わが逃走[95]沖縄の光の巻/齋藤 浩

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10年近く前、JASという航空会社があって、独自に『誕生日割引』なるものを始めたのだ。誕生日の前後2週間なら本人+1人まで、日本全国どこまで行っても1万円という夢のような企画だった。

どうせならいちばん遠いところ! ってことで、毎年この季節に沖縄に行くようになったのだが、その後いろいろあって、そのサービスは数年で消滅してしまう。

しかし、困ったことに11月の沖縄の良さを身にしみて知ってしまったため、毎年行かない訳にはいかなくなり、結局今年も行ってきたのでした。贅沢だなあ。

今年は午後の便しか取れず、那覇着が3時過ぎ、たらたら走って名護を過ぎたあたりからが、私の好きな沖縄である。空気も波の音も大島蝉の声も、脳内をリラックスさせてくれる。

瀬底島のいつもの宿に着いたのは日が沈む頃だった。この日は我々以外に客はなく、貸切状態。こんなこともあるんだなあ。旨い料理とオリオンビールと白ワインでヘベレケになり就寝。

翌朝、7時頃目が覚める。いつも思うのだがこのあたりの朝の光は独特で、青と白と黒のコントラストがとても美しい。

という訳で、今回は超ピンポイント、本部町瀬底島近辺の光をご紹介します。つい観光写真的なものをお見せしてしまいがちなのですが、あえてその逆をいきますのでよろしく。



1◎壁に落ちる影
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朝、顔でも洗おうかと廊下に出ると、白い壁に美しい影が落ちていたりする。そりゃもう幸せな気分になってしまいます。ただの影なのにね。日差しが強いと陰影も強く、それはそれで沖縄らしいのですが、このようにほんのりと淡く落ちる影もまた美しいのです。瀬底島の宿にて。

2◎東側を眺める
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写真に撮ったからこう見えるんじゃなくて、朝、普通に東側を向くだけで、墨絵のような美しいモノクロームの世界を肉眼で眺めることができるのです。瀬底島の宿にて。

3◎幾何構成
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階段に落ちた柱と柵の影って言ってしまえばそれまでなのですが、こういった『おもしろいかたち』をみつけると、俄然テンション上がります。それに気づけたことにシアワセを感じるというか、そんな感じです。

CONTAX G2に90mmのレンズを付けて撮影。このくらいの望遠レンズって、トリミングの面白さをおしえてくれる良き先生なのです。ほんと、勉強になるなあ。

4◎幾何構成
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階段から宿の屋上を見る。青い空、白い壁に濃い影が落ちる。空がちゃんと青に、壁は白トビせず、影も黒くツブレず。CONTAXのレンズは印象をそのまま焼き付けてくれるようです。

こんな素晴らしいシステムが今、激安。みなさん、そろそろデジタルも飽きたでしょ? 改めてフィルムを使ってみると、日々発見の連続です。

5・6◎波紋
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瀬底島の小さな砂浜までシーカヤックで移動、水深30センチくらいの場所に寝そべって水中用『写るンです』で撮影。意外にちゃんと撮れるので感心した次第。ただフィルムの粒子が荒いのが難点か?

私は子供の頃から、このような水中における光の文様に思わずグッときてしまう傾向にある。きっかけはやはり『未来少年コナン』かなあ。よくアニメ雑誌なんか見ながら波と光のパターンを模写していたのだが、肉眼で本物を見ることができたのは30過ぎてからなのだ。

こんどはスケッチブックと、もうちょっといいカメラ※を持って浅瀬の文様を採集しまくりたい。そして美しいグラフィックを制作するのだ! それを何に使うか、といえば全く決めてないのだが、かたちから入るデザインてのもアリだと思うんです。あとから目的がきちんと見えればね。

※もうちょっといいカメラ
憧れの水中フィルムカメラ『ニコノスV』です。このカメラさえも、もはや激安で買える世の中な訳だが、普通なら防水デジカメにするよね。ああ、でも欲しいなあ、ニコノス。『今更買ってどうするの感』がたまらなく物欲を後押しする。とはいえ、買ったところで水中で使うことなんざ、そうそうないと言えましょう。

というわけで、沖縄の光をご紹介しました。
ふらっと行ってノリで撮っただけなのですが、とても充実しました。
こんどは春先にでも行ってみたいと思う今日この頃です。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。