グラフィック薄氷大魔王[87]3Dデータ立体出力
── 吉井 宏 ──

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あこがれの3Dデータ立体出力。ついにその機会がやってきた!

(株)リアルファクトリーさん(CAD関係の立体出力機器やソフトの販売会社)のユーザー事例紹介の企画。CINEMA4Dからの出力ってことで、発売元の(株)TMS(MAXON Computer)さんの紹介で、立体出力を原型にフィギュア試作をすることになりました。もちろん試作に終わらせず、数十個複製→販売まで行くつもり。


(株)リアルファクトリー「CINEMA 4Dを使ったユーザー事例」
< http://www.rfactory.co.jp/case/cg_room/yoshii/index.shtml
>

写真はブログにもあります(1月13日より)。
< http://yoshii-blog.blogspot.com/search/label/Toys
>

まず、2体の3Dデータを立体造形していただいた。モデリングにはもちろんCINEMA4Dを使用。ポリゴンを細かく再分割し、それぞれ十数万ポリゴン。STL形式で渡した。上下2面からの切削方式と、樹脂積層式の2種類のマシンでそれぞれ出力する。

出力完了の連絡を受けてさっそく受け取りに行く。

●切削式

切削方式は工業製品の金型さえ作れる精密マシン。クリアなアクリルブロックを削ると透明になるくらいの高精度。ドリルで垂直に削るので逆テーパー不可なのは弱点(回転軸を付けて360度から削ることもできるが、精度は多少落ちるそうだ)。両面からの切削は、けっこう手間がかかるらしい。ケミカルウッドのブロックを機械に固定、正面を上から削り、ひっくり返して背面から削っていくと、途中から空中に浮いた状態になって削れない。なので、ひっくり返した状態で彫った正面側に石膏を流し込んで固定する作業などが必要。

「Kuma-Jiro」。高さ9cm、幅7cm、奥行6cm。こんな小さいものでも12時間かかったそうだ。切削中に5本のドリルを自動交換したそうで、これが高級なものは1本1万円。マシン自体も個人で買うレベルの値段じゃない。機械占有時間や手間のコストとか考えると、こういった立体出力サービスがすごい高額なのは当然な気がする。(ローランドなどからホビー向けの安価な切削マシンが出ているのでほしかったりするのだが、ドリル交換は同じだし、騒音が半端じゃないらしい)

素材はケミカルウッド。ほぼツルツル状態で驚異的な仕上がり。このまま原型にしたいところだけど、ドリルの直径より細い彫り込み部分が甘いので(ドリルを替えればもっと細かい部分も可能だが、時間が余計にかかる)、目や口は深く彫りなおしたい。あと、ドリルに平行な部分はちょっと平らの部分がある。これをシリコン型取りしてレジンに置き換えた上で、仕上げ作業を行なうが、たいした手間はかからなそう。立体出力おそるべし!

●積層式

積層式のマシンはどんな形も出力可能。具体的には、熱でABS樹脂を溶かしてノズルから出して積み重ねていく仕組み。極細のマヨネーズがチュルチュルとぐろを巻く感じ。おもしろいのは、肩から下へ伸びた手などをどうやって空中に積層するのかと思ったら、土台の支持体も別の樹脂で同時に積層しつつ、土台の上に積み重ねていくんだそうだ。見せていただいた見本ですごかったのは、ボールベアリングの模型。全体を出力した後でベアリングの隙間の支持体を薬品で溶かせば、完全一体型でクルクル回るベアリングができてしまう。中国の透かし彫り・入れ子細工みたいな。

「TV-Dog」。高さ9cm、幅6.5cm、奥行き11cm。中空で軽いけど、凹まないように井桁っぽい構造になっている。積層式マシンは出力の手間はかからないそうだ。3Dデータを読み込ませてボタンを押すだけ。出力時間は8時間で、切削式よりぜんぜん手軽だそう。

ただし、仕上がりは切削式より数段落ちる。側面はいいとしても、天面底面の部分は樹脂に隙間が空いているほど粗い。一層分が0.26mmとはいえ、等高線のような段々がかなり目立つ。本来のマシンの使い方としては、積層式で全体の形状を確認してオーケーだったら、切削式で型(つまり凹型)を彫るのだそうだ(積層式にはモデリングワックスを使う高精タイプもあるそうだが、こちらは未経験)。

今、両方の原型を仕上げる作業中なのだが、切削式はほとんど手間無し。積層式はレジンに置き換えた上で、分厚くパテやサーフェイサーを塗ってから改めて削り出しするような具合。原型制作で最も大変なのは表面仕上げなので、ヘタすりゃアナログで原型1個を作るのと手間はかわらないし、アナログ経験がなければ仕上げるのは無理だろう。

とりあえず、3Dソフトで納得行くまで形状を練り上げられるのは素晴らしい。今までは3Dソフトでどんな気に入った形を作っても、利用できるのはモニタや紙の平面でしかなかった。個人で作った3Dデータを立体にできるのなら、フィギュアはおろかどんな工業製品でも地続きってこと。いろいろ拡がっていきそうでワクワクする〜。

【吉井 宏/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com

1月に告知するのを忘れてしまいましたが、音楽イベント「ポッドマン!」は最終回を終了しました。最後ということで総勢9名の大盛況(マジ)でした。1年と少しの間、ありがとうございました。で、メンバー3人はこれからもユニット(?)として音楽活動は続けていきます。目指せiTMS。

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