極親しい間柄の年上の女性Aさんが、10月に休みがとれるのでドイツに行きたいという。私も行きたいが金がないので留守はまかせてくれと言ったのだが、金ならトイチで貸すから行きましょうというので、いろいろ悩んだ末フランクフルトへと旅立った。
今回の旅はフランクフルトを起点に、ジャーマン・レイルパスを使い、ドレスデン、ライプツィヒなど主に東をまわる計画で、到着翌日はフランクフルト近郊の町・ハーナウに住む友人のManuel君を訪ねた。
今回の旅はフランクフルトを起点に、ジャーマン・レイルパスを使い、ドレスデン、ライプツィヒなど主に東をまわる計画で、到着翌日はフランクフルト近郊の町・ハーナウに住む友人のManuel君を訪ねた。
さて彼が住んでいるのはどんな町かな、とGoogleマップで調べていたところ、そこからさらに東に30キロほど離れたところにもっと気になる町を見つけてしまった。
小さな川のほとりに小さな町と、その中心に小さな城。シュタイナウだ。
正式にはシュタイナウ・アン・デア・シュトラーセという。
アン・デア・シュトラーセとは「街道沿いの」の意。街道とは通商路「ヴィア・レギア」を指す。
車窓から通り過ぎるいくつもの『ドイツの小さな町』に、いつかは降り立ってみたいと思っていたのだが、ここだったら行けるじゃん! 調べたらハーナウからRE(近郊快速列車)で30分!!
戦災をまぬがれ、中世の佇まいを残し、グリム兄弟の家もオリジナルのまま保存されているという。
なにやらオレの理想とする“ドイツの小さな町”ではないか!
Manuel君に相談すると、「それなら僕が車で案内しましょう!」と言ってくれたので、お言葉に甘えて彼の運転するメタリックグリーンのシュコダに乗って、ハーナウから一路シュタイナウ・アン・デア・シュトラーセへと向かったのだった。
ハーナウからアウトバーンで一路シュタイナウへ。
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このときのBGMはクラフトワークの『アウトバーン』。
アウトバーンを聴きながらアウトバーンを走る!
まさかこんな日が来ようとは! これだけですでに感動指数は100を越えている。
シュタイナウでアウトバーンを降りる。日本と違って高速を降りたらすぐに美しい一般道、というか田舎道だ。
跨線橋を渡り、シュタイナウの駅前を抜ける。Googleマップで見たとおり、静かな風景。日曜だからか人の姿は皆無。
車はゆるやかなS字カーブを下り、旧市街外側の駐車場に停まった。ちなみに駐車場もアウトバーンもタダ。
緑の草原のむこうに木立が続き、それらに守られるように美しいキンツィヒ川が流れている。その向こう岸が旧市街だ。
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橋を渡るとそこは中世のヨーロッパそのものだった。石造りの壁と木組みの家。
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猫も多い。美しく、住みやすい町には何故か猫も多いのだ。
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すぐにでも歩き回りたい! と思ったが、まずは腹ごしらえということになった。
午後2時という微妙な時間、そして日曜日ということもあって開いている店は少ないが、手近なカフェのテラス席に入ることができた。ここのオススメはパンケーキだという。
パンケーキというとつい甘いものを想像してしまうが、そういう訳でもないらしい。そこで私とAさんがポークとオニオンのパンケーキなるものを注文してみたら、こんなのが出てきた。
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写真ではわかりにくいかもしれないが、枕のように巨大な餃子である。こいつの中には、油に浸った大量の豚肉とタマネギを炒めたようなものがぎっしりと詰まっており、そいつに対しさらにサワークリームを塗りたくって食べるのだという。
確かに旨かったが、同じ味が延々と続く。さすがに完食できなかった。
「わー、すごいラードですね。ドイツ人でも全部食べるのはムリですヨー。」Manuel君が言う。彼はチキンの乗ったサラダなんぞ食べてる。賢明でしたね。
それにしてもタイヘンな量であった。晩飯までに消化できるかな。確実に1キロ増えた腹をいたわりつつ、我々は町歩きを始めた。
石畳の道の両脇に木組みの家々が並ぶ。そして、ところどころにグリム兄弟ゆかりの彫刻がみられる。
カエルとお姫様。
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7人の小人はちょっとコワイ。
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通商路「ヴィア・レギア」。実際この場所にあった訳じゃないけど、当時のモノを移して再現しているようだ。この轍がフランクフルトのはるか西からライプツィヒのもっと東へと続いていた。
