crossroads[15]子どもたちと著作権
── 若林健一 ──

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こんにちは、若林です。またまた「子ども向けプログラミング教育」とか「CoderDojo」の話題で恐縮ですが、5月21日から奈良県で二つ目のDojoを生駒市で始めました。

より多くの子どもたちに「ものづくりの楽しさ」を体験できる場をと思い、二つ目を始めたわけですが、初参加の子どもたちが多く、まずはその目的通りに進められました。正直なところ負担は小さくはありませんが「楽しかった」と言ってくれる子どもたちがいる限りは続けていきたいなと思っています。




●作った人の権利

今回も「子ども向けプログラミング教育」の一環で「子どもたちと著作権」に関して触れたいと思います。

子どもたちに自由に絵を描かせると、自分の好きな漫画やアニメのキャラクターを描くように、子どもたちの心の中にはそれぞれのお気に入りキャラクターがいます。

自分で描いている自分で楽しんでいる範囲では問題ありませんが、それを一般に公開したり、他の方が作ったものを無断で使うと「著作権」を侵害してしまうケースがあります。

ひとくちに「著作権」といっても様々な種類があり、深く掘り下げていくと長い議論になるものですが、こと子どもたちに対しては「みんなの好きなキャラクターには、それを作った人がいて、その人たちに無断で使ってはいけない」ということだけを説明しています。

とはいえ、大人でさえきちんと実践できていないことを子どもたちにしなさい、というのはなかなか難しい。

Dojoで主に使っている「Scratch」で公開されている作品の中にも、明らかに権利侵害なものが多数あります。ネット上にはそういったものが公開されていて、しかもそれらがとても魅力的に見えるのに自分たちはダメだ言われる。

この件に関して一番難しいのは、主に小学校高学年から中学生ぐらいの子どもたちです。

この年代になると、ネット上を自由に検索して素材を集め使うことができるようになり、自分の作品に取り込む知恵がついてきます。自由にできるようになれば、それを試したい、ダメだと言わても「なぜダメなんだ?」という。

しかもメジャーなキャラクター(有名なねずみとか、有名なひげおやじなど)であれば自分たちも判断しやすいのですが、最近はマニアックでマイナーな(おそらくそれは私たちにとってであって、子どもたちにはそうではないのかもしれませんが)キャラクターも多数あり、そういったものが使われるとコピーなのかオリジナルなのかの判断が難しく、非常に困ります。

いちいちそれらをあげつらって「コピーではないのか?」と問いただすのも、せっかく楽しく作品作りをしている場の雰囲気を壊してしまいます。とはいえ、まったく知らないふりをするわけにもいかず頭の痛いところです。

●無料コンテンツの影響

スマートフォン向けアプリを中心に「アプリは基本無料」というのも、著作物に対する権利の意識を下げる要因になっているのではないかなと思います。

今、子どもたちに人気の高いアプリに「Minecraft」がありますが、無料で遊べるのはデモ版のみで、遊び続けるには製品版を購入しなければなりません。

PC版、ゲーム機版、モバイルデバイス版など様々な種類があり価格も異なるのですが、例えばPC版なら3,000円程度、モバイルデバイス版だと800円程度かかります。

Minecraft
https://minecraft.net/ja/


「アプリは基本無料」が定着した今では100円でも高い感じられるのに、3,000円ともなると「何かの間違い?」と感じられる方もいらっしゃるようです。

今は「基本コンテンツ」を無料で配布して「拡張コンテンツ」で儲けるビジネスモデルを採用するものが多く、多くの方は無料のままで利用していることから、コンテンツに対するコスト意識が下がってしまっているように思えます。

世の中で提供されているモノ(コンテンツと呼ばれるものを含みます)にはそれぞれの価値があり、他人が作ったものの価値を守ることは、自分たちの作ったものの価値を守ることでもあります。

このことを大人がしっかりと意識しなければ、子どもたちにも伝わりません。まずは大人の意識を変えることが重要だと感じています。


【若林健一 / kwaka1208】
Web: http://kwaka1208.net/

Twitter: https://twitter.com/kwaka1208


CoderDojo奈良&生駒の開催予定
http://coderdojo-nara.org/

奈良:6月11日(土)午後
生駒:6月 4日(土)午後