わが逃走[226]新しいカメラを手に入れたはいいが。の巻/齋藤 浩

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普段使い用、散歩用、記録用と称してコンパクトカメラを一台携行している。もともとデジタルのコンパクトカメラは、写真なのかCGなのかわからない絵が出てくるので、イマイチ好きになれなかった。

ところが6年ほど前、ソニーのRX-100を手にして、その印象が大きく変わったのだ。

1インチセンサーと28-100mm相当のカールツァイスレンズを搭載したそれは、画質的にとても納得のいくものだったし、(ソニーの一眼レフを使っていたこともあり)取説を読まずとも操作に勘がきく点もイイ。

RX-100は私にとって初めて、ストレスなく撮影できるコンデジだった。





必要にして充分。これにファインダーが搭載され、もう少し広角に寄った明るいレンズがつけば文句なし。なんて思ってたら、その二年後にRX-100M3が発売となり、迷わず買い換えた。

搭載レンズはより明るい24-70mmに変更され、ポップアップ式の電子ファインダーも搭載された。にもかかわらず、サイズの変更はほとんどナシ。文句のつけようがなかった。

RX-100シリーズは、以降も高感度耐性、連写やオートフォーカスの高性能化など年々進化し続けているが、私にとってそれ以上必要な機能がなかったため、その後四年間、RX-100M3を使い続けた。

で、最近、もう少し望遠の画角が欲しいなあ。なんて思い始めた。たとえば建築などの構造物を撮影する際、全体はよいのだが、部分を記録するときに望遠端70mmは少々短すぎる。

とはいえ、画質は維持したいし、70mmでも使えないことはないのだ。どうしても望遠が必要なら、一眼を持ち出せばいい。しかし一眼はデカくて重い。なんとかならないものか。

と思っていたら、先ごろRX100-M6が発売された。

ほぼ同じボディサイズで、レンズは24-200mmに変更。しかし値段が高すぎる。ライカのコンパクト、C-LUXとほぼ同じ価格帯だ。

C-LUXも1インチセンサーを搭載。ボディはRX100よりも一回り大きいサイズでf値は暗く、最小絞りも8というスペックだがズーム域は24-360mm相当。

望遠に強いってことは、絞りに頼らずともボケの調整ができるし、手ブレ補正と高感度性能により、レンズの暗さはフォローできそうだ。なによりもカメラに「ライカ」って書いてある。

これだけで良い写真が撮れる「ような気がする」!
よし、だったらライカだ!

俄然その気になってしまった私は、思い切って長年愛用していたRX-100M3と、出動回数のほとんどなくなったレンズらを下取りに出し、たまっていたショップのポイントを合わせ、差額三万円程度で手にすることができたのだった。

●「ような気がする」

新品のライカを買うなんざ、初めてのことだ。しかし、このカメラはパナソニックのOEMで、性能はほとんどLUMIX TX2と同じである。

だったらパナソニックを買えばいいじゃんと思う人も多いわけだが、TX2は見た目がダサイのだ。わざとダサい外装を採用して、ライカに気を使っているのだろうか、と本気で思ってしまうくらいダサイ。

逆に言えば、このダサイ外装を変えただけで(実際は独自のチューニングもされていると信じられているが)ライカは付加価値を上げているのだ。

パナソニックはそれで満足なのだろうか。まあ、ダサいものの方が売れるというマーケティング結果もあるけどね。

昔、マツダのユーノス500という素晴らしいデザインの車があったけど、あれは「美しすぎる、高そうに見える」という理由で売れなかった。そんなことも反映されて、現代の日本のシステムは動いているらしい。

私は「お客様の声」を聞くよりも、「お客様」の想像の斜め上をいくデザインを提示してほしいし、美しく使いやすいプロダクトとはこういうものだと、企業側から「お客様」に示してほしいと願っているのだが。

さて買ってから気づいたけどMade in China。まあそれはいい。

C-LUXは、質感も色も素晴らしい。持っているだけで楽しいし、イイ写真がとれる「ような気がする」。これはひとえにライカというブランドのなせる技か。

デジカメを買うのは四年ぶりだが、その間にものすごく基本性能が上がっていた=過保護になっていたことに驚く。

しかしオートフォーカスの異常な高性能ロックオン機能や、タッチスクリーンでの操作など、生理的にキモチワルイ機能は全部オフにした。人間がカメラの言いなりになる筋合いはないのだ。

操作に慣れてきたところで、試し撮りをしてみた。

望遠側への寄りっぷりはとくにスゴい。「このへんまでかな?」と思ってもまだまだ寄っていく。たいしたものだ。手ぶれ補正の効きっぷりも秀逸。望遠端360mm相当で、手持ち1/30以下でもブレないのだ。どうかしている。

ファインダーも見やすく、ストレスは少ない。

撮って出しのjpgも充分美しく自然。とくに標準〜望遠域の描写がイイ。しかし、RAWデータの自由度が狭まっているような印象がある。

RX100のときは、どんどんイメージに近づけて調整していくことができたが、C-LUXのRAWは、いまひとつ言うことを聞いてくれないのだ。

RWL形式のものをLightroomCCで、またDNGに変換したものをLightroom5で現像してみたが、昔のソフトでjpgを再現像しているような、融通のきかなさを感じている。

もちろん使い方や慣れの問題もあると思うし、まだ使い始めて数週間なので、これから徐々にデータの癖や傾向をみつけつつ、納得のいく絵が得られるよう楽しくつきあっていこうと思う。

そんなわけで、いくつか撮影、現像したものをupします。

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逆光。黒をツブさないよう調整した。これは比較的イメージに近く仕上げることができた。

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ほとんど陽も暮れきって、雲にわずかな残照。手持ちでISO3200、f3.4、1/25秒。実際はこんなに明るくない。ほとんど夜。

この高感度性能は実にあっぱれ。ノイズも個人的にはまったく気にならないが、場合によっては現像時に粒子を加えると、自然な仕上がりになると思う。

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道の駅から浅間山のてっぺんを最大望遠(360mm)で切り取る。手持ちでISO200、f8、1/800秒。コンパクトでここまで寄れるのはスゴい。粒子は現像時に加えている。

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中山道の小田井宿にて。例によって、黒はツブさぬよう、白はトバさぬよう調整したつもりだが、慣れ親しんだRX-100に比べると作業はかなり手間取った。

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瓦なんかも、もっとギラッと硬さと黒さを表現したかったのだが、なかなか思い通りに調整するのは難しい。それがこのカメラの特徴なのか、私が慣れてないだけなのか。

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西を背にして自分の影を撮影。もう少し黒の中の黒の調子を出したい。

ブランドに目がくらみ、使いやすかったRX-100M3を売却してまで手に入れてしまったこのカメラ。正直なところ、後悔と諦めを意識しないよう、日々努力を重ねております。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。