Take IT Easy![41]人工知能の未来
── 若林健一 / kwaka1208 ──

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2014年最後の話題は、人工知能を取り上げてみることにします。

人工知能そのものは古くからありましたが、最近はiPhoneやAndroidで音声会話による操作ができたり、人間が操作しなくても動く自動運転車の登場により現実味を増してきた感があります。

人工知能の発達により生活が便利になっていく反面、人工知能の高度化が加速的になれば、いずれは人工知能が人類を滅ぼしてしまうという懸念も持ち上がっています。このことは、Yahoo!ニュースのトップでも記事が取り上げられるほど一般的な話題になっています。

人工知能で人類は滅亡する?  ホーキング博士の警告で議論再燃
< http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141209-00000021-jij_afp-sctch
>

記事の中のホーキング博士のコメントを引用します。

「われわれがすでに手にしている原始的な人工知能は、極めて有用であることが明らかになっている。だが、完全な人工知能の開発は人類の終わりをもたらす可能性がある」

「ひとたび人類が人工知能を開発してしまえば、それは自立し、加速度的に自らを再設計していくだろう」




●私たちのイメージする人工知能

「人工知能が人類に終わりをもたらす」と聞いて、イメージするのは映画「ターミネーター」の「スカイネット」のような存在ですね。

「スカイネット」は人類に敵意を持って攻撃していますが、本当にこんな世界になってしまうのでしょうか。もし、本当に人類よりも賢く高度化するのであれば、人類が戦争を起こすような過ちを犯すことのない知能へ進化し、むしろ人類へ攻撃するようなことはしないのでは、と私は考えていました。

しかし、このような考え方は間違っているのだそうです。そもそもの間違いは
「人工知能が人間の延長線上にあるもの」と考えているところにあります。

私たちがイメージする「人工知能」は、人間の言葉を話し、人間のような形をしていて、人間のような思考をするもの。これらはあくまでも映画の中だけの描写であって、現実の人工知能は必ずしもそうではありません。

●人工知能を擬人化することは、人工知能に対する理解を妨げる

例えば、悪意を持った人工知能のひとつにコンピュータウイルスがあります。コンピュータウイルスの中には、自分自身のコピーを作って拡散し、より多くのコンピュータシステムを利用不能に陥れるものがあります。中には軍事利用に開発されたものがあり、これらは「攻撃的人工知能」の代表格です。

核施設を狙ったサイバー攻撃『Stuxnet』の全貌
< http://wired.jp/2012/06/04/confirmed-us-israel-created-stuxnet-lost-control-of-it/
>

「攻撃的人工知能」は、攻撃する意図をもって開発されているわけですから、その設計意図通りに動作しているだけで、「敵意」といった人間的な感覚も存在していません。

ここではコンピュータウイルスを例として挙げましたが、制御機能や監視機能など単機能のものも含めれば、人工知能は様々な機能や役割を持ったものが考えられます。つまり、人工知能には様々な形態があり、必ずしもヒューマノイド的なものではないと言えます。

●人工知能による攻撃

映画に出てくる人工知能は、武器を使って人類を攻撃してきます。これも映画の中だけの「擬人化された人工知能」で、実際にはそんな面倒なことをする必要はないそうです。

コンピュータウイルスのようなものが、発電や配電施設に入り込んで電気の配送を止めることによって、人類の生活に必要な様々な機能を停止させることができ、人類はあっと言うまに滅亡に追い込まれます。人間の世界でいう「兵糧攻め」のようなものです。

また、「攻撃的な人工知能」だけが人類に危機を与えるわけでもないそうです。例えば、ある高度化した人工知能に対して「地球に優しくしろ」という命令を与えたとして、その結果導き出した合理的な答えが「人類の存在が地球に優しくない」だとすれば、人工知能は「いかにして人類を排除するか?」を計算し、実行するでしょう。

この時も人工知能は人類に対して敵意を持っているわけではありません。人間の指示に従い、人類によって与えられたビッグデータから合理的な結果を導き出したにすぎないのです。

●人類による人工知能の攻撃的利用が人類に終わりをもたらす

以上のことから、「人工知能が人類に終わりをもたらす」ということが、人工知能の人類に対する敵意によるものでない、ということが伝わったでしょうか?むしろ、人類を攻撃するために人類によって作られた人工知能の方が問題であり、直近の課題は「人工知能の進化を止める」ことよりも「人類による人工知能の悪用を止める」ということなのだと思います。


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