グラフィック薄氷大魔王[291]CGアニメ関連のとりとめなく三題
── 吉井 宏 ──

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●補助金漬けアニメ

日本のアニメだけでなく「モンスターvsエイリアン」等のキャラも出てくる、最近やたらと多い中国の「パクリアニメ」。

「全力の最新技術で作られたエヴァとガンダムのパクリアニメがひどすぎる」(RocketNews24)
< http://rocketnews24.com/2012/01/27/176550/
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中国では国産コンテンツを増やそうと、アニメを作る人にどんどん補助金を出してるそうだ。補助金目当てでものすごい勢いでアニメが作られていて、だからパクリや内容の善し悪し関係なしに本数を最優先、ということらしい。

世界一のアニメ大国・中国が抱える「国策振興」という病(KINBRICKS NOW)
< http://kinbricksnow.com/archives/51747884.html
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「80後」「90後」でも変わらない中国のアニメビジネス=百元籠羊・安田峰俊のシンポを聞いてきた(KINBRICKS NOW)
< http://kinbricksnow.com/archives/51751767.html
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補助金は業界の衰退期に「なんとか助けてくれえっ」てことで国に出してもらって死期を遅らせるものだろうけど、業界立ち上げ期に補助金ジャブジャブ状態。作ったアニメの長さに応じて補助金が出るって、そりゃ健全な業界育成になるわけないよ。

ただ、それは補助金狙いの実業家がやってることであって、実際に制作してる人たちは「こんなもん作りたいんじゃないよっ!」ってかなり不満を抱えてるんではないかと思う。若くて志のあるクリエイターは世界のどこにもいて、現状を変えよう! って思ってると思います。




あと、アニメコンテンツをお金を出して買う文化がない国でビジネスとして成功するわけないって件は、輸出用と考えればそんなに変でもない。韓国とかそのへんある程度成功してるわけだし。それから、ビジネスだけじゃなくて、ハリウッド映画や日本のテレビアニメがアメリカや日本のイメージ向上に役立ってるのを踏襲したいのかも。

ところで、日本のアニメコンテンツの強さって、50年以上をかけた過当競争と発酵だと思う。ものすごい数の予備軍を勝ち上がったマンガ家が、人気や連載の存続をかけて競争して作り上げたマンガを原作としたアニメが、やはりアニメ同士での戦いを繰り広げ......。

発酵ってのは、以前は外国なんてぜんぜん目に入らない狭い日本で爛熟した文化が、あり得ない方向に発達したり腐ったり影響しあったりした結果、とんでもないレベルに達してしまうっていうアレ。「和算」とかそうだよね。外国とか関係なしに数学が趣味の娯楽として異常発展してしまい、気がついたら世界最高レベルっていうアレです。

そういう過当競争と発酵を経て強くなったけど、これからはどうなるかわからない。もちろん、そういう熟成期がなかった国でも、粗製濫造の嵐が数十年続いたらまた違う形の発展があるのかもしれない。

●アメリカ製CG映画テイスト

上記のリンク周辺で知ったドイツ製の子供向けCGアニメ「Animals United」。CGアニメ映画はけっこうチェックしてるんだけど、これはぜんぜん知らなかった。日本未公開だけど邦題はついてて、「どうぶつ会議」(笑)。YouTubeで予告編が見れる。

しかし、どう見てもアメリカ製動物CGアニメ映画のテイスト。ドイツでさえこれか。世界中で同じソフト(Autodesk)と同じお手本(ピクサーやドリームワークスとか)だったら、割と同じテイストに行っちゃいますよねえ。
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最近見た「怪盗グルーの月泥棒」「くもりときどきミートボール」など、ピクサーを含めたカートゥーン傾向のCGアニメーションの演技というか、モーションや表情付けって、完全にアメリカ式のものであって、これを日本のCGアニメにやってもまったくそぐわないな。西洋人のオーバーアクションが元になってるから、日本の作品でやってもクサいだけ。

そもそも、レンダーマン的なリアルな質感自体が日本の作品に合わない可能性も。やはり、質感や画質を上げれば上げるほどに、向こうのCGアニメ映画っぽくなるかも。

ショートアニメやCMなどかなりの数のCG作品を見てますけど、やはり世界中のどの国で作られたCGでも、リアルな方向に行けば行くほどアメリカCGのテイストに近づいてしまうようです。

画面のテイストという意味では、日本のCGアニメ映画「よなよなペンギン」や「ホッタラケの島」などは、アメリカ製CG映画とは明らかに方向がちがってる。このへん伸ばしていくべきなんだろうな。「もののけ島のナキ」の画面テイストはアメリカCG映画に近づいてるかな。「ヤンス!ガンス! MEAT OR DIE」もハリウッドCG映画っぽくないぞ!

