グラフィック薄氷大魔王[259]SketchBook Proを両方使ってペーパーレスを目指す
── 吉井 宏 ──

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SketchBook ProのiPad版とパソコン版についての話です。Mac App Storeで買えるようになって、多少は身近になったかな。SketchBook Proは2003年の最初のバージョンから、ちょこちょこ使ってました。

もともとはタブレットPC用ソフトとして出てきたスケッチ用ツール。MAYAや3DCADソフトを出していたAliasが開発元で(現在は買収先のAutodesk)、主にCGデザイナーやプロダクトデザイナーが、鉛筆やマーカーでスケッチするのをイメージされたツールだったはずです。

ショートカットキーに頼らずに、ペンとラジアルメニューだけで使える秀逸インターフェイス。なにしろ、レイヤー名の入力が手描き文字そのままだったりする。ページをめくるように前後のスケッチに移動できるのもイイ。

iPad版パソコン版とも無料版が用意されてます。



●iPhone/iPad用のSketchBook Pro Mobile

iPad版がver.2.0になった。ずいぶん進化してる! スプラッシュ画面もシックなものに変わった。2.0より前にあった機能も混じってますが、僕的に気に入ってる機能について。

< http://itunes.apple.com/jp/app/sketchbook-pro/id364253478?mt=8
>

「新しい細いパレット」......左右にブラシパレットとカラーパレットが配置された。中央下の○をタップすると出てくる。パレットは選択的に出したままにしておくこともできる。パレットの中身はカスタマイズ可能。よく使うブラシを登録できる。

「2本のブラシの交互切り替え」......画面隅のダブルタップで、2本のブラシを交互に切り替え可能。これは僕的に大ヒット! ブラシパレットを開かずに左手親指で鉛筆と消しゴムを素早く切り替えてどんどんドローイングできます。

「ラジアルメニュー」......僕的にSketchBook Proらしさとはこれだった。パソコン版とは使い勝手はちがいますけどね。初期設定ではオフになってます。ブラシや色を登録できます。

「三本指上下左右のスワイプ」......ブラシ設定やレイヤパレット、UNDO、REDOができます。こちらも初期設定でいろんな機能に割り当て可能です。

「レイヤーの変形等」......レイヤー単位で拡大縮小や変形・回転等ができるようになった。他のiPad用ペイントアプリも同様だけど、iOSでは投げ縄ツールを組み込むのはむずかしいんだろか?

「100%スナップ」......二本指ピンチによるズームで、100%にスナップされるようになった。102%とか99%とかの意味のない微妙なズーム表示にならなくなりました。

「ブラシ設定の詳細追加」......ブラシの設定項目が増えた。ブラシの回転による変化やノイズを加える設定など。

「オプションツールのダウンロード」......ストアからオプションのブラシなどをダウンロードできます。まだ鉛筆セット以外に大したものはないですが。ペーパーテクスチャやグリッドのテンプレートなどダウンロードできればいいな。

「高解像度に対応」......iPad2では4倍の面積の高解像度キャンバスが使えるそうです。早いとこiPad2を手に入れなければ。

「Dropbox対応」......僕的に最大の目玉機能といえば、Dropbox対応! iTunesやPhotoLibraryやFlickrやEmail等に加え、Dropboxに書き出しできるようになった。Dropboxは読み込みにも対応! これにより、パソコンのファイルをiPadで開いて作業し、パソコンに直接戻すことが可能に!

ただし、ちょっと注意。SketchBook Pro MobileにインポートするときTIFFでなくPSDを使わないと、レイヤーが統合されてしまう。あと、1023 x 768pix以外のサイズの画像は拡大か縮小かクロップされてしまいます。

理想的にはパソコンとiPadで同じフォルダから画像を手軽に出し入れできるといいんだけど、書き出し時にファイル名を付けるのが面倒だったり転送が遅かったり、ちょっとスムーズでないのが残念。でも、パソコンとのやりとりが比較的ラクになったので、ドローイングは本格的にペーパーレスにできそう!

iPad版2.0の新機能についての解説。ここ、詳しいです↓
< http://necojarashi.blogspot.com/2011/05/sketchbook-pro-20ipad.html
>

●Mac/PC用のSketchBook Pro

ずいぶん前のver.2のままで使うのをやめてました。ブラシの書き味があまり好みではなかったのは置いといても、アップグレード料が高かったんですよ。Mac App Storeではアプグレ代よりも安い値段設定だったので、すぐ購入しました。Mobile版と同様に無料版もあり普通にスケッチするならそれで十分かも。

iPad版のほうを使い慣れてからMac版を久しぶりに使ってみると、シンプルな使い勝手の良さはそのままなのに、そのまますぎるというか、過去のバージョンからほとんど変わってなさすぎる。そもそも、iPad版を使うようになった主な理由のかすれた鉛筆系ブラシがないなど、パソコン版よりもiPad版のほうが高機能っぽい。

と思ったら、先日ようやくわかりました。スタンダードブラシではなくプリセットブラシのほうにいろんなブラシが入ってるのでした。テクスチャっぽい鉛筆やクロスハッチングブラシやモジャモジャブラシなんかも全部ありました。

以前のパッケージ版には、背景レイヤー用にいろんな罫線や五線譜や紙ナプキンなどの用紙が入ってたのですが、ダウンロードを探しても見あたらない。僕的には昔のバージョンからコピーして使ってますけど、普通に付属していていいと思うんだけどなあ。

あと、画面の回転ができない! と思ったら、環境設定でチェックしないといけないのでした。ただ、スペースキーを押して現れる「画面のスクロール・拡大縮小・回転」共用の丸いツールがイマイチで、スクロールしたいのに画面が回ってしまったりミスが多くなります。なので、今は回転はオフにしてます。

ラジアルメニューやラグーンというパレットの集合場所に表示されるツールは、簡単にカスタマイズできます。よく使うツールを一瞬で選択できます。

iPad版同様、2本のブラシの切り替えが「s」を押すだけのワンタッチでできる。これは便利!

感覚的・直感的に使えるという点では、やはり数本指のジェスチャーが使えるMobile版のほうがぜんぜん上かな。ジェスチャーが使えないのではSketchBookProは一風変わったペイントソフトでしかない。

< http://itunes.apple.com/jp/app/sketchbook-pro/id404243548?mt=12
>

どちらのSketchBook Proにもグリッド表示の機能がないのが残念。iPad版はグリッドなどをレイヤーとして読み込めますし、Mac版でもテンプレートを自作できますが、PhotoshopやPainterのようにオーバーレイ表示される可変のグリッドがほしいところ。

Mac版とiPad版でスケッチ画像を行ったり来たりさせる運用方法については現在手探り中です。めんどくさくなく行き来できるようになれば、ドローイング本格的ペーパーレス時代の到来!

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
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Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

MobileMeって名称はイマイチと思ってましたが、iCloudに移行するようです。じわじわと便利になっていきそう。Dropboxの存在に慣れちゃってると、パソコンって「端末」って感じが大きい。データファイル本体はDropboxにあるから、もしパソコンが壊れたりもしものことがあったら? って心配が少ない。

この気分をiCloudでもできるといいんだがなあ。iPhone/iPadに母艦がいらなくなるって。パソコンを持ってないとiPhoneが使えない的イメージの払拭には必要な措置ですね。iPadでの作業がiCloudに瞬時にシンクされ、Macでも普通にアクセスできるとかだったらSketchBook Pro的にも大歓迎なんだけどな。OSX Lion、噂されていた通り、やはりMac App Storeのみで販売? 「のみで」ってところが気になるけど。

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