わが逃走[216]銀座のトマソンの巻/齋藤 浩

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アートテラー・とに〜氏が主催する、『みんなの大東京建築ツアー』に行ってきた。三度目の参加。

今回はトマソン建築ツアーということで、講師に伊藤嘉郎氏を迎え、銀座のディープな裏路地をみんなでワイワイ巡るという、夢のような企画。

一人でカメラ持ってきょろきょろしていると、不審者扱いされることもあるけど、みんなで歩けば大変心強いのだ。

それにしても、トマソン好きがこんなに大勢集まるとは!

なにやら、建築ツアー10年の歴史始まって以来の集客だそうで、キャンセル待ちもかなりの数に達したらしい。

ややテンション高めの日曜の午後、銀座6丁目からツアーはスタートした。





(トマソンとは、前衛美術家である赤瀬川原平先生が発見・提唱した、建築概念。大雑把にいえば、かつて機能していたものがその一部を封じられることで生まれる、無用の物件をさす。

その強烈な存在感に対し、作り手の意図が存在しないため、芸術を超えた「超芸術」といわれている。ネーミングは、高価な契約金に対しまったく役に立たなかった野球選手に由来する)


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高所物件。かつて連絡通路として機能していたものが、隣のビル解体とともに塞がれ、トマソンとなった。

トマソンはスクラップ&ビルドの狭間に出現することが多く、芸術のように保存されることもないので、常に一期一会のはかなさがついてまわる。それはそうと、断面の縦横比がたいへん美しい。

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隣接していた物件が解体され、壁にその影が焼き付けられたもの=原爆タイプと呼ばれるトマソン。これは「無用窓」も同時に現れた例。

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今回のトマソンツアーで最も感動した物件。高所ドアと呼ばれるものの一種で、階段やベランダ等が撤去されそこに通じていたであろうドアのみ取り残されたもの。しかも2階から7階まで連続している。これだけでも壮観である。

さらにこの物件の特筆すべき点は、ドアとしての機能を終えた後、第二の人生を街灯として歩んでいるところにある。

2階ドア中央に堂々と固定された街灯の、男気あふれる設置されっぷりを参加者全員で堪能したのだった。

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建築の切断により出現したカステラタイプのトマソン。トタンの微妙な色調、陰影のバランスはモンドリアンを彷彿させる。いやむしろそれ以上といえよう。

なぜなら、トマソンには制作者の意図は一切存在しないからだ。

つまり意識された美は作為によるものであるのに対し、トマソンは無作為の美なのである。無作為は作為よりエライのである。

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換気ダクト。とに〜氏が休憩場所を探す途中に発見。これは機能しているのでトマソンとはいえないが、この存在感はスゴイ。

写真はほんの一部であり、実際は飲食店の換気扇から建物外周を3/4周まわった後、道路を超えて向いのビルの壁面へとりつき、屋上へと続いている。まさに機能する彫刻といった様相である。実に壮観。


とまあ、1時から5時過ぎまで銀座・京橋界隈を歩きまわり、数々の名トマソンが紹介され、また発見されていった。今回紹介したものはそのごく一部である。

それにしても伊藤先生のトマソン発見&把握能力はすばらしい。ツアー第2弾が開催されたら絶対行きます。

その後懇親会でさらに盛り上がるのだった。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。