グラフィック薄氷大魔王[394]君はAdobe CCをやめられるか?
── 吉井 宏 ──

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Adobe Creative Cloud が2014年版にアップデート。キツネの3Dプリントフィギュアの写真がツボ! ......ここ最近感じてたAdobe CCへの愛憎ひっくるめ、いろいろ書いてみた。

< https://www.adobe.com/jp/creativecloud.html
>

●台数制限がきゅうくつ

アドビ一般利用規約に「デバイス(または仮想マシン)2台までアクティベーションできます。但し、ソフトウェアをこれらのデバイス上で同時に使用することはできません。」とある(今のところ2台で起動しても警告は出ないようだけど)。パソコンを2台ならべてそれぞれAdobeアプリを使えなくなる?

今までどうだったかよくわからないけど、今回からこの制限が加えられたとしたら、なんかやはりどんどんきゅうくつになっていく印象は否めない。

最近Macが3台になったので、認証を解除したり再認証したりの面倒とか起動しなくなるトラブルが続いた。「Adobe CCのせいでパソコンが3台あると不便! Adobeのせいで世界のパソコンの売り上げが減ってるんじゃないか」とか吠えてましたw

どうにか他アプリに乗り換えたい気分が首をもたげてくる。Adobe CSになってから毎回のアップデート時にそう思っちゃうんだけどさ。




●Adobe CCを使わないという選択w

いくつのアプリが含まれてるかわからないくらい、たくさんのアプリがAdobe CCに含まれてるわけだけど、実際のところ使ってるのはPhotoshopがほとんどで、たまにIllustratorくらい。あと書籍自炊にAcrobatを使うくらいか(ScanSnapにおまけで入ってるからCCでなくてもいいんだけど)。After Effectsが使えるのがAdobe CCの僕的大きな餌だったけど、使ってないなあ。

「数多くのAdobeアプリが使い放題な割には安い!」のがAdobe CCサブスクリプションなわけだし、業務用ソフトのサブスクとしては激安ってのもわかる。でも、2個のアプリくらいしか使わないからと、個別に2個のサブスクにすると全部入りとたいして変わらなくなるっていう「イヂワル」に、ケチケチ根性が反応してしまう。

●「フォトグラフィプラン」を使う手

僕的に使用頻度が低いIllustratorの代替アプリがあれば、Adobe CCフルセットではなく、Photoshop+Lightroomの写真家向け「フォトグラフィプラン」にしちゃえば月980円。ちょっと勝った気分になれるw

3か月前の記事だけど、こんなのがあった。-----『Adobe CC(月額4,980円)』から『Photoshop CC 月額980円』へ乗り換えました。SiteMiru(してみる) < http://bit.ly/1ywbXii
>

フォトグラフィプランに切り替え、僕的に使用頻度の低いIllustratorは後述の代替アプリを使い、AcrobatはScanSnapのおまけを使う。ってことで支障ないんじゃないか? とも思う。滅多に使わないAfter Effectsなど映像関連は、AppleのFinalCut Proがあるわけだし。なーんにも支障ないじゃん? あれ? ちょっと本気になってきた?

●代替アプリの難点

たとえば、Photoshop並みとも言われる画像処理アプリPixelmetorはアルファチャンネルがなく、レイヤーやマスクを選択範囲に変換もできない。他にもPhotoshopのような画像編集やお絵描きアプリはいっぱいあるけど、アルファチャンネルが使えるものは滅多にない。

Photoshopと同等のアルファチャンネルが使えるのはPainterくらいだけど、選択範囲を駆使した画像編集は動作がめちゃくちゃ遅いのが、Photoshopに乗り換えた大きな理由の一つだもん。

Illustratorの代替、Mac App Storeを見てみるとiDrawなどパスが使えるドローアプリはいくつかあるようだ。でも、Illustratorは印刷原稿を作るのに必要だからはずせないんだよなあ。

●GIMPとInkscape

決定版的代替としては無償アプリ、GIMPとInkscapeでしょうね。試してみた。いや、ずいぶん以前に試したことがあるんだけど、Macでは両者ともX11上の動作となり、扱いがややこしくて頭が狂いそうになった。今使ったら違った感想になるかもしれないけど、とりあえず、BootCampのWindows7にインストールしてみた。

