こんにちは、若林です。
今回は、私がプログラミングの世界に入るまでの話の続き、ソフトウェアのコピーについてお話します。
前回の記事はこちら。
私とプログラミング(入門)
https://bn.dgcr.com/archives/20201110110100.html
■レンタルソフトウェア
当時はインターネットはおろかパソコン通信もなく、今のようにアプリが無料でダウンロードできるような時代ではありませんでした。
コンピュータで動くプログラムを手に入れる方法としては、本に掲載されたプログラムを自分で打ち込むか、市販のソフトウェアを購入するしかないのです。
市販のソフトウェアは安いものでも数千円〜1万円はしましたから、学生の身分ではあれもこれもは買えません。
そこに現れたのが「ソフトウェアレンタルショップ」です。
レンタルレコードのように(CDはまだ出る前、レンタルビデオも一般的ではありません)一定期間ソフトウェアを借してくれるお店です。ソフトウェアを1本買う金額で、数本〜10本程度のソフトウェアを借りることができました。
これも今では考えられないですよね、今こんなお店があったらすぐに摘発されて終わりでしょう。でも、パーソナルコンピュータ黎明期にはこんな商売があったんです。もちろん私も利用していました。安価にソフトウェアを手に入れられるのですから、学生がこれを利用しない理由はありません。
レンタルレコードがあるのだから、レンタルソフトウェアがあってもいいだろうと思っていましたし、当時はまだ、ソフトウェアのコピーに対する問題意識も低い時代でした。もしかすると。法律的にもまだ整備される前だったかもしれません。
そのお店は、大阪のJR京橋駅近くの雑居ビルの一室にあり、学生が出入りするには十分怪しい雰囲気でした。お店の名前は「ソフマップ」、ビックカメラの子会社になった「ソフマップ」同じ名前です。
Wikipediaを見ると、大阪の記述はありませんが、東京でソフトウェアレンタルをやっていたとのことなので、もしかするとあの「ソフマップ」なのかもしれません。
■ソフトウェアのコピーをラジカセで
レンタルしたソフトウェアは当然のようにコピーしていました(もちろん違法ですが、当時その意識はありませんでした)。ソフトウェアをコピーする方法は2通り。
BASICで作られたソフトウェアなら、プログラムを止めてSAVEすればOK。今ならUSBメモリですが、当時はカセットテープです。今のようにファイルの概念はなく、音楽を録音するようにプログラムも順番に録音していきます。
音楽でも録音するところをうっかり間違うと消えてしまうように、プログラムも記録する場所を間違うと消えてしまうので、注意が必要でした。
当時よく売られていた46分とか60分カセットテープを使うと、多くのプログラムが記録できたので、一本のテープにたくさんのプログラムを記録していました。長いテープを使う時は、どこに何が入っているかわかるように、プログラムの名前とカウンターの数字を記録します。
MZはラジカセと同じ頭出し機能があったのでまだマシだったのですが、他の機種は頭出し機能がなかったので、一本のテープにたくさんのプログラムを記録していると、読み出しに時間がかかったそうです。しばらくして、マイコンのデータ記録用に10分とか15分という、短いカセットテープも販売されるようになりました。
コンピュータのデータ記録の量を時間で表していたというのも、今となっては笑えます。
もうひとつの方法は、音楽のテープと同じ「ダビング」です。プログラムはデジタルデータですが、テープの上では音楽と同じなので、音楽テープをダビングするのと同じ方法でコピーできたのです。
当時はカセットデッキが2つついた、ダビング機能付きラジカセが多数あり、私も一台あったのでラジカセでダビングしていました。
この方法でなければコピーできないソフトウェアには、2種類あります。BASICではなく、マシン語と呼ばれる16進数の羅列で作られたもの、Break(BASICでプログラムを止める操作)できない(してもコマンドに戻らない)仕掛けの入ったもの。
これらは、BASICのコマンドでは読み込んだものを保存できなかったので、「ダビング」というアナログな方法に頼っていたのです。
自分で購入したソフトウェアもコピーを作って、普段はそちらを使い、購入したものはマスターとして残しておくということやってました。マスターを残して普段はコピーを使うというのは、仕事でもやってたことなので、我ながらよく考えたもんだと思います。
■コピープロテクト
コピーができるということは、当然それを阻止する方法があります。先に書いたBASICのコマンドで保存できないようにするというのもそのひとつですが、それではダビングを防ぐことができません。
ただ、一部のソフトウェアにダビングできなかったものもありました。ダビングしたものを読み込んでもエラーになるのです。
おそらく、テープに記録される信号レベルを調整してダビングすると、その信号が失われるようになっていたのかもしれません。
■ソフトウェアの歴史は違法コピーとの戦い
その後、記録メディアはフロッピーディスクになり、CDやDVDになり、コピープロテクトの方法もの色んな手法が考え出されました。
最近は、アプリストアでダウンロードしたり、サブスクリプション型にしてアカウントと関連づいていないと使えないようになっていることもあり、コピーして使うという発想がなくなっているように思います。
多くのソフトウェアが無料で使えるようになり、広告や一部の有料ユーザーからの収益で、多くの人が色々なソフトウェアを使えるようになりました。
今の若い人たちが、法に触れることなく自由にソフトウェアを使えるようになったというのは、本当にいいことで、コンピュータの世界の大きな変化のひとつだと思います。
ソフトウェアが充実してくると次はハードウェアを拡張したくなります。次回は、当時のハードウェア拡張についてお話したいと思います。
【若林健一 / kwaka1208】
https://crssrds.jp/aboutus/
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