グラフィック薄氷大魔王[310]Mac導入20周年、右向き左向き
── 吉井 宏 ──

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●祝! Mac導入20周年

今月、Mac導入20周年。日付が1992年6月16日の見積もり書FAXが残ってます。実際に届いたのがいつなのか不明だけど、7月前半だったはず。

その半年前まで住んでた田町の駅の近くに、Appleの小さいショールームがあった。すごいおしゃれで高級っぽく見え、あこがれてました。何度かそこで見せてもらったこともありますけど、なにしろ独立一年目の僕には現実的な値段ではなく「自前でMacを買う」なんてぜんぜん思ってなかったです。

Photoshopで部分的にブラシでコピーできる機能を見せてもらった。絵具で描いたマチエールをスキャンしておき、部分的にコピーして構成すれば、アナログと見た目が変わらない絵をMacで描けるかも? なんて考えてました。

その後、パッケージデザインの仕事でややこしい曲線で構成されたロゴのラフを提出したとき、「時間がないのでこちらでトレースしておきます」って言われて帰ったら、もう仕上がったロゴの確認がFAXで届いてた。ロットリングで描くには丸一日かかると思ってたのに!

こりゃムリしてもMacを入れないとマズい。置いてかれる! と焦り、急遽5年リースで導入を決めたのでした。ちょうどMacintosh IIciが大幅値下げする直前でした。見積もりとかしてる間に値下げ発表があったのです。ここでハードルがかなり下がってMac普及が進んだんだろうと思います。




揃えたのは、Macintosh IIciと4MBのメモリー拡張キット、フルカラーにするディスプレイカード(これが異様に高かった!)、13インチモニター。3色カラーのプリンタ、スキャナ、MOドライブ(これもびっくりするほど高価)、WACOMの12インチタブレットとペン、Photoshop2.0とQuark Expressなどソフト数本。Illustratorはなぜか販売店が勝手にサービスでインストールしてくれてた。当時はそんな風だったようです。もちろん後で購入しましたよ。

しかし、届いて一時間後には後悔。こんなわけわからん高価なもん、これから5年も払い続けなきゃならないのか、どうしよ〜〜〜。って。

販売店の人が「大丈夫、半年もしたら私たちより使いこなすようになりますから」って。そのときはまさかと思ったけど、半年経ってみると確かに当たってた。仕事で使ってるとすぐ詳しくなりますね。なるほど〜。

それでも一〜二か月くらいときどきいじっては途方に暮れる感じが続いてたけど、「明日中にパッケージのカンプのバリエーションを10案提出!」っていう、Macを使わないと絶体絶命な事態。むずかしそうで避けていたIllustratorを本気で使ったら、あっさり使えるようになっちゃった。苦手意識を脱出! Mac、役に立ちそうじゃん!

Photoshopで絵を描こうとしたけど、思うように描けずあきらめかけてたのですが、その年の10月にPainterが出て飛びつき、後はもうフルスロットル!

パソコン通信を始めたのが94年後半だったかな、遅いですね。特に必要を感じなかったし、ウイルスがコワイとかなんとか、要するに勝手がわからなくて面倒だっただけ。すぐインターネットの時代が始まります。

Mac20年。それ以前がどんなだったか思い出すのに一苦労な感じ。Macやネットがなくてどうやって暮らしてたんだろ?

●右向き左向き

先週のまつむらさんの「肖像画が左向きが多い? 件」に関連して。自分の作品で考えてみると、単品としてのイラストやキャラクター作品は左向きが圧倒的に多い。っていうか、多いなんてもんじゃなく、正面向きが少数ある以外はほぼ全部が左向き。どちら向きが描きやすいかといえば左向きだし、まつむらさんが書いているとおり、左上の光源を想定して陰影描写する都合上、左向きが都合がいいんです。

3DCGに移行した頃、描きやすいかどうかによる左右の向きが関係ないことに気づいたとき、それでもやはり左向きがなんとなく自然に感じた。左右どちら向きにするのに「明確な根拠」がないならどちらかに統一しておこうってことで、左向きばかりになりました。

ところで、「デッサンの狂いを左右反転で確認」について。アナログで描いてた頃も紙なら透かして裏から見る、イラストボードなら鏡で反転して見る、ってことをやってきました。何気なしに描いた顔などを左右反転してみると、ギョッとするほど歪んでることがあります。何度も左右反転して確認・修正したりしてました。

「左右反転して見た絵が、他人が見たのと同じ本当の客観視」って説が有力なようです。ただ、自分以外の他人が見るとあんまり違和感ないという説も。実際のところ、世の中の絵を見て明らかに不自然に歪んでるものってあまり見ない。左右の目の高さがちぐはぐって思うことあるけど、それがイヤな感じがするかといえば、そうじゃなかったりするし。

おそらく、自分の視覚認知のクセが左右反転することで二倍に増幅されて感じるんじゃないかと。他人の視覚認識のクセなんてわからないから、正でも逆でも増幅されず、変とは思わないんじゃないかと。

なので、あまり神経質に反転して確認する必要ないかも。まあ、そうだったらいいんだけどなという仮説でした〜。

●「アプリ」と「ソフト」

「アプリ」って言葉が出てきてから「ソフト」って使いにくくなった気がする。「3DCGソフト、画像処理ソフト」対「3DCGアプリ、画像処理アプリ」。ソフトは本格的アプリケーションで、アプリは軽いユーティリティみたいに思えるけど、「Application Software」だからどちらも同じで略しかたの違いだけかも。

ソフトって言い方は日本語だけみたいですね。3DCG Programって言うみたい。さらに、英語での略はAppなのに、日本語での略はアプリ。っていう混乱の元も定着しちゃってたり。

他にも、日本で言うところの「CG・コンピュータグラフィック」は英語では通じないって件。「Computer Graphic」のCGと、「Computer Generated Image」のCGIと混じって混乱。

【吉井 宏/イラストレーター】
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