・GIMP

アルファチャンネルが使える〜! 選択範囲へ変換もできる。レイヤーアルファも使える。使い勝手やショートカットがPhotoshopとあまりに違うので戸惑うけど、CMYKが使えない以外は基本的な部分でPhotoshopと同等に使える気がする。最近は「CMYKで下さい」と言われることが僕的には滅多になくなってきたし。

GIMP < http://www.gimp.org/
>

・Inkscape

こっちはちょっと感動したぞ! 適当なIllustratorファイルが見当たらなかったのでPDFを開いて見たところ、何と! Illustrator同様にページを選んで開くことができた。中身のパーツをそれぞれいじれる。パスも普通に使えるし、線の丸めなどの設定も同じ。打ち込んだテキストのアウトライン化もできる。

色を選ぶのにPainter風の丸+三角のカラーホイールが使える! 面と線の塗りを切り替えるには、Illustratorだと小さい色アイコンをクリックするわけだけど、Inkscapeでは面と線それぞれのタブ画面がある。慣れればIllustratorより使いやすいかも。

僕がIllustratorで使う機能はほとんどカバーできてる模様。Inkscapeのサイトには「商用印刷に適したファイル形式にエクスポートできます」って書いてあるから印刷原稿もイケそう。

Inkscape < http://www.inkscape.org/ja/
>

●乗り換え可能ではあるけど

Adobe CCから代替アプリに乗り換えは一応可能、ってわかったのは収穫。まあ、Adobe CCサブスクリプションをやめなきゃいけないほど切迫してるわけじゃないし。サブスクをやめたって、機材やアプリや他のサブスクにかかる費用全体からしたらたいした節約にならないしね。そもそも、やめて快適になるかと言えば......ならないよねえ。まあ、やめられないことがわかってるので、ゴネゴネとゴネてるだけなのですが...。

●Photoshopが手放せない理由

代替アプリでたいていのことが可能でも、Photoshopのアクションと自動処理のバッチの便利さの代わりになるものはない。「アルファチャンネルから選択範囲を作り、キャンバスレイヤーから切り抜いてレイヤーにする」とか「800pixel角にサイズを統一してsRGBに変換し、特定のフォルダにJPG保存」などなど、いつも使うアクションをショートカットで実行させるとか。

Photoshopアクションやバッチがなかったら、数10分で終わる仕事に何日もかかるかもしれない。たぶんPhotoshopの最も重要機能かも。関係ないけど、「今やったアクションをもう一度やる」っていうショートカットがほしい!

●Photoshopに初めてまともなカラーパレットが!

ああっ! Photoshop CC(2014)、まともなカラーパレットパネルがついたじゃないか〜〜! Painterの使いやすいカラーパレットが僕的に標準になってたので、Photoshopのカラーパレットの貧弱さにはいつも悩まされてた。

あんなもので色は選べないので、HSBスライダを使うよりしかたなかった。最近ではHUDカラーピッカーなどという意味不明機能も加わったりして、Adobe何やってんの? って感じだった。しかたなく、サードパーティのPainter風カラーパレットを使ってたけど、ようやく正式についたかー! なんで今まで放置されてたんだ?

< http://bit.ly/1pVVxx1
>

●追記! CLIP STUDIO PAINT

ここまで書いたところで、CLIP STUDIO PAINTがPhotoshopの代替になるか試してみたところ、驚きの事実が判明。次号に続く!

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
>
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/
>

長くなりすぎた。新しいiPadアプリ「Adobe Sketch」と「Adobe Line」の件も書きたかったけど、別の機会に。っていうか、数回分のデジクリ原稿が作れるくらいの小ネタ系テキストが用意済みなのに、どんどん後へ押し出されていってしまう〜。あっそうだ! 賞味期限切れネタ在庫処分特集やろうっとw いっぱいあるよ〜。

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
< https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii
>
・ハイウェイ島の大冒険 < http://kids.e-nexco.co.jp
>
・INTER-CULTUREさんの3Dプリント作品販売
< http://inter-culture.jp/Buy/products/list.php?category_id=63
>