グラフィック薄氷大魔王[529]TDW制作のペースを早めてみる/吉井 宏

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●TDW制作のペースを早めてみる

ときたま定期的に、TDW(The Daily Work)制作の意義みたいなもの書いておきます。

3日に1個出してたけど、在庫がだぶつき気味なので、しばらく2日に1個出す。本当は1日1個を焦りながら作って、ムリヤリのやっつけで量産するほうがおもしろいものが出てくるんだけど。余裕を持ってていねいに作ってると、ぶっ飛んだものは出にくい。

なぜ3日に1個のペースだったかというと、一年に作るTDWの数は、毎日出したり忙しくてしばらく間が空いたりして、だいたい120個前後になる(ここ10年くらいは)。

ルールを変えて「作り置きOK」にすれば、時間あるときにどんどん作って3日に1個出していけば、自動的に1年121個になる。そりゃ気がラクだ、そうしよう!ってことで、昨年の後半からそうしてた。

あと、ここ重要なんだけど「なぜ飽きもせず、同じようなものを作り続けてるか?」について。





TDWを1999年に始めてすぐわかった利点は、「毎日1点ずつ新作作って出してると、今やってる作風にすぐ飽きてくる。興味を持続するには新しい作風に変えざるを得ず、加速装置というか成長促進剤的に機能する」。

だから、いろんな作風を探りつつ、ツールも初期はPainter、ときたまIllustratorその他、Photoshopでペイントに移行、2003年くらいからZBrushに移行、次にCINEMA 4D、そして2005年くらいからMODOへ。

3Dにしてからの作風も(僕の中では)かなり変化しているつもり。初期は紙粘土みたいだったし。

で、今のMODOの作風はちょうど10年前の2007年8月、TDW_1487でツルツル質感にフレネル反射(物体の周辺部など視線に平行に近い面の鏡面反射)を加えたときに決まった。作り方は何度も微妙に変えてるけど。
http://yoshii-blog.blogspot.jp/2007/08/tdw-1487.html

以来、ほぼ10年。なぜか飽きないw どんどん面白くなる。飽きるためにやってるのにw

・最新のTDWと、下部にアーカイブのリンク
http://www.yoshii.com/tdw-8.html


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com
Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/

ここから下の後記は、最近のめちゃ面白かった話題二つだけど、上の本文に入れずに軽めに流したい。なぜ入れたくないかというと、Webの話題に便乗してあーだこーだ書くだけに近いから。

○「なりたい!」の本気or思いつきを識別するフィルタ

「一撃必殺!急にマンガ家だの声優だの絵師だのになりたいと言い出した子どもや大人を止める、オススメの方法」
https://togetter.com/li/1130025

「全力で応援する」ww おもしろい!

「頭ごなしに反対する」もフィルタとして有効と思ってたけど、こっちも残酷なまでに有効w 結局、親が何を言っても「やる奴はやるのよ、やらない奴はやらない」。

どんな「夢みたいにあこがれる系の仕事」も同じだろうけど、「レールから外れて後戻りできず、うまくいっても行かなくても一生苦労する系」は特に。後で気づいた場合、「頭ごなし」のほうが傷は浅いかもしれないなw

↑どちらも子供と親両方の人生を破壊する危険があるので、面白半分に試しちゃダメ。どちらかのフィルタがうまく効いて「おお! 本物だった」で大成功なら結果オーライだけど、それ以外は全部しこりが残る。一生恨んだり恨まれたり。

あと、「今まで作ったものを見せてよ!」は言っていいけど、極端な課題を課すとかは、さすがに意地悪い。本物だったとしても、やる気をしぼませる。基本的に本人次第でしかないので、邪魔せず放っておくのがいいと思う。「父さんあんなに反対してたのに、おまえの作品をスクラップしてるよ」とかw

やっぱ、「プロスポーツ選手になりたい!」だと割とはっきりしてるよなあ。その場合、周囲との比較や実績があっての発言だろうし。その種目をやってないのに「なりたい!」はありえなそう。

自分がどうだったかといえば、「マンガ家になりたいだなんて雲をつかむような」と親には相手にされなかったけど、四六時中作ってたり描いてたことは何も言われなかった。そもそも母が描く人だったから。

