グラフィック薄氷大魔王[692]ペンタブ形状の不満について
── 吉井 宏 ──

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何度か書いてるけど、ペンタブレット(主に板タブ)の不満について。今回はFacebookで「そうそう」と共感してくれる人がいくらかいたので、自信を持って書くw

この記事がきっかけだった。

「元ワコムスタッフらが作ったXencelabsのペンタブが発売」
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1309774.html


「そして競合――名指しはしていないがワコムのことと思われる――がプロ向けペンタブレットの新製品を5年以上も出していないといった不満がユーザーから出ている」

……今の形のIntuos Proの発売は2017年夏なので、5年以上ってことはない。それでも4年近く出してないのは事実だけど。





WACOMの独占状態かというとたぶんそんなことはなく、例えばAmazonで「液タブ」や「板タブ」で検索すると、XP-PEN、HUION、GAOMONなど、他社製品ばかり出てくるくらい、活況ではあるんだけどねw

少なくとも、格安液タブに対抗してWACOMも廉価版液タブをリリースしなきゃいけないくらいには競争状態。まあ、知的財産権を侵さない限り、メーカーが競いあうのはいいこと。

ただ、このXencelabsの製品写真をひと目見て、「あ〜、このメーカーもわかってないんだ」と残念に思った。

フチが狭すぎるし、特に手前の傾斜がダメ。手がずり落ちるんだよ〜! 傾斜面に掌がかかると、描画面とペンの角度が変わってしまって描けない。WACOM製品も同じ問題がある。

左右のフチを狭くして、製品をコンパクトにしたいのは理解できなくもない。しかし、手前の傾斜に何か特別な人間工学的な意味があるのなら、説明してほしい。(手の置き場所問題、まったく気にならないって人も多いから、僕が特殊なのかもしれんけど)

以前のIntuosの幅広の傾斜にくらべれば、現行のIntuos Proは大きな傾斜ではないものの、それでも1.3cmくらい傾斜してるフチがある。この問題を理解してたら、傾斜で1.3cmもムダにするより、平面を1.3cm延長した上でスパッと断ち落とすはず。1.3cmの余裕ってかなり貴重。

僕的には摩擦調整と完全平面の実現の意味で、カッティングマットを乗せてるけど、カッティングマットの厚み3mmはジャマくさい。傾斜とフチの問題がなければ、コピー紙でも敷いておけばOKなのに。

ユーザーの好みに合わせたペンタブ筐体を、ゼロからの開発じゃなく既存のユニットを使って、どんどん作ればいいのにな。ガワだけならリリースしやすいと思うんだけど。

もうひとつ、人間工学的問題。もう普通に不思議とも思われず定着しちゃって久しい件(こちらも個人差大きいけど)。WACOM標準ペンのあの太い「グリップペン」って、ドクターグリップをお手本に作られたそう。

リリース当初からずっと言い続けてるんだけど、ドクターグリップはノートなどに小さい文字をしこたま書くためのボールペン/シャープペンなので、指先を大きく動かせない。絵を描くための形状じゃないと思う。

僕はもっぱら、以前のIntuosペンの流れを汲むClassicペンを使ってる。数年前に「Pro Pen slim」という細身のグリップペンも出たけど、僕的にはまだClassicペンのほうが好き。

Mac内を検索したら、21年前、2000年秋のメールのやりとりに「プロフェッショナルペン」という名前でリリースされたペンについて書いてるな。

「性能は普通のintuosと同じですけど、ゴムのグリップ付きでしっかり持てて疲れないです。ただし、僕には太すぎる~~。UDシリーズの細いペンくらいにしてほしい~~。その点、VAIOに付いてるペンはintuosのより細いので描きやすいです。」だってw

Xencelabsの板タブにはグリップペン的なペンに加え、細いペンも付属してるのが良い。

ただ、こんな意見もあったのね。「初期のIntuosは筆圧強めで描く必要があり、力の入れやすい太めのグリップペンがユーザーからの要望で生まれた」、と。

『プロ待望の細ペン登場 refeia先生が「Pro Pen slim」を試したよ』
https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1905/27/news030.html


◯おまけ「Huion Inspiroy KeyDial KD200」

キーボードの左半分がくっついた、小型ペンタブレット。主なキーボードショートカットが使えるようにか、おもしろい。右利き専用ではあるものの。あるいは、キーボード右半分を右側につけてくれてもいいな(フチに関してはほぼ無いがw)。

https://www.huion.com/pen_tablet/InspiroyKeydial/kd200.html



【吉井 宏/イラストレーター】
http://www.yoshii.com

http://yoshii-blog.blogspot.com/


映画「2010年」を36年ぶりに配信で観たんだけど、最も時代感覚が混乱した映画かもしれない。なにしろ、2001年を描いた1969年の映画の続編として作られた、2010年を描く1985年公開の映画を、2021年の今、観たわけで。

1985年の25年後の未来世界が、2021年からは11年前の過去。ロイ・シャイダーがApple IIc(1984年発売)を2010年に使ってるし、ソ連も健在。ずいぶん違った未来に来ちゃったなあw

○吉井宏デザインのスワロフスキー

・十二支(丑年)OX
https://bit.ly/37gbNEN