだ。
そして歯を使って物を噛んで食べることは、脳への良い影響がある。歯と認知症との関連はとても密接なことらしい。以下のページが参考になる。
・8020残存歯と健康寿命
https://www.jda.or.jp/park/relation/teethlife.html
「しかし万が一、歯を失ってもしっかり入れ歯を使えば、あらゆる機能は維持される」
もし歯を失って義歯も使用しないと、認知症の発症リスクが最大1.9倍になるという。しかし、義歯を入れることで、体のバランスが維持されて認知症のリスクも転倒のリスクも減るというのだ。確かに力を使う時に歯があることは大事なので、全身に影響がありそうだ。
私も母の健康を心配した時に、上のページを印刷して母に読んでもらい、入れ歯を作り直した。入れ歯だとしても、機能を保てるというのは希望が持てるではないか。
母は入れ歯を入れるのを嫌がってしまうことも多いけれど、まぁ自分のことなので半分は任せている。私は歯の欠けた部分を直しに、歯医者通いがまた始まる。この際全部の歯を見直して、直せる個所は治してしまうつもりだ。
【武田瑛夢/たけだえいむ】
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/
母は最近さらに元気になってきて、会話中もどんどん自分から話題を振ってくるまでになった。一年前は質問に返事をする程度だったのに、驚きの復活だ。
おそらく自分の老化を受け入れる期間が終わって、老いたことが当たり前になったのかもしれない。80歳を超えるという山超えを、ひとつ乗り切ったのだ。「70と80じゃあ、全然違うよ~」と言うのが口癖だ。
それでも母は物忘れでおかしなことが起こると、後から気がついて自分で爆笑している。こうなると私も楽しい。自分の失敗を笑えるようになったのは、素晴らしい変化だと思う。