もじもじトーク[116]夢のようなフォントイベントが実現した日
── 関口浩之 ──

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

今回のもじもじトークは、「夢のようなフォントイベントが実現した日」をお送りします。

●FONTPLUS DAY セミナー Vol.21「中村書体と筑紫書体」

10月9日(水)と10日(木)の2日間、『FONTPLUS DAYセミナー Vol.21[中村書体と筑紫書体]~中村征宏さんと藤田重信さんをお招きして~』を開催しました。

FONTPLUS DAYセミナー Vol. 21 夜の部
https://fontplus.connpass.com/event/146103


FONTPLUS DAYセミナー Vol. 21(再演版)昼の部
https://fontplus.connpass.com/event/146104/


書体とデザインにまつわるイベント「FONTPLUS DAYセミナー」は、年6回開催しています。なので、今年で4年目になりました。おぉ、もう、そんなにやっているのか……。





今回、FONTPLUS DAYセミナーとしては、初めて、連日講演やりました。2DAYSにしたのは、こんな理由があったからなのです。

・「ナール」や「ゴナ」を設計した中村征宏さんの東京講演は15年ぶりなので、ひとりでも多くの人に聞いてほしかった。
・中村さんは愛知県一宮市に在住、藤田さんは福岡県に在住なので、なかなかお招きできない。
・1日開催だと、すぐに定員に達してしまう。
・中村征服さんにとって、久しぶりの東京なのでゆっくり楽しんで欲しかった。
・セミナールームが連日で確保できたから。
・ナール、ゴナ、筑紫書体が好きだから。

「FONTPLUS」というWebフォントサービスを立ち上げた8年前から、僕が大好きな「ナール」書体を制作した中村征宏さんを、東京にお招きしてセミナー開催したかったのです。

ナール・ゴナに関することは、「もじもじトーク[59]ナール、ゴナという書体、知ってますか?/関口浩之(2017年03月23日)」をご覧ください。
https://bn.dgcr.com/archives/20170323140100.html


中村さんは、2004年12月に女子美術大学相模原キャンパスで、「タイポグラフィ・タイプフェイスのいま」というシンポジウムで登壇されました。東京での講演は15年ぶりと書きましたが、15年前は東京ではなく、神奈川県相模原市でした。

さらに、正確に言えば、中村さんの東京での講演は8年ぶりでした。2011年7月に東京ビッグサイトで開催された第15回電子出版EXPOに、中村さんが3日間、講演されました。司会は杏橋達磨さんでした。

写研が動いた日(後半)/亮月写植室より
http://ryougetsu.net/report_shaken2011_2.html


「写研、フォント開放の試みを始めます」のメッセージに衝撃が走ったことは、今でも、しっかり記憶に残っています。

写研が動いた日(前半)/亮月写植室より
http://ryougetsu.net/report_shaken2011.html


そして、一昨年の2017年2月に、上田寛人さんが主宰している「和文と欧文」にて開催されたイベントで、初めて、中村さんとお会いすることができました。

看板文字と中村書体─ナールとゴナと中村書体
https://www.wabun-oubun.net/event_info/archives/241/


さらに、今年4月に名古屋意匠勉強会「ナルホ堂」主催(powered by FONTPLUS)で、中村さんの地元、愛知県で登壇いただいたのです。

FONTPLUSはナルホ堂と「中村書体と筑紫書体講座」を共催
https://fontworks.co.jp/news/archives/343


その流れで、うちの会社のセミナー会場で、中村征宏さんと藤田重信さんをお招きして、二日間で約140名が参加するイベントが実現したのです。

イベントでは、中村さんが1960年代に描いたテレビのテロップ文字の原字、ナールの第1回石井賞のコンテスト応募の時の、原字等の展示も行いました。

中村さんがお話された時は、会場の空気が澄みきった感覚を覚えました。中村さんの真摯で真面目で、優しさと愛情を感じる1時間のお話でした。

当日の様子は、ツイッターまとめと、伊達千代(すも)さんのブログを掲載しますので、ご覧ください。

FONTPLUS DAYセミナー Vol. 21 ツイッターまとめ
https://togetter.com/li/1415234


[中村書体と筑紫書体]レポート/フォントかるたNote
http://bit.ly/32hdMTT


ということで、夢のようなフォントイベントが実現したのです。中村さん、そして参加者のみなさん、参加したくても参加できなかったみなさん、ありがとうございました。

● FONTPLUS DAYセミナーを振り返る

今年で4年目ということで、今までのFONTPLUS DAYセミナーを振り返ってみました。

そうそう、まわりの人から、「毎週末、出張が多くて大変ですね」とか、「80〜100名のイベント主催、大変そうですね」とか、「いろんなところに出没してるけど、各都道府県にひとりずつ、フォントおじさんがいるんじゃないか?」とか、お声掛けいただいてます。

