もじもじトーク[135]まちもじ探検記 ガムテープ文字「修悦体」との感動的再会!
── 関口浩之 ──

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

今日のテーマは、先週に引き続き、「まちもじ探検記」です。

前回の「まちもじ」は、松屋銀座のエレベーターボタンの文字のお話でした。40年前に制作された上品で愛らしい文字が、毎日さりげなく表示されています。

毎日の生活の中で、少しだけ意識的に視点を変えて景色を見ると、インフォメーションの役割をしている看板や標識などの文字の裏側には、素敵な物語が存在していることがあります。

今日のもじもじトークは、JR新宿駅東口で再会したガムテープ文字「修悦体」のお話です。





●ガムテープ文字「修悦体」

まずは、いつも通り、僕が撮影した「まちもじ」の写真を掲載しますね。じゃーん!

http://bit.ly/mojimojitalk135


たくさんの「修悦体」の看板が、JR新宿駅東口駅前で使われていました。大漁です。

※修悦体の誕生秘話は、もじもじトーク[103]で詳しく解説していますので、そちらもご覧ください。
https://bn.dgcr.com/archives/20190307110100.html


街中で見つけた素敵な書体探険記 その2 ~ガムテープ文字(修悦体)~
https://bn.dgcr.com/archives/20190307110100.html


ガムテープ文字「修悦体」に数年ぶりの再会したので、その探検記を書きます。

特筆すべきことがいくつかあります。3年前にJR新宿駅山手線ホームで、実物の修悦体を発見した時は、「左側通行」以外のガムテープ文字は、ほとんど見つかりませんでした。

今回は、「新宿駅」「通れません」「ゴミを捨てない」「タバコ(アイコンマーク)は喫煙所で!」「立入禁止」「鉄建・大林・フジタJV」「東口ヤード」「関係者以外立入禁止」など、たくさんのガムテープ文字を発見しました。

最初の写真の「新宿駅」ですが、「宿」の表情とバランスがいいですよね。「駅」の四つの点も、うまく処理しています。3本のガムテープの2本目にスリットを入れています。4本共に等幅にしてしまうと、バランスが崩れるのだと思いました。

2つ目の写真の「れ」の文字、「れ」に見えないけど「れ」に見えます(笑) 文脈から脳が勝手に「れ」と判断しちゃうのかもしれませんが。

でも、よく見てください。「れ」の横線の最後の筆使いが、「れ」を連想させています。そんな末端処理をしています。意図的にデザインしたのかはわかりませんが、修悦体にはそんなことを連想させる魅力があります。

3つ目の写真の「ゴミ」および「で」の濁点処理、素晴らしいですね。濁点を字面の中に、丸二つを配置することで、全体のバランスが心地よく、楽しく感じられます。風通しがいいですね。

おっ、「ゴミを捨てない」の「い」を見てください。やはり、筆の動きを表現しています。やはり、「とまれ」の「れ」は、筆使いを表現しているのですね。

タバコのアイコンマークも見事です。ガムテープには、いろんな色のテープがあるので、ビジュアル表現する上で効果的です。感嘆符「!」の赤のガムテープ、視覚伝達上、役に立ちますね。感嘆符は、エクスクラメーションマーク(exclamation mark)、びっくりマークともいいます。

「立入禁止」も芸術作品です。スーパーマリオゲームができそうです。左端の「立」から始まって、切れ目をジャンプして進んでいくと、「止」に辿り着きます。「入」のバランス、「止」の文字の形といい、縦横が洗練されたグリッドシステムって感じですね。

「止」の一文字だけを眺めていると、ゲシュタルト崩壊してきました。あれっ、動物のリスにも見えてきました(笑)

最後のほうの写真で「関係以外立入禁止」の看板がありますが、その看板の裏側を見たら、「左側通行」の文字が見えました(笑) そうです。3年前に、JR新宿駅の山手線ホームで出会った「左側通行」の看板でした。最後の2枚が証拠写真です。

修悦体との感動の再会でした。

●FONTPLUS DAYスペシャルライブ(まちもじ特集)のお知らせ

『FONTPLUS DAY』という、文字にまつわるセミナーイベントがあります。会場でのイベントが24回、今年7月から再始動したオンラインライブは3回、開催しました。この4年半で合計27回、セミナー開催してきました。毎回、たくさんの方にご参加いただき、ありがとうございます。

さて、オンラインイベントは、日本全国から(世界中のどこからでも)参加できるというメリットがあります。そこで、スピンオフ企画として、今月9月25日に「FONTPLUS DAYスペシャルライブ」を開催することにしました。

昨日から受付開始しましたので、もじもじトークの読者のかたも、ぜひ、参加ご検討ください。

FONTPLUS DAY スペシャルライブ2020秋 みんなで愛でよう! 私の「まちもじ」特集〜フロップデザイン加藤さんとマニアッカーズデザイン佐藤さん生出演〜
https://fontplus.connpass.com/event/186547/


●私の「まちもじ」

今回のイベントで、みなさんの周りの身近な「まちもじ」を募集しています。

「私のまちもじ」応募フォーム
https://bit.ly/fontplusday-machimoji


『FONTPLUS DAY スペシャルライブ2020秋 みんなで愛でよう!私の「まちもじ」特集』のイベントページで、「まちもじ」の事例サンプルを掲載していますので、参考にしてください。

タバコ屋の昔の看板でもよし、アース香取線香やオロナミンCの琺瑯看板でもよし、手書きのかわいいお店の看板でもよし、気になる文字にまつわるものなら、なんでもOKです。

「まちもじ」は、情報伝達としての役割(インフォメーション、サイン)だけでなく、感情や楽しさを訴える要素(エクスペリエンス、エンターテインメント)があります。そして、「まちもじ」を制作した人の情感、人柄、生き様なども感じとることができます。

ぜひ、お気軽に、「FONTPLUS DAYまちもじイベン」トへのご参加、「私のまちもじ」の投稿、お待ちしております。

では、また、お会いしましょう。


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関口浩之(フォントおじさん)

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1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現SBテクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この25年間、数々の新規事業に従事。現在、活字や文字の楽しさを伝えるフォント伝道師(エバンジェリスト)、フォントおじさんとして活動。