わが逃走[138]春の小川の巻
── 齋藤 浩 ──

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◯月×日 晴れ

新宿三丁目駅で降りて伊勢丹の前に出る。

華やかな正面もいいけど、装飾過多になりすぎてない側面もイイ。

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そこから徒歩3分、某ギャラリーにて松田光司彫刻展。

松田さんはスゲー彫刻家だ。静と動とか疎と密とか、対比の美とでもいうのだろうか、そういうものがひとつの作品に凝縮されている。

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こういった彫刻が生み出される母体を知りたくて、以前工房にお邪魔して型を見せていただいたのだが、型も彫刻と同じくらい迫力があった。

彫刻の写真はよく見るけど、型の写真はあまり見かけない。

立体というプラスの形状を作るための、型というマイナスの空間。

これをネガのまま鑑賞したら打ち消し合って立体に見えるんじゃないか? などと妄想してみる。

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◯月×日 晴れ

神田駅2時集合、今月で閉店となる活版印刷工房の見学。

博物館級の印刷機が最後の仕事をしていました。

機械だけでなく、職人(ご主人)そして空間まで含めて動態保存したいくらい完璧な昭和的産業遺産。

ひとつの時代が終わるのかと思うと残念でなりません。

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◯月×日 晴れ

渋谷駅の高層ビル化工事に伴い、長らく暗渠となっていた渋谷川の蓋が奇跡的に開いた! とのことで見に行ってきました。

しかし完璧に出遅れました。防護ネットで覆われる前に撮影しておきたかった!

画面奥が上流。キャットストリートからのんべえ横町の下を通り、ここへ至るわけだが、それにしても東急東横店が川の上に建っていたとはオドロキです。

今回の工事、川の上に高層ビル建てるわけにはいかんということで、ヒカリエ側へ流れを変えるのだそうです。

ちょっと前まで東急東横線のホームがよく見えた歩道橋から撮影。

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稲荷橋より下流側を見る。

コンクリートで固められてはいるけど、意外と蛇行しています。

この橋のほとりにエロDVD屋があるのだが、10年ほど前の、よりによってバレンタインデーにうっかり何気なく入って物色していたところ、ソフトオンデマンドのキャンペーンのおねえさんから、チョコレートとAVをもらったことがあります。あれは恥ずかしかったなー。

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一本下流側にかかる金王橋より稲荷橋を見る。

奥は数十年ぶりに暗渠の蓋が開かれて差し込む光。一年前まではここから東横線ホームを見ることができた。

周辺は雑居ビルでぎっしりだが、川っぷちには昭和な木造建築もギリギリ残っていた。見るなら今のうちだろう。

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ヒカリエから蓋の開いた渋谷川を見下ろす。ちょうどバスが川と平行に停まっ
ている。

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隣の駅では地下を走っていた銀座線が、ビル3階のどてっ腹に開けられた穴に入ってゆく不思議。

渋谷は読んで字の如く、谷だということがわかる。

渋谷川はその谷を流れる川だ。心の目で川筋を見る。

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渋谷って人が多いので素通りすることが多いのですが、地形を見ることに特化した散歩ならけっこう面白いかもしれません。

散歩に適した季節になったことだし、近いうちに渋谷川に沿って歩けるところまで歩くかな。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。