グラフィック薄氷大魔王[189]MOディスクも消滅へ?
── 吉井 宏 ──

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フロッピーディスクの生産停止のニュースに続き、日立マクセルと三菱化学メディアがMOディスクの販売を終了するそうだ。かろうじてソニーが販売継続するそうなので、息の根が完全に止められた訳じゃないけどね。じっさい、僕自身は今世紀に入ってからMOはほとんど使ってなかったんだけど、保存期間50年とか100年とか言われる耐久性は、いざという時に頼りになるんじゃないかと考えていた。

実は昨年、ふと思いついて新しくMOドライブを購入したんですよ。何枚あるかわからないくらい大量の、クローゼットの棚の四分の一も占領している古いMOディスクを整理したかったのと、大切なデータファイルだけ選んで安全安心なMOディスクに保存しなおそうと思ってたのです。

昔は高価でした。1992年にMacを導入したときの見積書(記念に残してある)を確認したら、ヤノ電器のMOドライブが22万5千円、メディア128MBの5枚組が39,500円! 1枚8,000円だよ。高っけ〜〜!(よく使っていた頃には230MB 5枚組がたしか1,000円程度だった)。当時作っていた画像データの容量は大きくてもせいぜい数MBだったし、そもそもMacintosh IIciのHDDが160MBだった。なので、MOの5枚組計640MBといえば無限とも思える容量だったのだ。



久しぶりに使ってみてMOディスクの弱点を思い出した。ときたまマウントできなくなる。ノートンユーティリティ等で修復してやればたいてい大丈夫なんだけど、CD-Rでは同様のトラブルは経験したことない。また、読み書きが非常に遅い上に、ジーコジーコと耳障りな音がする。あと、当時使っていたドライブの固有の問題だったのかもしれないけど、640MBのMOディスクはエラーが多くて安心して使えなかった。なので1.3GBのGIGAMOには手を出さずじまい。

でも、MOディスクは嫌いじゃなかったんですよ。スリーブに入っているのも安心だったし。7〜8枚入るポリエチレンのキューブ型ケースに入れると、「大切なデータの入った頑丈な物体」って感じがした。なぜ使わなくなったかというと、2000年購入のPower Mac G4(Gigabit Ethernet)にDVD-RAMドライブが搭載されていて、「これからはDVD-RAMの時代だ!」って思っちゃったんです。もちろんCD-Rも使っていたけど、容量と10年程度と言われる耐久性が心許なかった。

スリーブ入り、書き換え10万回、高耐久性、4.7GBの容量を誇るDVD-RAMは、まさにMOディスクの親玉。何百枚のMOからDVD-RAMにデータを移し替え、時代を先取りした気分でいたんだけど、DVD-RAM搭載のMacはそれっきり。Mac対応の外付けDVD-RAMドライブもPIXELAの1機種しか出ておらず、ほぼ絶滅状態(現在は数機種あるみたいです)。で、その後、DVD-Rの時代になり、MOはそのまま使わなくなりました。

クローゼットのMOディスク。とりあえず50年保つってことで保険で保管してあるわけですが、将来必要になることはたぶんないでしょう。それで思いついたんだけど、スリーブからディスクだけ出して保管しちゃってもいいんじゃないのか? ディスク自体の厚みはスリーブ全体の5分の1くらいだから、段ボール5箱が1箱で済むぞ。

もうそろそろブルーレイでしょうね。データの密度が細かくなれば記録層の小さな劣化も致命的、と思ってたんだけど、ブルーレイは意外に長期間保つらしい。7〜178年という話もあるし、ソニーのBD-Rは30年とのこと。そのうちDVD-Rから移し替えよう。

余談◎CD-RやDVD-Rのレーベル側面は記録層がむき出しなので弱く、キズをつけないように、ということで慎重に扱ってきました。が、最近のディスクってムチャクチャ強化されてますね。書き込み失敗などして処分する場合、記録層にガシガシとキズをつけて読めないようにするわけですが、マイナスドライバー程度では引っ掻いてもビクともしない。普通のカッターナイフでもプリント層にまで切り込むのは大変。大型のカッターナイフで、同じ箇所を何度も切りつけて、ようやく記録層を破壊できる。初期の金色のCD-Rなんて、ちょっと引っ掻いただけで記録層がポロポロ剥げ落ちたものなのに。

【吉井 宏/イラストレーター】 hiroshi@yoshii.com
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先々月、引っ越しました。前のところから歩いて数分の近所。道路のクルマはやかましいけど、眺めがいいのだけは超シアワセ。たまがわ花火大会も窓から堪能。