シックスセンスを求めて[15] デジタルとアナログ
── 若林健一 / kwaka1208 ──

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今年の12月1日は、2003年12月1日に地上波デジタル放送を開始してから、ちょ
うど10年目だったそうです。

2011年7月24日(震災の影響で一部地域は延期)にアナログ放送が停止し、完全にデジタル放送に移行するまで、「地デジは、画質がきれい」と宣伝活動が行われていましたが、実はここに少し言葉を足す必要があります。

「地デジは、利用する電波の帯域(電波を送る道路の道幅のようなもの)が少なくてすむ割には、画質がきれい」というのが正確です。


現在の地上波デジタル放送は、ハイビジョン放送がメインです(仕組みとしては、標準画質と呼ばれる従来のアナログ放送と同等画質の放送も可能)。ハイビジョン放送は映像が細かい分データ量が多くなり、チャンネルひとつ当たりの電波使用量が多くなります。

細かい仕組みは割愛しますが、デジタル化するとデータを圧縮して小さくできるため、電波の使用量を抑えることができます。

これらのことを考慮し、ハイビジョン放送とチャンネル数維持の両立、余った分の他用途への転用が可能なこと、などからデジタル放送が採用されたのです。つまり、「デジタルだからきれい」ではなく、「ハイビジョン放送だからきれい」なのです。

厳密には、映像や音声を圧縮する場合、元の映像や音声を削る仕組みを使うのが一般的ですので、画質・音質はオリジナルよりも悪くなります。

2007年まではBSアナログ放送によるハイビジョン放送が行われていましたが、当時の放送を知る人には「アナログハイビジョンの方がよかった」と言う声もあるぐらいですので、必ずしもデジタルが良いというわけではなさそうです。

また、デジタル化によるデメリットとして、電波障害への弱さがあります。地デジ対応カーナビや、ワンセグ対応携帯・スマートフォンをお使いの方は経験があるかと思いますが、電波の届きにくいところに行くと、即座に映像も音声も止まってしまいます。デジタル放送では、電波の状況が悪くなると映像や音声のデータを取り出すことができなくなるためです。

アナログ放送の頃なら、雨が降ったような画質だったり、ノイズの載った音声だったり、何を言っているか? ぐらいがギリギリ分かるような状況でも、デジタル放送では映像や音声が完全に停止してしまうことが多くなります。

今年頻発した災害のようなケースを考えれば、アナログの方が強い面もあり、デジタル時代になっても防災グッズからラジオがはずれることはなさそうです。

一方で、記録という面ではデジタル化による大きなメリットがあります。

デジタルで記録すれば、メディアが損傷しない限り画質が劣化することがなく、元のきれいな画質のまま残すことができます。

デジタル放送対応のHDDレコーダーには、どのメーカーの機器でも「DRモード」という一番高画質な録画モードがありますが、これは放送波をそのまま記録するモード、つまりネットの「ダウンロード」と同じですので、放送時に観られるものと画質の変化はまったくありません。

記録という意味では、放送よりも個人で撮影した映像や写真の方が、意味が大きいかもしれませんね。ここでも災害のケースを考えれば、大切な想い出をコピーし、分散して残すことができるという意味ではデジタルのメリットを活かさない手はありません。

災害災害と煽るつもりはないのですが、今年一年、それ以前も含めて災害が多かったことを思えば、我々が使えるデジタルとアナログの両方のツールを、上手く使い分ける必要があるのかなと思いました。

またその為には、デジタルのメリットを誰もが活かせる社会にすることが、私たちエンジニアの仕事なんだろうな、とあらためて感じた次第です。

【若林健一 / kwaka1208】 kwaka1208@pote2.net
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このメールが配信される二日前の日曜日、46回目の誕生日を迎え、Facebookやメールなどでたくさんのお祝いメッセージをいただき、大変幸せな誕生日を過ごすことができました。こういうことも、ネットがある現代だからこそのメリット。悪い面でなく、良い面をどんどん拡げていきたいものですね。