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城壁隅の水場へ至る小径。こういう人の気配を感じられる空間は好きだ。車が入って来られない道、そこに高低差があったりすると、それだけでシアワセな気持ちになる。
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壁も風情がある。年月を経た地肌の色を大切にする美意識が、そこに住む人々全てで共有できているのだろう。日本の近代化遺産のとある物件は、文化財に指定された途端、表面を削ってピカピカにしちゃった。
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広場には市庁舎、その隣にお城。うーん、ホンモノなのにまるでレゴのようだ。
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西洋時代劇よりも先にレゴに興味を持ってしまった者は、古今東西同様の感想を持つ。Manuel君も「ホントにレゴみたいですネ」。
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跳ね橋の滑車やら門扉のヒンジなどディテールばかり撮っていたら、城全体の写真撮るのを忘れていた。
中庭に入る。城壁の中はリフォームされて、住宅として供給されているらしい。
ここも
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ここも普通に住宅だ。ちょっとびっくり。
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そういえば、ドラえもんでドイツのお城に住む話があったなあ。たしか12巻の最後のエピソードだったと思う。そのお城にも似ているように思えるし、カリオストロの城っぽくもある。
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感想がすべて、小学生の頃に見た漫画とアニメに基づいているってのは、大人としてどうなんだろ。
この季節のドイツは太陽が低く、日差しがとても美しい。
煉瓦の壁に石造りの城と木々の影が落ちる日常。
再度メインストリートに出たり
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脇道に入ったりしつつ、シュタイナウの午後を堪能したのだった。
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夕方の猫
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水路
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煉瓦の建築
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シュタイナウは小さいのですぐにひとまわりできる。しかも時間帯によって表情がどんどん変わってゆくのだ。
観光名所を巡る旅も悪くはないが、こういう町にこそじっくり滞在して日々散歩を楽しみたい。そんな贅沢ができる日が来るといいなあと思いつつ、ハーナウへの帰路についた。
帰りの車の中で「近くにこんな素敵な町があったんですね。知りませんでした」とManuel君。そりゃ私が長いこと大宮に住んでいて川越に行ったことがなかったようなものか。
【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/
>
1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
小さな川のほとりに小さな町と、その中心に小さな城。シュタイナウだ。
正式にはシュタイナウ・アン・デア・シュトラーセという。
アン・デア・シュトラーセとは「街道沿いの」の意。街道とは通商路「ヴィア・レギア」を指す。
車窓から通り過ぎるいくつもの『ドイツの小さな町』に、いつかは降り立ってみたいと思っていたのだが、ここだったら行けるじゃん! 調べたらハーナウからRE(近郊快速列車)で30分!!
戦災をまぬがれ、中世の佇まいを残し、グリム兄弟の家もオリジナルのまま保存されているという。
なにやらオレの理想とする“ドイツの小さな町”ではないか!
Manuel君に相談すると、「それなら僕が車で案内しましょう!」と言ってくれたので、お言葉に甘えて彼の運転するメタリックグリーンのシュコダに乗って、ハーナウから一路シュタイナウ・アン・デア・シュトラーセへと向かったのだった。
ハーナウからアウトバーンで一路シュタイナウへ。
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このときのBGMはクラフトワークの『アウトバーン』。
アウトバーンを聴きながらアウトバーンを走る!