たとえば爽健美茶のCMの動物CGは、CG好きの僕でさえいくらなんでもクドすぎると思うハリウッドCG映画テイスト。肉食人種のCGというか。サンタモニカのAnimal Logicというスタジオが作ったそう。「がんばってアメリカの一流CGプロダクションに依頼してみましたっ!」感もあふれてて、きもちわるかったです。爽健美茶の爽やかさとかけ離れた世界。
< http://www.animallogic.com
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今やってるファンタのCMもニューヨークのスタジオだそうで、リアルCGとはちがう一つの方向の典型で、割とよく見るテイストです。このCMが日本のターゲット層にどうウケるのかわかりませんけど、爽健美茶のCMと同様に「日本でなじみのないテイストの海外CG映像」って点で興味あります。
< http://www.psyop.tv/fanta-2011-bounce/
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●マンガや小説の映画化

ちょっと旧聞ですが、ハリウッド版「アキラ(Akira)」再び中断。予算オーバーで終了の可能性も、だそうで。あらららら〜。今までの映画化企画もボロクソ言われてたし、これでよかったのかもね。検索したら、それでもまだ完全ボツというわけではなく、継続中の模様。

AKIRA、アトム、ドラゴンボール等々、日本のマンガがハリウッドでCGや実写映画になるってニュースの何にワクワクするかというと、「あの場面がハリウッド式のリアルな実写になったらスゴイぞ!」だけなわけじゃん?

長いマンガを一本の映画にまとめることで無理が出てくるし、誰も「一本のちゃんとした劇映画」になることなんか期待してないよね?(CG映像でも実物を撮影したように見える映像をギリギリ「実写化」と言っていい気がします。「タンタンの冒険」はフルCGだけど実写に見えるって意味で)

たとえば「AKIRA」なら、冒頭の爆心地へバイクで向かうシーンの実写版はぜひ見たいけど、他はものすごい見たいわけじゃないもん。ドラゴンボールならフリーザとの死闘だけ見たい。ファンが見に来るんだから、日本人が演じて舞台が日本でなきゃ見に行く理由ないもん。アメリカ人のファンだってそう思ってると思う。

映像化するなら、いくつかの最高の見せ場だけ15分の映像でいいと思うわけです。有名スターもいらない。音楽で言ったらシングル盤やPVみたいな形で売り物になったら面白い。

もっと言えば、「爆心地へバイクで向かうシーン」の何を見たいかというと、マンガを見て脳内に生成された映像と、プロの映画監督が「こういうことだよな?」と作った映像がどうちがうかを確認したいってことじゃん。

ってことは、「爆心地へバイクで向かうシーン」を、10人の監督それぞれのバージョンを見たい! セットとか俳優とかは監督同士の話し合いで共有もできるわけだし。そういうの見たくない?

そういったオムニバス方式のCDや映画って、ミュージシャンや監督が奇をてらったり個性を過剰に押し出したりするけど、そういうのはちょいと抑えてもらって。

マンガの実写化はある程度画面が決まってくるけど、小説だと読み手それぞれの頭にそれぞれの映像が浮かぶ。誰もが「オレの脳内映像化が最高!」と思ってる。だから小説の映画化ってどんなに凝って作られても「オレのより全然ダメ」って感想を誰もが持つのはしょうがないよねえ。

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

CGアニメ関連で書いたまま公開するタイミングを逃してたもの3つでした。ところで、最近ようやく気がついたのですが、LionのMail.appで送ったメールの添付書類がHTMLメールみたいに本文に貼り付いて、保存できない問題があるんですね。2人に指摘されてわかった。ファイルを送るのはほぼサーバーアップしてダウンロードしてもらってるから気づかなかった。あ! 年賀状メールの添付画像もWindowsで受け取った人は全部そうなっちゃってたわけか!! ......まあ、HTMLで見えてりゃいいんだけど、見えない人もいたかも。
< http://goo.gl/i46oe
>

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