グラフィック薄氷大魔王[74]モールスキン、レビュー記事風レポート
── 吉井 宏 ──

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Moleskine Plain Notebook Large第71回「モールスキン」の続編です。

自分で買う勇気はなかったので、バースデープレゼントとして所望&入手。いくじなし野郎め。

●結論:品質はイマイチだが、普通のノートの十倍書きやすい

入手したのは無地のラージサイズ。しばらく前から品質が落ちているという話もあるが、日本のメーカー製のように隅々までキッチリ作られているわけじゃないことは見ればすぐわかる。最初と最後のページの糊の幅が広くて見返しの紙にベッタリくっついており、2ページ目からしか使えない。6枚の紙が綴じられた24ページ分を背で糊付けして束ねてあるのだが、いかにも強度不足ですぐ割れ目が入って分解してしまいそう(実際、お店の見本はここでページが分離してしまっているものが多い)。黒いゴムバンドは古いパンツのゴムのようなビロンビロンだ。


まあ、半年で使い切るならぜんぜんいいと思うし、ヨーロッパの職人が作った原初的帳面の味わいも感じられるので、品質の多少の善し悪しはいいとしよう。

僕的に一番関心があったのは、ページが180度開いた状態での書きやすさ。買ったばかりの状態では、最初と最後の部分以外では180度開くのはむずかしい。しかし、新しいページを開く度にしっかり開いてクセをつけてやれば、たしかに完全に180度開いた状態で使える。中央ノド部分に段差がなくなるので左側のページに書くのが苦痛でない。それどころか、左右ページにまたがる絵を描くことさえ(なんとか)できる。ということは、21x13cmの1ページではなく、見開き21x26cmを1単位として使える。ラクガキにはもってこいだ。

見開きの下部や右ページの右端(つまりノートの端)ではどうしても段差が生じてしまうが、折りたたみ式の台を作って対処した。これでなんとか段差から解放される。

ゴムバンド(持ち運びの際にページが開かないようにとの目的)は便利だから追加されたのではなく、これがないとダメな必需品らしい。というのは、各ページを180度しっかり開いて使っているとクセがつき、ノートを閉じてもだらしなく膨らんでしまう。それを押さえるためにゴムバンドが必要なようだ。

しおりのひも。素早く書きかけのページを開くのに便利だが、書くときはけっこうジャマかもしれない(ゴムバンドも表紙と机の間でゴロゴロしてジャマなことがある)。

紙は、一見スベスベだが微細な凹凸があり、鉛筆やシャープペンがよく乗る。Hの芯がHBかBくらいに乗ってくれ、いい感じの摩擦係数でしっかり書ける(注1)。芯ホルダーの青赤芯の書き味は今まで使った紙でベストに近い。水性ゲル系ボールペンはちょっとかすれ気味でいい感じ。油性ボールペンではこの紙の良さはわからないだろう。本来は万年筆がいいんだろうけど持ってないので。

机の隅に置いてメモに使う用途では、フットプリントがリングノートのように片ページサイズにならず見開きサイズなので、置き場所にある程度の面積が必要。おまけに片側が浮いてしまうので、あまり格好良くはない。

持ち運びでは、サイズも重量もいい感じだしゴムバンドでしっかりまとまるので具合がいい。Gジャンのポケットにスッポリ収まるのも「脳の延長」って感じで気分もいい(VAIO Type Uのときも似たようなこと言ってたけど)。表紙の紙が厚くて硬いのでペンを差しておけないのが残念だが、背表紙と紙の間に引っかけておけないこともない。

結論としては、モールスキンは一般のノートに比べて確かに十倍書きやすく、値段だけの価値があるのはよくわかったのだが、僕的には「A4ペラの紙のほうがさらに十倍書きやすい、つまり、ペラ紙は普通のノートの百倍書きやすい」ということになった。つまり・・・

●結論2:書きやすさではペラ紙に勝るものなしだが、ノートや手帳など束ねた紙のくくりではモールスキンは最強かも

次に買うモールスキンは厚手の用紙の「SKETCH BOOK」にしてみようかな。縦開きラージサイズを横位置で使うのも良さそうだ。

ちょうど今月号の「日経ビジネスAssocie」の手帳特集で、糸井重里氏が「手帳は極私的な道具であって他人に見せるもんじゃないから、公私混同メチャクチャでOK」みたいなことを言ってる。そりゃそうだ。意識的にブレーキをかけつつも「モールスキン1冊丸ごと作品にしちゃうぞ」からどうしても逃れられなかったけど、糸井氏の言葉で吹っ切れた。もう、「左ページに書くのがラクなラクガキメモ帳」に徹しよう。作品意識が出たら「負け」だな。

(注1)
一般に売られているノートやレポート用紙には、なぜあんなにスベスベツルツルの書きにくい紙が選ばれているのか? 誰も文句を言わないんだろうか? あんなツルツル紙に字や絵が気持ちよく書けるわけないと思うのだが。伊東屋に、モールスキンに似たドイツ製のゴムバンド付きノートがあった(メーカー名は忘れた)。このノートの紙はなんとクロッキー用紙。綴じは普通なので180度開かないのが残念だが、これ以上書きやすい紙はないだろう。PMパッドでできたノートがあればさらにいいのだが。

余談。先日RHODIAのA4の4穴レポートパッド(黄色)を見つけて衝動買い。「高橋幸宏氏は黄色いメモ用紙1枚でレコーディングスケジュールをすべてコントロールする」と昔何かで読んで以来、かっこいいなあと、黄色い用紙になんとなくあこがれていた。モールスキンもiCalもあるので予定表的には本格的な出番はなくてラクガキ専用になるかもしれないけど、罫線入りの黄色い紙は気分を明るく保てて非常に良い。

【吉井 宏/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com
ドラマもマンガも見てませんが、「のだめ」っていったい何? と思ったけど、ウェブ検索したら一発でわかった。なあんだ。しかし、「のだめ」という単語は田舎出身の僕には「肥だめ」と「野つぼ」の両方を連想させ、どうしても絵と臭いが頭に浮かんでしまう。意図的なネーミングかな。
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by G-Tools , 2006/11/01