グラフィック薄氷大魔王[94]挫折者のための整理法アイディア
── 吉井 宏 ──

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「仕事がデキる人の方法」の本を買い集めるヤツにかぎっていつまでも仕事ができず、「時間管理」本を集めてる人ほどダラダラ時間を費やす。「整理法」の本を蒐集するのは最悪で、部屋には何十冊もの整理法本が散乱してるに決まってる。……僕か。

「時間管理」は必要に迫られてある程度なんとかなりつつあるものの。「整理法」はぜんぜんダメ。メインの仕事部屋は表面的には比較的片付いているように見えるが、実は本棚やクローゼットの中身を入れ子構造にしたり空間を詰めたりして収納の密度を限界まで上げているだけなのだ。なので、モノを探しにくいし、奥から取り出すときは悲惨な状態になる。CDはMP3に変換して全部売っちゃえと思ったところ、1枚数十円にしかならないそうで、そんなら絶対手放すもんか! と、プラスチックケースを捨ててジャケットごと不織布袋に入れて、収納容積を数分の一に圧縮できた程度。

一方、物置部屋。昨年レーザープリンタと用紙の山を処分したとき久しぶりに床面が見えて感激したものだ。ところが同じ頃からフィギュア制作に手を出してしまったため、細々した道具や段ボール何箱もの材料や塗料、ドライブースやスプレーブースなどの大物に加え、完成した原型やシリコン型があふれ返り、収拾がつかない状態になっている。床はまったく見えず、モノの間に足をねじ込んで足場を確保しながら分け入るような状況。立体造形に手を出すと部屋がひどいことになるのは人から聞いてたし、だからこそ避けてきたけど、その危惧は正しいものであったと、今なら自信を持って言うことができる(泣)。


整理法とは結局「モノの捨て方」であることは多くの指南書にあってよ〜く知ってるんだけど。こういう仕事をしてると、過去に集めた本や雑誌をめくったときにポロッとアイディアが生まれたり、記憶の隅に残ってて「あ、あの写真」と思いつくことが多い。なので、何かアイディアやヒントが生まれる可能性がゼロの本しか捨てる対象にならないのだ。当然、可能性ゼロの本など買わないわけで、購入する本の大半は最初から捨てられない運命にある。

実は、今夏は本来なら部屋の更新時期にあたるため引っ越しもいいかなと、今年の頭から半年かけてモノを整理・処分する予定だったのだが、例の大勝負のため引っ越しごと中止。まあ、これから一〜二年かけてあせらず整理しようかというところ。マジな話、ちゃんと整理・処分すれば、間取りが一部屋少なくて済むはずなのだ。

で、整理法の定番の「使ってないものは捨てる」「迷ったら捨てる」などを踏まえた上で、いくつか「これは特効薬かもしれない!」と思ったアイディアがあるので紹介する。

・「デジカメで撮る」

思い出や記録的な意味でどうしても捨てられないものの大半に有効。デジカメで撮ってしまう。手ブレ防止機能のおかげで手軽にできるようになった。写真にそのモノの形が写っていれば、モノ本体はけっこうどうでもよくなることが多いようだ。また、捨てられない本や雑誌などにも有効。以前は必要なページや写真を切り抜いたりスキャナーで取り込もうなどと考えていたが現実にはあまりの作業の手間から実行できずにいた。パラパラとページをめくりながら、ちょっとでも引っかかるページがあったらすかさずカシャ。すかさず資源ゴミへ。

・「ネットオークションを頭から消す」

ヤフオクに出したら売れるかもしれないという期待が、本やモノが捨てられない原因になっていることもある。オークションで売るには相応の手間がかかるし、数が多ければかかる時間も無限大。多少の儲けがあるにしても、あっさり捨てるほうが大局的にはトクだと思う(大量の不要物を引き取ってオークションに出してくれて、儲けの何割を返してくれるようなサービス、ないかな?と思ったら、あるんだ!)

・「栓になってるものを見つける」

これさえ捨てられれば、他を捨てるのは簡単になるもの。例えば、30年近く買っている専門誌が本棚の大きなスペースを占有しているのだが、これさえ処分できるなら同類の細々した本など惜しくも何ともなくなって一気に大量処分が可能になるような、栓の役割をしているモノ。それが捨てられるなら苦労しないんだけどね。

・「YouTube的なものに期待」

VHSテープやカセットテープ。僕の場合スペースを取らない8mmビデオをメインに録画してきたが、それでも段ボール何箱分の「オールナイトニッポン」「パペポTV」「北野ファンクラブ」などの録画コレクションがある(日付も入ってない不完全コレクションだが)。対応再生機器が絶滅しかかっておりデジタル変換に挑戦したこともあるのだが、やはり手間が半端じゃなくて挫折。だいたい、まとまった数の録画・録音が「ある」ということだけに意味があり、まず再生しない。将来老後においても全体を通して見直すことはないだろう。なら、いらんだろ。

NHKは、消去したがたまたまある中学生が録画していた「タイムトラベラー最終回」のように、残された世界唯一の録画なら保存する責任もあるだろうけど、僕が録画したのはおそらく何万人単位で日本中に録画されてるであろう番組なのだ。なら、いらんだろ、と自分に言い聞かせること再び。っていうか、YouTube的にも有料コンテンツ的にも、過去のすべての番組が見れるようになってくるんじゃないかなと。

ところで、仕事がデジタルオンリーで完結できるようになった頃に考えた僕の理想は、仕事道具は「ノートパソコン一台とスーツケース一個分の荷物。他には何も持たない」。もっと言えば「紙と鉛筆だけあるいはノートパソコン一台だけ。他はネットに上げてある」状態。アナログも復活しちゃった現在、相当むずかしくなってはいるものの、究極的にはそれを目指したい〜、のだが。

【よしい ひろし/イラストレーター】hiroshi@yoshii.com
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笠居さんに教えてもらった、ライブカメラの集合体のサイト(大勢に知らせていいのかわからないので名は伏す)。仕事中のみなさんの部屋のウェブカメラからの映像が延々映ってるだけなんだけど(笠居さんも映ってた)、おもしろい! 僕も映ってみたけど、なんともいえない緊張感。iChatAV体験の時に書いたけど「サボってないか相互監視ウェブカムシステム」が実現してる!
オリンパスのショートアニメ、現在二本目が追加されて公開中。三本目は7月後半に更新だそうです。
●オリンパスわくわくタウン
< http://www.olympus.co.jp/jp/fun/webanime/
>

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吉井宏のPainterアスレティクス
吉井 宏
アゴスト 1999-01
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starプロのテクニックとイラスト鑑賞




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近藤典子の片づけが生んだ奇跡
近藤 典子
小学館 2007-04-18

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by G-Tools , 2007/06/20