もう何度も来ているけど、何度来ても良い。私の思う美が凝縮された町である。その美とは、対比の美だ。
海と山、光と影、生と死、さまざまな相対する関係のモノゴトが絶妙なコントラストで共存する。
狭い路地と坂の町は歩くたびに新しい発見があり、歩くだけで新しい気持ちになれるのだ。
昨年はあんなに暇だったのに、今年は異常な忙しさである。正月も結局3日から仕事を始めたわけだが、ほんの少しだけ、エアポケットのように時間ができた。この時間を使わずしてどうする?
ということで、エイヤっと尾道まで行ってきました。前回からおよそ一年ぶりになる。せめて年に三回くらいは行きたい。できれば毎月通いたい。
私にとって尾道とは"きっかけの町"とでも言ったらいいのかなあ、気づかなかった美しさを発見できるのはもちろん、ここに来ると新しいアイデアが溢れてきて、作りたいものがどんどん出てくるのだ。それすなわち充実感の源ともいえる。なんつーかこう、漲ってくるのである。
今回は一泊二日の旅だったけど、その間中ずっと歩いていた。尾道で歩くということは、急な階段や坂道をひたすら上ったり下りたりする、という意味に等しい。
運動不足の私にしてみればけっこうキツいはずなのだが、一歩進むたび劇的に変わってゆく風景の中に身を置ける喜びの方がはるかに大きいので、疲れはまったく感じなかった。
海と山、光と影、生と死、さまざまな相対する関係のモノゴトが絶妙なコントラストで共存する。
狭い路地と坂の町は歩くたびに新しい発見があり、歩くだけで新しい気持ちになれるのだ。
昨年はあんなに暇だったのに、今年は異常な忙しさである。正月も結局3日から仕事を始めたわけだが、ほんの少しだけ、エアポケットのように時間ができた。この時間を使わずしてどうする?
ということで、エイヤっと尾道まで行ってきました。前回からおよそ一年ぶりになる。せめて年に三回くらいは行きたい。できれば毎月通いたい。
私にとって尾道とは"きっかけの町"とでも言ったらいいのかなあ、気づかなかった美しさを発見できるのはもちろん、ここに来ると新しいアイデアが溢れてきて、作りたいものがどんどん出てくるのだ。それすなわち充実感の源ともいえる。なんつーかこう、漲ってくるのである。
今回は一泊二日の旅だったけど、その間中ずっと歩いていた。尾道で歩くということは、急な階段や坂道をひたすら上ったり下りたりする、という意味に等しい。
運動不足の私にしてみればけっこうキツいはずなのだが、一歩進むたび劇的に変わってゆく風景の中に身を置ける喜びの方がはるかに大きいので、疲れはまったく感じなかった。
ここ数年の「尾道へ行く」は、私にとって「たのしく写真を撮る」と同義語でもある。訪れる度、自分に対して何らかのテーマを課すのだが、今回の撮影テーマは「ライカ×モノクロ!」。
とにかくライカで尾道を撮るのは夢だったし、久々にモノクロ脳(=風景を色彩ではなく陰影で見る)でこの地を見てみたかったというのもある。そして後から色を想像することで、より印象に残る絵が得られるのではないか? なんて思うのだった。
そもそも、仕上がりをイメージせずにカメラ任せで撮影した後、カラー写真をモノクロ変換するのと、はじめからモノクロ脳でシャッターを切るのとでは潔さが違う。それが絵に表れるのは当然といえば当然といえよう。
今回の機材はライカM3とレンズ三本(ズマリット50mmF1.5、ズマロン35mmF3.5、エルマリート90mmF2.8)。いずれも1950年代の製品である。使用フィルムはネオパン100ACROSとトライX。フィルム現像はラボに依頼し、ネガをカラーモードでスキャンした後、SILKYPIXでデジタル現像している。
尾道水道に沿った海っぺりの商店街から山陽本線を越えると、急激に地面がせり上がってゆく。多くの寺社と住宅が密集するこの山の手地区は被写体の宝庫である。
何の変哲もないブロック塀であるが、等間隔にあけられた穴と対になる関係で塩ビ管が。きっと意味のある構造なんだろうけど、どこかミニマルアート。
猫。行く先々で出会う。
絶妙な曲面をつくりだす煉瓦と石積み。学校と学校の間の路地なのだが、独特のフシギ感があった。
尾道のY字路は、狭くそして急だ。
坂と坂の間の小さな階段。その場所の必要性から生まれたオブジェクトである。全国的に既製品的街並が増殖する中、このようなオーダーメイドの構造物の美しさに出会える幸せ! まさに詠み人知らずのデザイン。おばあちゃんがゆっくりと上ってゆく姿が印象的だった。
路地の向こうに陽を反射させる海。
海にも屋根瓦にも線路にも石垣にも、等しく陽はあたる。
うねりながら続く路地のまわりには、微妙に歪みつつ西日を反射する屋根瓦、わずかに崩れた土塀、なつかしい牛乳瓶受け、そして振り返ると瀬戸内の海と島々。
何度来ても、知らない道が増えてゆく。この巨大な生き物の体内に迷い込んだような不思議な感覚を、多くの人に知ってもらいたいと思うのでした。
つづく
【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。