2か月ほど前、カメラ片手に信州は小諸周辺をぷらっと散歩したのですが、現像はしたもののそのまま放置しておりまして、そいつをなんとなくスキャンしたり、整理したりしているうちに、文章を書くのもいいかなあ、なんて思った次第。
行動原理がすべて"なんとなく"なので、写真も"なんとなく"なものが多いです。
では、なんとなく始めましょう。
なお、今回はモノクロ、カラー、フィルム、デジタル混在で節操がないですが、そのへんはまあご愛嬌ってことで。
行動原理がすべて"なんとなく"なので、写真も"なんとなく"なものが多いです。
では、なんとなく始めましょう。
なお、今回はモノクロ、カラー、フィルム、デジタル混在で節操がないですが、そのへんはまあご愛嬌ってことで。
浅間山の麓、なんとなく立ち寄った佐久市のとある集落にて。白壁のアールが美しいなあ。ついでに扇形の風抜き穴(?)が風流。

いわゆる観光地ではなく、昔からの普通の暮らしが続いている普通の街並みには、新興住宅地にはない"人のいとなみ"のようなものを感じて安心する。
ちょっと歩くとこんな空間が。この先に清水が湧いていて、ここは共同の洗い場だったりする。ほら、石の上にタワシが乗っかってるでしょ。

昔、寺(?)だったところが今は公民館みたいに使われているらしい。階段を登って振り返ったら、田んぼが生き生きとしている。水のながれる音がよく聞こえた。
こういうのがこのへんの日常的風景。春だねえ。

いつも思うけど、農業用水まわりの構造物って美しいなあ。キャラ立ちでは以前紹介した円筒分水の方が上かもしれないけど、必然から生まれた構造美はいずれもなかなかのもの。
この写真は単なるスナップだが、じっくり構えて究極の構図で美しさと構造とが同時に伝わる写真が撮れたらって思う。

これってわかりにくいかもしれないけど、絶妙なえぐれ具合で道路の下に水路が交差しているのです。妙に感動したんだけど、こういうのも写真で伝えにくいんだよなあ。今後の私の課題ですな。

で、この後ついっと車で小諸駅周辺へ。たまたま入った蕎麦屋の蕎麦が絶品だった! 天ぷらはイマイチだったが。
さて腹も満たされたところで近所を歩いてみた。見事な石橋! 両サイドを見てみたが、橋の銘板が外されていて名称不明。
橋の下を道路がくぐり、その下を川が流れる三層構造。地形的にも面白い。

小さな街の中を美しい川が勢い良く流れる。いいなあ。
小諸の街は意外に高低差があり、ちょっと歩くだけでもメリハリのある風景を堪能できる。川に沿って歩けば、風情のある橋をいくつも見ることができる。

民家の入口の階段とスロープ。こういう、どうってことない構造物に何故かものすごい美しさを感じてしまう。見栄とか欲などとは無縁の「必要だから作った」潔さに惹かれるのだろう。

閉店してそのままになっている、いわゆる『角のたばこ屋』を裏から撮影。昭和の佇まいが美しい。営業しているときに見てみたかった。表にまわってみると、美しいタイルの"でっぱり"。


さらに行くとなにやらスケキヨ風の物件が!

小諸の町並み。古道具屋さんがいっぱい。

そして何気なく立ち寄った店でおさかなと目が合う。早速ご主人が解説してくれた。

なんでもこの水滴は室町時代のものをもとに、明治時代に作られたレプリカだという。オレにしてみれば近年、小学校の図工の時間に作られたものにしか見えんが。
「2500円のところ、特別に1500円でいいよ」って、いきなり1000円も値引きするってことはやはりそうなんだろう。まあ金銭的価値などどうでもいい、こいつはいいヤツだ。おともだちとして連れて帰りたい。という訳で購入した。
そしてこいつあアサガオですな。

そうと知らずに外国人観光客が花器として買っていくのであろうか。まあ新品ならいいけど、中古品は気になるなあ。
毅然とした佇まいの味噌屋さんを発見したので入ってみた。中はひんやりとしており誰もいない。ほんのりとした発酵の香りが心地よい。しばらくすると奥から上品なばあちゃんが出てきて、いろいろと説明してくれた。

結局ナントカという味噌を買い、後日おみおつけをいただいた訳だが、恐ろしいほど旨かった。信州の底力。凄い。以前、松本でも老舗の味噌蔵で味噌を買ったのだが、ここの比ではない。そんなわけで小諸の勝ちー!
おとなりの軽井沢が年々涼しいお台場みたいになってきているのに対し、小諸にはそこに暮らす人々の生活が息づいている。
意味のある地形、意味のある様式、そして意味のある味わい。観光とは誰かに遊んでもらうことではなく、そこで暮らす人と自分との文化の違いを楽しむもの、と私は思います。
さあ皆さん、この夏は是非小諸へ。
夏の小諸は暑いけど、気持ちのいい暑さです。
【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。