わが逃走[89]青葉先生の思い出の巻/齋藤 浩

投稿:  著者:  読了時間:2分(本文:約800文字)


デザイナーとして筋が通っていて、なおかつ良いオヤジ。
「青葉先生みたいに年をとりたいなあ」なんてことを飲みながら語り合ってた。
その青葉益輝先生が先日亡くなられたらしい。
伝聞系なのは、何かの間違いであってほしいと思っているから。

いちばん印象に残っている姿は、私が会社を辞めてフリーになったときのことだ。泉屋のクッキーの詰め合わせを持って、まだ銀座にあった事務所へ報告に伺ったとき、にこにこしながら出迎えてくださったでかい体の印象。

でかい声で「齋藤、やっと独立したか」と
緊張する私の肩をたたいてくださった、あのでかい手。
そのときの言葉は鮮明な映像とともに脳裏に焼き付いている。

 クライアントの求めているものは、お前にとって不本意な表現かもしれない
 が、それでも作らなきゃいけない。ビジネスなんだから。

 しかし、クライアントの望むものだけを提出してはいけない。必ず"オレだ
 ったらこうするね"という案も持って行け。

 そしてふたつ並べてみろ。絶対"オレだったらこうするね"案の方が良いに
 決まってるんだ。

 でも、いろんな事情で、結局クライアントの望む案に落ち着くだろう。だが、
 相手の印象には必ずもうひとつの案が残るはずだ。

 そうなれば、次の機会にお前の理想とするデザインが求められる可能性が高
 くなる。それを繰り返すんだよ。

あれから12年経った。
先生の言葉はずっと実践してる。
目標はまだまだ遠いが、少しずつ、自分の考え方(=デザイン)で
クライアントと、その先にいる人と、世の中と、自分自身を
幸せにできたらと思っている。

これからも精進します。
青葉先生、ありがとうございました。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/ >

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。