わが逃走[269]ヒトとの接触を避けつつ少し遠出をしたの巻 その2
── 斎藤 浩 ──

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無用な外出をなんとなく自粛していたら半年も経ってしまった! ろくに走行してない車のバッテリーも心配になってくる。

そんなとき、googleストリートビューで気になる物件を発見、ヒトとの接触を避けつつ、ちょいと群馬県の下仁田まで行ってきたのだった。

ここまでが前回のお話。

さて、駅周辺の気になった物件を後にし、次の目的地・内山峠に向かう。

信州には昔から少なからずご縁があり、佐久へと向かうこの道(国道254号)は通い慣れているのだが、そこへ至る周辺の地理や歴史などについてはほとんど知らなかったし、それほど興味を持たずにきてしまったことを後悔している。

内山峠は群馬と長野の県境、荒船山の登山口としても知られており、厳密には国道254号の旧道に相当する。

現254号は道幅も広くカーブもゆるやか、車の数も少なく快適だが、対して旧道は1.5車線、つづら折りが続く狭い道である。

で、なぜ内山峠なのかというと、この付近に、ものすごく貴重な木造トラス橋があるらしい。近くは何度も通っていたのに!

『廃道をゆく』などの著作で有名な「ヨッキれん」さんのサイトで知り、せっかく下仁田まで来たので行ってみることにしたのだ。

「荒船の湯」付近で旧道に入り、山道を少し上る。いくつかのブラインドカーブを抜け、着いた。ホントにあった!

https://bn.dgcr.com/archives/2020/10/22/images/001





写真は下仁田寄りの端部。これは廃橋ではあるけど「遺構」なんかではない。

木化した蔓性植物がからみついているものの、上路式トラス構造がそのままそっくり残っていた。このトラス橋は、昭和30年代まで現役の国道だったそうな。

つまりこの写真は254号旧道から、さらにその旧道を撮影していることになる。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/10/22/images/002

長野寄りの端部。想像以上にしっかりしている。木々が生い茂り、全体像の把握は困難。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/10/22/images/003

脇道に入り、反対側から撮影してみた。路面に苔が生えてとても滑りやすく、周囲は蜘蛛の巣だらけだ。

秋になり落葉したら、もう少し全体像が見えてくるかもしれない。

で、この物件、とくに産業遺産に指定されているわけではなさそうなんだけど、貴重なものであることは間違いなかろう。

文化財として整備されるべきだと思うが、このまま人知れず朽ちていくのも、いとあはれと思う。

周辺の町並みも風情があり、静かな山道は心も落ち着く。

これからも通ってみようと思うのだった。年内にまた行けるかなあ。


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。