でも、忙しいのはイベントではなく、日々の業務なのです。おかげさまで、「FONTPLUS」は数万サイトでご利用いただいております。なので、日々、かなり忙しいです。

なので、フォントイベントを主催したり、全国のセミナーでフォントをテーマとしたセッションに出演しているのは、息抜きなのです。体力的には、楽ではないですけど……。

あっ、ぶっちゃけ話を書いてしまった。うちの会社の人が、この記事を読んでないことを祈ってます(笑)

企業が主催イベントをする場合、通常、その会社の製品を紹介したり、セールスの香りがするイベントが多いと思います。

でも、FONTPLUS DAYセミナーでは、第2部が始まる冒頭5分間だけ、協賛企業の紹介をしています。その5分間の中の1分ぐらいが、自分の製品のPRタイムです。

内容の濃い、FONTPLUS DAYセミナーを長く継続すること自体が、サービスにブランディングになるのではないと思い、そんな形で、毎回、運営しています。

●セミナーを主催するモチベーション

参加する人が楽しくなければセミナーは成立しません。登壇者も楽しくなければ良いセミナーになりません。主催する側も楽しくなければ、長続きしません。

長続きしているモチベーションは、これら3要素のバランスがとれているからだと思っています。忘れがちなのは、とくに3番目だと思います。

「楽しい」の定義は、人それぞれだと思います。「心地良かった」「ためになった」「刺激をうけた」「腑におちた」「大好きな人の話が聞けた」「知り合いが増えた」「登壇した」「質問した」などなど、なんでもいいのです。

そして、主催者も楽しんでいいと思うんです。それは、手抜きすることではないのです。まだまだ登壇をお願いしたい方が、たくさんいるので、あと数年は、FONTPLUS DAYセミナーを年5〜6回の頻度で開催したいと思っています

僕は、基本的に、自分が大好きな人に登壇をお願いしています。過去にその人に会って話をした際に、「この話は楽しくタメになる」「自分だけ聞くのはもったいない」「みんなに聞かせたい」「とりわけ、ウェブの人に、この講義を聞いてもらう機会を作ったら楽しそう」と感じることが多いのです。

それが、トリガーになって、素敵な方々に登壇をお願いしているのです。過去にFONTPLUS DAYセミナーに登壇された方々は、ウジトモコさん、タキ・オノさん、藤田重信さん、片岡朗さん、副田高行さん、大里浩二さん、樋口泰行さん、佐藤好彦さん、祖父江慎さん、小林章さん、筒井美希さん、今田欣一さん、木龍歩美さん、越智亜紀子さん、本多育実さん、akira1975さん、山田和寛さん、フォントかるた制作チーム(せきねめぐみさん、伊達千代さん、星わにこさん、横田良子さん)、河野三男さん、中村将大さん、山本太郎さん、カワセタケヒロさん、宮後優子さん、土井遼太さん、名久井直子さん、正木香子さん、大石十三夫さん、中村征宏さん、他の皆さまです。

セミナーテーマである「書体とデザイン」にふさわしい皆さまだなと、改めて感じました。

では、次回のFONTPLUS DAYセミナーの告知をしちゃいますね。

■FONTPLUS DAYセミナー Vol. 22
[Typography─A Manual of Design 日本語訳版 発売記念]
~白井敬尚さんをお招きして~

2019年11月8日金曜 19:00〜21:30(受付開始 18:30)
※FONTPLUS DAYセミナーの開催日は基本的に水曜日ですが、今回に限り、金曜日開催となります。お間違いのなきよう、お願いします。
※セミナー募集開始は、10月18日(金)15時を予定してます。
※参加費は無料。先着順。定員100名。

書籍の発売は11月上旬のようです。書籍が発売された直後の、発売記念セミナーです。

Typography─A Manual of Design|タイポグラフィ─タイポグラフィ的造形の手引き
https://www.borndigital.co.jp/book/15292.html


では、また、2週間後にお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)

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1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、Web担当者Forum、Schoo等のオンラインメディアや各種雑誌にて、文字やフォントの寄稿や講演に多数出演。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。2018年も「ベスト10セッション」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。趣味は天体写真とオーディオとテニス。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/


Webフォントってなに? 遅くないの? SEOにはどうなの?
「フォントおじさん」こと関口さんに聞いた。
https://webtan.impress.co.jp/e/2019/04/04/32138/