Take IT Easy![18] 始めあるものは必ず終わりあり
── 若林健一 / kwaka1208 ──

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毎年元年を迎えている電子書籍で、またひとつ水を差すできごとがありました。電子書籍の普及を願うひとりとしては残念でなりません。

ヤマダ電機が自社タブレット向けに提供している「ヤマダイーブック」のサービスを7月31日に終了し、しかもそれまでに購入した電子書籍がサービス終了後は利用できなくなる、というニュースです。


ヤマダイーブックがサイト閉鎖──購入した電子書籍は無駄に
< http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1405/29/news091.html
>

このニュースは、ネット上でもかなり話題になり、その後訂正のリリースが出されたのですが、あくまでも現時点では「引き続き閲覧ができるよう調整」するという内容で、移行が約束されたわけではなさそうです。

「買った電子書籍が無駄になる」は「記載不備」
ヤマダイーブックがサービス終了告知についておわび
< http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1405/29/news170.html
>

うがった見方かもしれませんが、このリリースも騒ぎを受けてとりあえず出した、という印象が否めず、最終的にどうなるかはまだまだ不透明な状況。

サービスの終了は7月31日ですが、今後購入する書籍が8月1日以降も読めるのかどうかわからないのでは、新たにコンテンツを購入する利用者がいるとも思えず、実質的には既に終わっているも同然です。

●サービス事業者の姿勢

さらに勝手な想像ですが、もしかすると、このサービスは規模、利用者数ともに他社と比較してそれほど大きくないのかもしれません。そのことによって、社内で「それほど影響も大きくないだろう」という判断が行われ、最初のリリースになったのではないかと推測されます。

しかし、利用する側から見れば規模の大小は無関係ですし、この記事を見た方にとっても「電子書籍のサービスがひとつ終了する、購入した書籍は利用できない」と受け止められれば、企業の姿勢が問われるのは容易に想像できます。

こういったケース、今までにもたくさん有ったのにいつまでも繰り返されますね。一般の方にも名が知られている大企業のひとつですから、発表内容とその影響はもう少し配慮が欲しかったところです。

●終わる時にことを考えていない

今回の件の一番の問題は、サービスを開始する時に終わる(終わらせる)時のことを全く考えていないと思われることです。

4月8日配信の「製品寿命を考える」でも書いたように、メーカーでも製品を作る時には、その製品の終わりの時期(サポートを終了する時期)というのを織り込んで作っており、補修部品およびその代替品やサポート体制の確保を行っています。

それでも製品の寿命に関する作り手と使い手の合意は完全なものではないのですが、それでも使い手は一定の信頼を置いているからこそ、新しい製品を購入し安心して使いつづけることができるのです。

製品寿命を考える
< http://kwaka1208.net/product-life-cycle/
>

メーカーも製造と販売だけでは事業を継続していくことが難しくなり、サービスを提供することで製品販売後の継続的な収益を獲得することを目指してきました。

最近では、メーカー自身がサービスを提供する例も少なくはありませんが、それでも「継続責任」を考慮して実現に至らないものも多いのです。

メーカーがすべての点において他の事業者よりも優れている、というつもりはありませんが、少なくとも「利用者が継続的に安心して使えるか?」という視点を常に持っていることは間違いありません。

サービスの利用規約を見ると「本サービスは予告なく終了することがあります」といった記述が必ず見られますが、利用者が安心して「サービス」を利用できる環境を作るためには、「サービス寿命」や「サービス終了時の選択肢」を提示するようなルール作りが必要なのかもしれません。

もちろん、そうすることによってサービスへの参入障壁が上がるのでしょうが、一定の品質を保つことが、市場全体にとって良い結果をもたらす、と私は考えています。

【若林健一 / kwaka1208】 kwaka1208@pote2.net
Take IT Easy! - 人にやさしいIT
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< http://2014.kansai.wordcamp.org
>