グラフィック薄氷大魔王[64] フィギュアの塗装
── 吉井 宏 ──

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タブレット&Painter Classic・Essentialsで絵を描こうワンフェス(ガレージキットの祭典「ワンダーフェスティバル2006夏」海洋堂主催)に行ってきた。入場制限がかかるほどの混雑だったけど、初めて行った一年前とは微妙にちがった印象。前回はその造形のすごさと情熱に単純に圧倒させられたが、今回は技法の難易度や造形材料について多少は知っているので、もうちょっと突っ込んだ部分まで冷静に観察することができた。そうなると、やはり形そのものの出来や、造形の詰めや仕上げ具合がとても気になってくる。すごいものはすごいが、すごくないものはすごくないのであった。

ところで、ある展覧会用のアクセサリーとして小さなフィギュアを作った(9月まで公開しません)。キーホルダーか根付けのようにぶら下げるもの。以前にCGで作ったキャラクターを元にしたのだが、今回よくわかったのは、CGそのままの形をフィギュアにしてもあまりおもしろくない、ということ。同じ形でも仕上がりサイズの大小によって微妙にデフォルメしなくてはいけないようだ。作ったのは6.5cm程度なので、CGのオリジナルよりもかなり丸っこくデフォルメしてみた。


とりあえず三つだけレジン複製して二つ塗って仕上げることに。何がつらいってやっぱり塗装が一番大変。手塗りなので一個塗るのに何時間もかかる。とてもめんどくさい。最初はボディを二色で迷彩的塗り分けをしようと思ったのだが、あまりの面倒さに途中までやりかけて断念。マジに1個に丸一日かかってしまいそうだった(目はクロマテックで作ったので楽だったけど)。なにかいい方法を見つけないと販売用に何十個の量産なんかとてもじゃないけど無理。

Webで調べてみると、中国の工場では銅製の型を当ててエアブラシを吹くようだ。日本のソフビ工場などでも金属製の型を当ててエアブラシ。色数分の金型が必要なため、めちゃめちゃコストがかかるようだ。他にはパッド印刷(タンポ印刷)という方法があるらしい。うちにあるいろんなフィギュアをルーペで観察すると、多くのソフビが「型とエアブラシ」の方法で塗ってあるようだ。

ということは、原型を元に型を作ってエアブラシ吹けばいいんだな。試してみる。シリコーンで作れないかと思ったけど、塗り分けラインを正確に切り抜けないしミスった場合に修正が不可能。じゃあ、パテではどうか。ポリエステルパテは強度が足りないっぽいので、まずエポキシパテで作ってみた。原型(元の原型じゃなくて複製だけど)にワセリンを塗りたくった上にエポパテを盛って待つこと数時間。見事に原型に接着されてしまった。取れない〜。

どうにかバリバリと剥がし、次はポリパテ。こちらはうまくいった。でもやはりもろい。補強にエポパテを盛り付けてる最中に割れてしまった。もう一度ポリパテで作り直して、今度は注意深くエポパテを盛り付けて補強。塗り分けラインをデザインナイフやヤスリで削り出し、なんとか完成。

で、禁断のエアブラシを買ってきた。なぜ禁断かというと以前書いたように「部屋中に塗料とシンナーをまき散らす野蛮(笑)な道具」だと思うから。しかし、ここまできて引き返せるか〜。うまくいくかテストしてみた。地色を塗った上に型を当てて固定し、エアブラシで一色目を吹き付け。うまくいった。二番目の型を当てて二色目を吹く。こちらは塗料が濃すぎてツブツブ状になってしまい、ちょっと失敗。

でも、中国の工場で塗装したような、ちょっと柔らかい境界線で美しい塗り分けができた。こりゃあイイ!! これなら量産も苦にならない。型を作るのは時間がかかるけど、一旦作ってしまえばややこしい迷彩模様のキャラクターだって量産可能!

その後、詳しい人に「プラ板をヒートバキュームで曲げてマスクに使う方法」「ラテックスを厚く塗って切り抜く方法」なども教えてもらった。またいろいろ試してみるつもり。

【吉井 宏/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com
初めての3DCGキャラクターアニメーション仕事がリテイクも含めてほぼ終了。約15分75カットにくらべりゃ、前に作るぞと言ってたオリジナルアニメ15秒なんか、まったく屁みたいなもんだ〜! と思ってしまいそうになるけど、やっぱこういう大変な作業ってのは、気合いと締切なしに完成させるのは無理ということがよくわかりました。

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吉井 宏
アゴスト 1999-01
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by G-Tools , 2006/08/23