グラフィック薄氷大魔王[77]ハロウィンとクリスマス
── 吉井 宏 ──

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ハロウィンが終わって11月はじめ頃から早々とクリスマスムードのショップを見ると、何か他にやることないのかって思う。「○○ムード」とか関係なしのフツーじゃいかんのかと。せいぜい2週間前くらいからしかクリスマス気分になりたくないぞ。

夏が終わってからクリスマスまでがあまりに長いため、狭間を埋めるためなのか。ハロウィンがもともと「お盆」に相当するイベントであることなどほとんどの人が知らないんじゃないか?(僕も割と最近知ったけど)。もっと言えば、クリスマスが何のお祝いなのか知らない若いやつもいるんじゃないかと心配。


いろんな習慣や祭りって、都合のいい方・楽しい方へくっつき統合していき、元が何だったかわからなくなるらしい。Webで調べてみると、クリスマスはローマ時代の年末のお祭りや冬至や収穫祭などに加え、イエス・キリストの誕生日を同じ時期に決めたことで認知度大幅アップ。加えて、ゲルマン神話の冬至にプレゼントをくれる神が聖ニコラスにすり替わって後年サンタクロースに進化。プラス、どの国にもある年末のお祭りやプレゼント神と結びついて地球規、模で大ブレイク、ってところらしい。赤い服のサンタクロースはコカコーラの宣伝イメージが定着したもの(正確には赤服サンタはもうちょっと以前からあったけど、サンタを親しみやすいジッチャンとしてキャラクター展開したのがコカコーラだそうだ)。

ハロウィンも、古代ケルトの収穫祭・お盆・大晦日(ケルトは10月31日が一年の最後の日)やローマの果物の女神の祭を土台に、カトリックの万聖節が混じってキリスト教的に定番になったらしい。ハロウィンもアメリカではお盆的な意味はほとんどなくなって、単なる秋のお祭りになってるらしい。

両方とも、アメリカの映画やアニメによって世界的にイメージが定着していく(文化侵略という面もあるけどね)。近年でいうと「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」はとんでもなくうまいことやったよな。今後100年ほどは定番まちがいなしだ。

ハロウィンを日本で流行らせてやろうって山本コウタロー氏らがはしゃいでたのが20年も前。ラジオで聞いていて非常に違和感があった。見え見えの仕掛けは大嫌いだ。クリスマスは世界的に年末のお祭りで定着しちゃったみたいだからいいけど、バレンタインデーやホワイトデーは特に良くない。っていうか、クリスマスのデコレーションケーキって不二家が始めたらしい、日本独自の習慣って知られてないでしょ。

記念日に何かを買おう贈ろうってのはたいていそうだ。スイートテンダイヤモンドなんてのが出てきたときは、きたねえ手を使いやがるとあきれかえった。ボジョレーヌーボーだって似たようなもの。サンジョルディの日に本を贈るやつなんか見たことないぞ。いろんな業界がこぞって「○○の日」を制定しても、ことごとく滑ってるのが救いだが。イースターもそのうち誰かが持ち出してくるだろう(サンクスギビングデーや独立記念日はどう考えても無理があるだろうけど)。

まあ、土用の丑のウナギだって仕掛けとしては同類だけど、知っていて乗せられて楽しむのと、昔からの習慣と勘違いしたまま飲み込まれるんじゃ、意味がぜんぜん違うぞ、と思うのであった。宗教商業関係なしに、楽しそうなお祭りをどんどん取り入れて楽しむ日本人を、一神教の国々に見習ってもらえばもうちっと世界も平和になると思う。

ちなみに、今日11月22日は、「長野県りんごの日」「回転寿司記念日」「大工さんの日」「いい夫婦の日」「ボタンの日」だそうです。僕は何もない普通の平日がいちばん好き。月月火水木金金。何でもない日バンザイ!

【吉井 宏/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com

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