その後、学校の成績がどんどん悪くなっていき、マンガも大変ってわかってきて、気がついたらこっち方面にしか行き場がなくなってたw

このバーバラ・アスカって人のまとめ、先日の↓もおもしろかった。
https://togetter.com/li/1128334

余談。そういえば思い出した。「なりたい系の仕事」で、文章を書く仕事ってあるじゃん? 今だったら「ライター」って職業があるのは知ってるけど、昔、小説やシナリオなど創作系以外に文章を書く仕事って知らなかった。原因は、中学の時に夢中で読んでた模型雑誌。

模型雑誌に作例だの解説だのいっぱい文章が載ってる。こういうの書いてるのどういう人なんだろうな? きっと好きな模型作って文章を書いてそれで食ってる人たち、うらやましいな〜と。初期はそう思ってた。

ところが、その雑誌を読んでるとたまに、筆者の人たちが大学生だったりヘタすると高校生が書いてることが、記事のエピソードからわかってくる。つまり、趣味の延長として模型雑誌に書いてる人がいるらしい。

で、僕の思い込みが発動するw すべての雑誌に文章や記事を提供してる人はその分野が趣味の人で、たぶん無料か安い原稿料で書いてるのだろう。映画雑誌やSFの雑誌も同じく。

さすがに趣味の人だけではなく、編集部の人も書いてるんだろうと思うようになったけど、自分が本を書いたり雑誌に記事を書いたりするまで、プロの外注ライターなんて知らなかったのでした。

あと、記事は筆者主体に書くものだと思ってた。(すべてではないにしろ)編集部やクライアントの意向に応じて書くのが、プロのライターなのに。

本心ではイマイチと思ってても「このソフトはいいよ!」って記事を原稿料をもらって書くのは「物書きにとっての敗北」だと真面目に思ってた。だから、僕の記事や本は、メーカーの意向をまったく入れてない、めちゃくちゃ正直なものだったんだよっ!w

○創造性と謙虚な日本人

「日本のZ世代は世界に比べて「創造的」ではない? 自らを「創造的」と回答した生徒はわずか8%」
http://www.adobe.com/jp/news-room/news/201706/20170629-japan-gen-z.html

昔は何か描いたり書いたり作ったりすることが娯楽だったけど、今の遊びはほとんど消費だからなあ。ただ、今の若年層の自己評価はそうかもしれないけど、30年前とか60年前の自己評価はどうだったのか? の数字がなけりゃ、この調査はまったく意味を成さない。

誰かが書いてたけど、「日本語できますか?」の質問に、挨拶の言葉2〜3個知ってるくらいで「日本語できるよ!」って言えちゃう脳天気(イメージ)な外国人とかいるわけだし。日本人若者の「創造的」の理想像が高すぎるのかもw

Adobeの調査だから、「創造的」がいわゆるクリエイティブ系に狭まって回答されてるかもしれないしね。あと、調査を受けたのが学校の必修カリキュラムで集まった生徒たちか? クリエイティブ講座に集まったもともと創造志向な生徒たちか? にもよるだろうし。

創造的とかクリエイティブって、ゼロから何か生み出す的な特別なことに思われがちだけど、ほんのちょっとの工夫とか改善って、日本人の得意とする所じゃんね。仕事だけじゃなくほとんどすべての活動にクリエイティブは関係ある。おそらく、「創造的」という言葉をこの質問に選んだのが間違い。

日本語的に創造的とかクリエイティブっていう言葉がまぶしすぎるんだと思う。「あなたは創造的ですか?」にハイ! って答える神経はないw

おまけに、ジジイになっても人間国宝になっても「まだまだ修行が足りません」って本気で思ってるじゃん。出る杭にはなりたくないし。その意味で、天狗になれない日本はあんまり楽しくない国かもしれないw

とか思ってたら、切り込み隊長やまもといちろう氏がこんなこと書いてた↓『「自分は創造的ではない」と思うのに、海外から創造性を絶賛されてしまう日本人の気質問題』
https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13144524.html

また、ストレートに受け取ったとしても、最近の内向きで活力を削ぐ「日本すごい!日本えらい!」のカウンターとしては有効かも。以前の盲目的な「外国すごい、追いつけ追い越せ」も勘違いな部分が多かったんだろうけど、発展の原動力にはなったし。

まあ、たいていの意識調査は「それを知ってどうするんだ?」だけどね。


・スワロフスキーのLovlotsシリーズ「Hoot the Owl」
http://bit.ly/2ruVM9x

・ショップジャパンのキャラクター「WOWくん」
https://shopjapan.com/wow_kun/

・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii