装飾山イバラ道[77]「アメリカン・アイドル シーズン10」を見る
── 武田瑛夢 ──

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毎年楽しみの「アメリカン・アイドル」。今年はシーズン10回目を迎える。全米から集まる10万人の歌手になりたい人から、たった一人の優勝者を決めるオーディションのリアリティ番組。
パフォーマンス披露の日と、結果発表日の2回の放映が同じ週にあるので、見るのが忙しい。もちろん、歌う歌を決めて練習して本番を繰り返す候補者に比べればなんてことはないけれど。過去のアメリカン・アイドルについての詳しい説明は下記の記事を参照して下さい。そして、ここから以下は本戦のネタバレを含みます。

・装飾山イバラ道[29]「アメリカン・アイドル」にハマる/武田瑛夢
< https://bn.dgcr.com/archives/20090210140500.html
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・アメリカン・アイドル シーズン10 FOX
< http://tv.foxjapan.com/blog/ai10/news/
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●新しくなった審査員

シーズン10では、ジェニファー・ロペスとエアロスミスのスティーヴン・タイラーが新しく審査員に加わった。私には、何といってもジェニファー・ロペスが華やかなファッションとメイクで登場するのを見るのが楽しみに加わったのが大きい。

アラフォーなのに昔よりきれいになっちゃったので、米「ピープル」誌から「世界で最も美しい女性」に選ばれた。この件は番組中にも取り上げられ、ジェニファーは思いっきりテレていた。

彼女は地方予選の頃から抜かりなくファッションをキメていたし、アメリカの地方の州の参加者(素朴な)が、ジェニファーの本物を前にして緊張しながら歌う様子が良かった。ジェニファーの「憧れの存在」であるという自覚と存在感が、参加者に与えた力は大きかったと思う。かっこいい女性としか言いようがない。

前シーズンで、厳しい辛口コメントで憎まれ役のサイモン・コーウェルがやめることが決まっていたので、今回は新しい審査員が入るのはわかっていたけれどランディ・ジャクソン一人だけが継続されて、二人加わったのはちょっと意外だ。ただ、審査員3人のバランスを見ると、中央に女性一人という番組当初のスタイルに戻ったので良かったのかもしれない。

肝心の批評コメントは、地方予選の時のジェニファー・ロペスはなかなか「NO」と言えなくて、合格できなかった参加者の表情に心を傷めている様子だった。ていねいに言葉をかける姿から、彼女の優しさや真剣さを感じることができた。

スティーヴン・タイラーは見た目がハデでロッカー代表みたいな人なので、もっとワイルドにダメ出しを言い放つかと思っていたら、まったく違っていた。優しい目で相手をみつめて、言葉を選んで批評するタイプだったのだ。

一度ランディが参加者に厳しい事を言った後に、スティーヴンに後ろから「ヘタって言うな!」と諭されていた。もしかしたらちょっと拍子抜け? ってくらい、ジェントルマンなスティーヴンの性格が表に出てきて、ランディが途中から悪者キャラに変わって行くのがわかったくらいだ。ここらへんはプロデューサーの指示が入ったのかもしれないけれど、3人とも優しい審査では、視聴者に刺激が弱い。

ということで、今回は審査員とのバトルっぽい要素はほとんどなくなり、候補者を応援する審査員という良心的な番組に変わったような気がした。ただ、「褒めてのばす方式」に変わったと思えば問題はなく、オーディション番組として粒よりの候補者が残っていった結果になったと思う。今後は見ている人のためにも、候補者のためにもなる真に迫る評価コメントが課題かもしれない。

●より低年齢に

日本でもアイドルは低年齢化する一方だけれど、今回からアメリカン・アイドルのオーディション参加者の年齢が引き下げられ15歳から参加可能となった。前年までが16歳から28歳だったのでわずか1歳の差だけれど、これが参加者にはとても大きい違いだったようだ。実際に15歳の参加者たちの初々しさや輝きは素晴らしかったし、「何歳なの?」「15歳」「ワオ!」って感じで、かなり若さが有利に働いているようにも見えた。

もし参加年齢の下限が16歳のままで、今回この15歳たちに会えなかったらと思うとゾっとする。どうせ来年のシーズン11を受けたでしょ? と言う意見もあると思うけれど、若い子は1年で進みたい方向も変わるし、影響されるものも変わる。ダンスやスポーツや勉強や、歌以外に自分を中心として放射状に可能性が広がっているのだ。もちろん望まない何かが起こって、道を断たれることだってある。

今回決勝に参加するローレンも地方予選当時は15歳で、見ていた人の度肝を抜いた。私も地方予選でローレンを初めて見たシーンが忘れられないし、スティーヴンに「ダイヤの原石をみつけた」と言われていた。年齢だけの条件で人を集めてオーディションし、審査員全員が地方予選からすべての参加者に会って歌を聞くというこのシステムが生きた瞬間だ。これがこの番組の根幹なのだと思う。原石だからこそ見つけがいがあるものね。それだけに、アメアイの審査員を引き受けるということはいかに大仕事かということがわかる。拘束時間がものすごいと思うからだ。

