crossroads[52]デザインとはなにか?
── 若林健一 ──

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こんにちは、若林です。

今年のグッドデザイン大賞に、「特定非営利活動法人おてらおやつクラブ」が選出されました。私も10月から組織内のIT利用のサポートでお手伝いしているのですが、今回の受賞を大変嬉しく思っています。

貧困問題解決に向けてのお寺の活動[おてらおやつクラブ]
http://www.g-mark.org/award/describe/48291


デザインといえばモノやロゴなどの目に見えるものをイメージされるため、おてらおやつクラブのロゴがグッドデザイン大賞に選ばれたと誤解されている方もいらっしゃいますが、ロゴではなく「おてらおやつクラブ」の仕組みそのものが「良いデザイン」として評価されての受賞です。





■おてらおやつクラブの仕組みとは

おてらおやつクラブの公式サイトには、このように説明があります。

「おてらおやつクラブ」は、お寺にお供えされるさまざまな「おそなえ」を、仏さまからの「おさがり」として頂戴し、子どもをサポートする支援団体の協力の下、経済的に困難な状況にあるご家庭へ「おすそわけ」する活動です。
https://otera-oyatsu.club/about/


お寺のお供えものは余ってしまい廃棄するケースもあるらしく、これを必要とされる方に届けることで、誰かが負担を負うことなく(もちろん集めたり届けたりする作業などの負担はありますが)お寺に「ある」お供えものを、必要としている家庭に届ける仕組みです。

今では、おすそわけされるのはお菓子ばかりでなく、お米などの主食や日用品などもあり、おすそわけされることを想定しておそなえされる方もいらっしゃるそうです。

この取り組みが、「社会の流れをデザインした」として評価されたということなのです。

平成最後のグッドデザイン
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181102/k10011696631000.html


■困惑する意見も

一方で、今年のグッドデザイン賞の審査員のひとりであり、建築家でデザイナーの浅子佳英さんが、自身のTwitterでこのようなことを発信されておられました。

「念のために言っておくと、今回大賞を受賞した作品や作者に対して異議を申し立てている訳ではありません。あくまで審査員に対してです。それはデザインのプロフェッショナルであるにもかかわらず、あれを一年で最も重要な作品だと本当に考えているのかと。美しさを今年は審査基準にすると言われていたのに」


この前に、やや感情的なTweetがあり、それに対するフォローのTweetなのですが、感情的なTweetの方については、ご本人も謝罪されているのでここでは触れません。

このTweetにも最初は不快感を持ったのですが、時間を置いてみると浅子さんの言われることがわかるような気がしてきました。

浅子さんがおっしゃっているのは「そもそもグッドデザイン賞って何だったのか?」ということであって「おてらおやつクラブがダメだ」ではないのです。

浅子さんと私の感じ方が同じかどうかはわかりませんが、デザインの専門家としてグッドデザイン賞の審査員に選出されているのに、専門外である「社会課題の解決」をデザイン観点で審査しろと言われても困るのかもしれません。

そもそも、それらを評価するのは「グッドデザイン賞」なのか、もっと別の賞の方が適切なのではないか、その中であえて「グッドデザイン大賞」として選ばれなければならないのか? と考えられ「そもそもグッドデザイン賞とは何のか?」を問われていると思います。

時代は「モノ」中心から「コト」中心に変わっている、というのもグッドデザイン賞の審査員の方ならとっくにご存知のはずで、それをことさら今持ち出すものでもないのでは? というのもわかります。

例えば、今回別の製品がグッドデザイン大賞を取っていたら、前述のNHKの記事も変わっているはず。

もし「モノ」中心から「コト」中心に変わるべきだということを強く考えているのなら「平成最後のグッドデザインもコト偏重であった」という、否定的なトーンになってもおかしくはありませんが、おそらくそうはならなかったでしょう。いずれにせよ。授賞に対しては肯定的な記事になると考えられます。

この議論もいずれは収束するでしょうけれど、また来年のグッドデザイン賞の審査の時期には再燃するでしょう。「社会の仕組み」をデザイン観点で審査するのであれば、審査員の選定基準から変わっていかなければなりません。

■貧困問題を知ってください

そういった議論は専門家のみなさんにお任せするとして、やはりこの活動が良いものとして評価されたのは嬉しい限りです。

誤解のないように言っておきますが、おてらおやつクラブの目標は「グッドデザイン賞を取ること」ではありません。社会に残っている貧困問題を解決することです。

今回の受賞によって、おてらおやつクラブの活動を知り、日本の貧困問題を知る方が増え、支援してくださる方が増えることが期待できる、という意味において嬉しいのです。

日本においても、約280万人(7人に1人)の子供たちが貧困問題に直面しています。この記事を読んでくださったら、どんな形でも結構ですので支援をいただけると大変嬉しいです。


【若林健一 / kwaka1208】
https://croads.jp/aboutme/


子供のためのプログラミングコミュニティ「CoderDojo」
https://croads.jp/CoderDojo/


貧困問題に取り組みお寺の福祉活動「おてらおやつクラブ」
https://otera-oyatsu.club/