わが逃走[180]文化都市盛岡をゆく の巻(その1)/齋藤 浩

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,700文字)



思い立って盛岡へ行ってきました。人生初盛岡です。

宮澤賢治や高村光太郎ゆかりの地を訪ねつつ、近代の名建築や昭和的町並み、農村風景をマンキツした次第でございます。

そんなわけで今回の『わが逃走』、盛岡の名所旧跡を紹介とも思ったのですが、そういった紀行文はそこらじゅうに存在しているわけで、さてどうしたものか。

そうそう、話は変わるが先日OLIVERなるサイトで、私の構造美写真が紹介されました。カメラを趣味にしている仕事のできるかっこいい男みたいに書かれていてうれしい。

http://mens.oricon.co.jp/feature/18/




とまあ、せっかくこういった前向きで情熱的な仕事のできるかっこいい男というイメージが形成されたわけだし、今回の旅も前向きで情熱的な仕事のできるかっこいい齋藤浩のライフワークである“構造美”視点で紹介させていただきとうございます。という訳で、市内の名建築をいくつか。

岩手県公会堂

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/001.jpg

この建築は、早稲田大学大隈記念講堂や日比谷公会堂とイメージが重なる。いずれも佐藤功一による設計、しかもほぼ同じ年代のものなので、似ていて当然かも。

竣工は1927年。モダニズム華やかなりし日々からナショナリズムの台頭、といった時代背景がそのまま建築からにじみ出ているようだ。

実際、大正デモクラシーな市民のためのホールでありながら、設計の時点ですでに陸軍大演習の際、陛下をお迎えし大本営とすることもなども考えられていたようだ。

ロケーション的にも旧南部藩ゆかりの史跡に睨みをきかせる立地だし、勝てば官軍という言葉があるけど、こういうあからさまな支配の図式を率先して行うヤナヤツ感は移築されちゃあ体感できないので、末永くこの場所で大切に保存していただきたいところ。

・岩手県公会堂の階段。県議会議事堂側の2階付近

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/002.jpg

若干装飾過多。だがほどよくモダニズム。

・岩手県公会堂の小窓

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/003.jpg

議事堂として使われていた部分のメインじゃない入口の脇。いわゆる受付コーナーといったところか。木製の窓枠にスクラッチタイル。このバランスは実に好み!

・岩手県公会堂大ホール入口

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/004.jpg

やりすぎな修復には反対だけど、もう少し手入れをしてくれてもいいんじゃないか。

・岩手県公会堂裏手の配管

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/005.jpg

古い建物にはパイプスペースなるものがないので、外壁に配管がむき出しで設置されていることが多い。とはいえ、これはこれで面白い造形だと思ってしまうのだ。

・盛岡市消防団第五分団

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/006.jpg

旧「盛岡消防よ組番屋」。大正2年築のモダンな木造洋風建築。中を見てみたかった。


・盛岡市消防団第五分団(部分)

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/007.jpg

表札がかかってるということは、現役なんだろう。まさに動態保存。

・中央タクシー上ノ橋営業所

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/008.jpg

散歩中にたまたま遭遇。シンプルなモダニズム建築。あまりのかっこよさにしばし見とれる。車両がすべてハイブリッドというのもギャップ萌えで◎。

・旧井弥商店

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/009.jpg

二階建て土蔵建築、黒漆喰仕上げ。

・旧井弥商店の貫禄ある入口

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/010.jpg

現在は『盛岡正食普及会』。ここはいわゆる雑貨も売ってる食料品店で、中に入ると昭和な雰囲気の普通なお店。その“普通”こそ貴重! と言えましょう。ここで買った『ロシアビスケット』は硬くて有名。まだ食べてない。

・茣蓙九商店

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/011.jpg

かごとか、ざるとか、たわしとか、ほうきとか、そういったものを販売する店舗を中心に土蔵や住居などがつながってる江戸時代の商家建築。「ござく」と読むらしい。

敷地が広く、道路から、川から、そして中庭とさまざまな表情を楽しめる。まさに建築とは風景。写真左側の複雑なつくりの瓦屋根の構造が興味深い。

・茣蓙九商店、店舗入り口付近

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/012.jpg

シンプルな面と線が交差する、まさに構造美。

・茣蓙九商店、雨樋

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/013.jpg

中庭から見上げる。雨樋を支える金属パーツがまた美しい形状。

・茣蓙九商店、土蔵

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/014.jpg

でっぱりとへっこみがきっちり重なる構造がたまらんです。

・茣蓙九商店、正面

http://bn.dgcr.com/archives/2016/05/12/images/015.jpg

最後に正面から。立てかけられた竹箒など、歴史と伝統なディスプレイが素晴らしい。

と、まだまだ紹介したい物件はたくさんあるのですが、今回はこのくらいにいたしましょう。

盛岡の印象はまさに「文化都市」です。旅先で古本屋に入れば、だいたいその地の性格がみえてくるものですが、ここは実に知的な品揃え。町並みも建築も酒もメシも甘いものも、どれもが素晴らしい。

旅先で、ここが故郷だったらいいなー、と思うことがよくあるのですが、今回もそう。尾道、富山、西米良に続いて、盛岡もオレ的第二の故郷に勝手に認定しちゃいました。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。