●突然のさよなら

今回はハリウッドオーディションを勝ち抜いたTOP24をステージで歌わせて、いっきに13人までにしぼるという方式をとった。

TOP13は実力者揃いで、このシーズンのレベルの高さがわかる。この後は、電話やネットでの全米投票で最下位の得票数の人が一人一人脱落していく。だからずっと落ちなければ10週以上は歌い続けられるということ。ただ有力な候補者が脱落してしまいそうな場合、TOP5までの間は審査員が1回だけ「候補者を救う権利」を使って救うことができる。過去のシーズンで、有力な候補者が早期に脱落したことがあったために取られた安全策のようだ。救う権利が使われるかどうかのドキドキもひとつの見せ場になっていた。

毎回の結果発表は、まずボトム3を発表する方法をとる。得票数の少なかった人を3人ステージ左端のハイチェアに座らせるのだ。それもゲストの曲の合間に一人一人がダラダラと発表される。得票数の多かった人は右側のローチェアに誘導されて、ホッとくつろぐことができる。なんだか残酷な瞬間だけれど、公平な投票結果だからしかたなく、すべて含めてリアリティショーだからみんな覚悟の表情だ。

毎回のアメリカン・アイドルを見ていると、ずっとボトム3に入らなかった人が最後まで残ることが多い。これはまぁ当たり前だ。そして今回見ていて思ったのは、それまでボトム3に入っていなかった人が突然最下位になって、ストンと脱落してしまうシーンが多かったこと。逆にボトム3の常連なのに長続きする人もいた。

たぶんその理由はお気に入りの候補者が1回でもボトム3に入ると、ファンに危機感が出てバンバン電話投票されるからだと思う。その結果、余裕で大丈夫だろうと思われていた優勝候補のような人が、初めてのボトム3入りで一気にさよならしてしまう。今回はピア・トスカーノが脱落した時のショックが大きかった。美人でセリーヌディオンなんかのビッグソングを歌ってもかっこいいピアは、私も大好きだったのですごく残念だった。審査員が救う権利は使った後だったので、審査員も他の候補者も呆然とするだけ。

ジェームズ・ダービンが落ちた時も驚いた。ジェームズ・ダービンはその素晴らしい声質で、スティーヴンから「お前になりてぇ」とまで言わせいたので、優勝すると思っていた人も多いはず。でもかなりオーディションも終盤に入っていたので、もう誰が落ちるかなんて全米という魔物しか知らない感じだった。

●お祭り騒ぎの決勝

この記事を書いている日、私はまだ結果を知らない。最後に誰が優勝して紙吹雪を浴びるのかすっごく楽しみ。結果発表の最終回には、超豪華ゲストが来て紅白さながらの大ステージが展開される。今回の決勝出場者の男女2人ともカントリーが得意なタイプなのでカントリーファンの投票が割れるのか、あくまでも人気が結果を左右するのか。

私は上にも書いたローレンという女の子がとてもかわいかったので、紙吹雪を浴びて欲しい。ただどちらも歌手としてはデビューできると思う。他にデビューして欲しいお気に入りはポール・マクドナルド。明るい笑顔と特徴的な声、おシャレな雰囲気でトリコになった人も多いはずだ。

私はアメリカン・アイドルは全部録画して、余分なところをカットして歌と評価コメントだけにしている。そうすると2時間の録画も20分以下になる。ただこれが何週分もあるので、HD残量を圧迫しているのが悩みの種だ。

●日本で見るアメアイ

今回のシーズンは、始まってしばらくして日本では震災があった。アメアイなんて見る気分じゃなかったし、見ている場合でもなかった。でも少しだけ元気になって、録画を久しぶりに見たら、まったく別世界のステージでいつも通りの番組が進行されていた。

赤や青のライトを駆使した電気料金無限大みたいなステージ、ジェニファーとティーヴンが横に並んでパフォーマンスを審査している様子。この時になんとも言えないありがたさを感じ、地球のどこかが大変でも、地球のどこかは勝手に達者でいてくれることに感動した。

日本は9日遅れの放映ということで、しばらくしたら審査員3人が日本へのお見舞いコメントを流していた。私にとってはアメアイはちょっとした「どこでもドア」みたいな、ちょっとアメリカ見てきますという気分転換になる。身の回りとはまったく関係ない異次元さに救われることもあるのだ。いつまでも達者で番組を続けて欲しい。遠いけれど同じ地球の上の宝物のようなショーだ。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
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ジメジメして嫌な季節だけれど、バスマットって洗濯しても乾きが悪かったり、他の何と一緒に洗えばいいんだよって感じでストレスですよね。そこでうちは「珪藻土」を使ったバスマットに換えました。白っぽい土を固めたようなものですが、ものすごく水の吸い込みが良いです。洗濯必要なし。質感は「栗らくがん」のようで、ギュンギュン足の下から水がなくなります。一度使うとやめられないです。厚みや高級感いろいろありますがうちは下記のを買いました。

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