crossroads[94]私とプログラミング(前夜)
── 若林健一 ──

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こんにちは、若林です。

さてさて、繰り返しのお知らせになりますが、電子工作に必要な基本的なスキル、それぞれの工作で使われている仕組みの解説、実際に世の中で使われている例などが掲載されていて、電子工作をしながらものの仕組みがわかる本が、今週末発売になります。

エレクトロニクスラボ - ものの仕組みがわかる18の電子工作
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4873119243/dgcrcom-22/


この週末に見本誌が届きましたが、写真がたっぷり使われた誌面はそれを見ているだけでもワクワクします。きっと、電子工作の楽しさがみなさんにも伝わると思いますので、書店で見かけたら是非手に取ってみてください。





■私がプログラミングに出会うまで

今ではすっかり「子どもとプログラミングの人」と認知していただいている私ですが、私自身の子どもの頃には、プログラミング以前に関心を持っていたことがありました(というよりも、私の子どもの頃はまだプログラミングが一般的ではなかった)。

今回は、電子工作の本発売記念という意味も含めて(?)私がプログラミングの世界に入るまでについてのお話しをしたいと思います。年寄りの昔話にしばしお付き合いください。

■アマチュア無線

小学生の頃から理科が好きで、学研の「科学と学習」など科学の本ばかり読んでいた私は、中学一、年のころにアマチュア無線に出会い、関心を持つようになりました。写真で見た機材がカッコ良かったのと、遠くの人と自由に話せるのがカッコいいと思ったのが主な動機です。中学生なので「カッコいい」が動機ということはよくある話です。

子どもの頃は(まぁ今もですが)裕福ではない家庭に生まれたこともあり、免許をとっても機材を揃えることは難しいことはわかっていましたが、それでも免許を取りたい、無線局を開設したいと、「初歩のラジオ」や「ラジオの製作」「CQ」などの電気や無線関係の雑誌を読んでは、妄想をふくらませていたものでした。

当時、仲のよかった友人がボーイスカウトをやっていて、その活動の一環でアマチュア無線の免許を取ったのが、羨ましくてたまらなかった。

今は珍しくなってしましましたが、昔は電気屋さんといえば「○○電気」か「○○無線」という名前で、「○○無線」を名乗る電気屋さんは電子部品や無線機器を取り扱っていることが多く、これもまた当時の私のあこがれの的でした。自宅近くの電気屋さんの屋根に、高い垂直ロッドアンテナが立っているのを見ては「かっこいーーーー」と通るたびに見上げていた、そんな中学時代だったのです(笑)。

結局、その当時アマチュア無線の免許を取ることはなく、しばらくアマチュア無線のことは忘れていたのですが、働き出し結婚して友人たちと車で移動するようになってから、遊びに行く時の連絡のために免許を取得し無線機を購入しました。子どもの頃とは動機がまったく違いますが、大人になるということはそういうことなのかもしれません(笑)。

そんな理由だったので、購入した無線機(リグともいいます)はトランシーバー型のハンディ機で、自宅にあこがれの垂直ロッドアンテナが立つこともありませんでした。

■BCL体験

アマチュア無線と並行して関心を持っていたのが、BCL。BCLとは、主に短波で放送されるラジオ局の放送を、受信して聴く趣味のことで「ラジオ聴くだけの趣味ってなに!?」って思われるかもしれませんが、短波ラジオだと海外の放送を聴くことができ、インターネットのない時代に、個人が海外のメディアに直接触れることができる、貴重で衝撃的な体験だったのです。

残念ながら、やはり経済的な理由で私自身は短波ラジオを持つことができませんでしたが、友人がソニーの短波ラジオ(これもかっこよかった)を持っていたので、友人の家に入り浸って一緒に放送を聴いていました。

BCLの醍醐味はただ海外の放送が聴けて嬉しいなというだけでなく、「ベリカード」と呼ばれる放送局オリジナルのカードをもらうことにあります。そのためには、放送を受信したことを報告しなければならず、どこで、どんな機器・設備を使って、どれぐらいの感度で、どんな内容だったかなどを書いた文書と返送先(場合によっては返送用の切手も)を一緒に送らなければなりません。

これはあくまでも報告書であって、リスナーのお手紙的なものではありません。放送局に対して「あなたの電波は、この地域まで届いていて、こんな機器を使ってこれぐらいの感度で受信することができましたよ」ということを報告する、技術的な報告書のような意味合いのものです。

この報告書を送ると、放送局から折り返しベリカードが送られてきます。大きさは局によって様々ですが、葉書大のものが多かったと思います。デザインももちろん各局オリジナルで、これを貰うのがBCLの魅力でした。

ちなみに、ベリカードは短波局だけが発行しているものではなく、日本の地上波ラジオ局やテレビ局でも発行している局があるそうです。よほどの難視聴地域でもなければ、放送局が受信報告書を受け取る意味はないかもしれませんが、視聴者サービスのひとつとして提供されているようで、ベリカードの代わりにキャラクターグッズなどが送られてくることもあるとか。

ラジオを聴いて、報告書を書いて、カードが送られてくるのを待つ、この間一か月とか数か月かかることもあるわけですが(送られてこない場合もあります)、インターネットのない時代の趣味というのは、そんなゆったりしたものだったのです。今思えば、贅沢な趣味だなと思います。

■「DX」はかつて無線用語でした

「DX」って言葉がありますね、「デジタルトランスフォーメーション」を略していう時に使われる言葉で、現在では企業や社会のデジタル活用推進の意味で使われます。

無線の世界では、アマチュア無線で海外や見通し距離外の人と通信すること、BCLで海外の放送を受信することを「DX」といい、遠距離通信のことを指しています。
遠距離通信を主にやる人のことを「DXer」と呼びますが、遠距離通信をするためには高いアンテナや感度の良い無線機が必要になり、それなりにお金はかかるので、要は機材自慢と言えます(笑)。

■無線から電子工作、そしてプログラミングへ

最初は無線から始まった電子機器への関心も、(なんども言いますが)経済的な理由で無線に本格的に取り組むことが難しかったため、電子工作へと移ります。当時は大阪に住んでいて日本橋(大阪の電気屋街、東京の秋葉原みたいなところ)へ自転車で毎週のようにでかけていましたので、部品や必要な道具は揃えやすかったのです。

それでも当時の自分には大きな負担でしたので、それほど多くのものを作ることはできませんでしたが。ちなみに、中学時代に使っていたテスターを今でも持っています。

そうやって電気屋街をうろうろしているうちに、当時盛り上がってきていた8bitパソコン(当時はどちらかというとマイコンと呼ぶ方が主流でした)のことを知り、関心はそちらへ移っていきます。店頭のパソコンでゲームをしていて、店員さんにバチンと電源を切られたこともありました。

こんな流れからパソコンに関心を持った私が、パソコンを買ってもらうチャンスを手に入れ、プログラミングの世界へずぶずぶと入っていきます。この続きはまた次回で。


【若林健一 / kwaka1208】
https://crssrds.jp/aboutus/


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