わが逃走[124]横浜階段の巻
── 齋藤 浩 ──

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相変わらず美しい階段道がマイブームな齋藤です。前回の成増界隈に引き続き、今回はちょいと横浜まで行ってまいりました。

だらだらと家を出、中華街で旨いモノを食べた後、うだうだとお茶なんか飲んでたせいで、階段道周辺に到達したのは4時過ぎというやる気のなさ。ろくに下調べもなしに現地入りしたため、コースも全て勘によるもの。

さて、山のあるところに階段あり。中華街を背に運河を渡り、山手トンネルに向かって歩いてみる。

トンネル入口のすぐ脇、むかしは商店だったであろう渋い建物の隙間をのぞくと......ありました! 階段発見。しかも途中何度も向きを変えながら枝分かれを繰り返す大物美階段です。

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ディテールも手作り感があり、好感が持てます。階段脇には小さな水路が切ってあり、雨が降ったときなどはまた違った風情が見られることでしょう。直進と屈折を繰り返し、まるで物語を読み進めるかの如く楽しめる歌曲的階段。

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水路の屈折部。水の流れを想像するだけで楽しい。

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中腹から中華街方面を見下ろす。

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よほど不審者がいるのね。中腹あたりからこんな立て看板だらけ。カメラ片手にうろうろする男は絶対アヤシイと思われるだろうから、ホント、通報されなくて良かった。

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という訳で陽も落ちてきたし、先を急ぐことにした。

さて、この感動的な大階段を登り切ると山手本通りなる道に出た。両脇に下り坂があるということは、いわゆる尾根道ということになる。

道の反対側に下ってみると、異なる風情の素敵な橋や階段が点在する。ちょうどさっきのトンネルの反対側に出たようで、こんなに小さな地域でも山のあっち側とこっち側とでは、ずいぶんと文化が違うものだなあと思うのであった。

このあたりの写真も紹介したかったのだが、山陰ゆえシャッタースピードが稼げず、見るも無惨な結果に。こんど行くときは午前中にします。

さて、山手公園を駆け上りフェリス女学院の素敵な塀に見とれつつ、

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その先の角を曲がると細い道の先にいい感じの空ヌケが!
もしかしてこの先に夕陽のあたる階段が??

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ありました! 見事なうねり。夕陽をあびてN字を描く、超美麗階段。

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空の色も久々に見る美しいグラデーション。

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それを反射する階段と壁面。

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見事。見事である。階段めぐりは一生続ける価値のあるものだなあ。

そんな訳で、ここらが手持ち撮影の限界です。振り返ると、色彩に溢れる家並が夕陽に向かってきりりと立ち並んでいるのでした。

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【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。