まさかこんな日が来ようとは! これだけですでに感動指数は100を越えている。
シュタイナウでアウトバーンを降りる。日本と違って高速を降りたらすぐに美しい一般道、というか田舎道だ。
跨線橋を渡り、シュタイナウの駅前を抜ける。Googleマップで見たとおり、静かな風景。日曜だからか人の姿は皆無。
車はゆるやかなS字カーブを下り、旧市街外側の駐車場に停まった。ちなみに駐車場もアウトバーンもタダ。
緑の草原のむこうに木立が続き、それらに守られるように美しいキンツィヒ川が流れている。その向こう岸が旧市街だ。
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橋を渡るとそこは中世のヨーロッパそのものだった。石造りの壁と木組みの家。
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猫も多い。美しく、住みやすい町には何故か猫も多いのだ。
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すぐにでも歩き回りたい! と思ったが、まずは腹ごしらえということになった。
午後2時という微妙な時間、そして日曜日ということもあって開いている店は少ないが、手近なカフェのテラス席に入ることができた。ここのオススメはパンケーキだという。
パンケーキというとつい甘いものを想像してしまうが、そういう訳でもないらしい。そこで私とAさんがポークとオニオンのパンケーキなるものを注文してみたら、こんなのが出てきた。
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写真ではわかりにくいかもしれないが、枕のように巨大な餃子である。こいつの中には、油に浸った大量の豚肉とタマネギを炒めたようなものがぎっしりと詰まっており、そいつに対しさらにサワークリームを塗りたくって食べるのだという。
確かに旨かったが、同じ味が延々と続く。さすがに完食できなかった。
「わー、すごいラードですね。ドイツ人でも全部食べるのはムリですヨー。」Manuel君が言う。彼はチキンの乗ったサラダなんぞ食べてる。賢明でしたね。
それにしてもタイヘンな量であった。晩飯までに消化できるかな。確実に1キロ増えた腹をいたわりつつ、我々は町歩きを始めた。
石畳の道の両脇に木組みの家々が並ぶ。そして、ところどころにグリム兄弟ゆかりの彫刻がみられる。
カエルとお姫様。
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7人の小人はちょっとコワイ。
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通商路「ヴィア・レギア」。実際この場所にあった訳じゃないけど、当時のモノを移して再現しているようだ。この轍がフランクフルトのはるか西からライプツィヒのもっと東へと続いていた。
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城壁隅の水場へ至る小径。こういう人の気配を感じられる空間は好きだ。車が入って来られない道、そこに高低差があったりすると、それだけでシアワセな気持ちになる。
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壁も風情がある。年月を経た地肌の色を大切にする美意識が、そこに住む人々全てで共有できているのだろう。日本の近代化遺産のとある物件は、文化財に指定された途端、表面を削ってピカピカにしちゃった。
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広場には市庁舎、その隣にお城。うーん、ホンモノなのにまるでレゴのようだ。
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西洋時代劇よりも先にレゴに興味を持ってしまった者は、古今東西同様の感想を持つ。Manuel君も「ホントにレゴみたいですネ」。
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跳ね橋の滑車やら門扉のヒンジなどディテールばかり撮っていたら、城全体の写真撮るのを忘れていた。
中庭に入る。城壁の中はリフォームされて、住宅として供給されているらしい。
ここも
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ここも普通に住宅だ。ちょっとびっくり。
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そういえば、ドラえもんでドイツのお城に住む話があったなあ。たしか12巻の最後のエピソードだったと思う。そのお城にも似ているように思えるし、カリオストロの城っぽくもある。
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感想がすべて、小学生の頃に見た漫画とアニメに基づいているってのは、大人としてどうなんだろ。
この季節のドイツは太陽が低く、日差しがとても美しい。
煉瓦の壁に石造りの城と木々の影が落ちる日常。
再度メインストリートに出たり
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脇道に入ったりしつつ、シュタイナウの午後を堪能したのだった。
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夕方の猫
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水路
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煉瓦の建築
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シュタイナウは小さいのですぐにひとまわりできる。しかも時間帯によって表情がどんどん変わってゆくのだ。
観光名所を巡る旅も悪くはないが、こういう町にこそじっくり滞在して日々散歩を楽しみたい。そんな贅沢ができる日が来るといいなあと思いつつ、ハーナウへの帰路についた。
帰りの車の中で「近くにこんな素敵な町があったんですね。知りませんでした」とManuel君。そりゃ私が長いこと大宮に住んでいて川越に行ったことがなかったようなものか。
【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。