先週、「機能のデバイスを組み合わせてひとつの機能を実現する」といった機器について取り上げ、これらを実現する上で「単機能の複数のデバイスを連携する機器間インターフェースの標準化」が重要になると述べました。
これまでにも機器と機器をつなぐ「標準インターフェース」はいくつか存在するのですが、その多くは遅くて操作が複雑なものとなっています。その理由のひとつが、規格を標準化する際に生まれる冗長性にあります。
例えば、「HDDレコーダーに録画された番組を、Wi-Fi接続されたタブレットで観る」といった機能を実現する「DLNA」という「機器間標準インターフェース規格」があります。
この規格に対応した機器同士であれば、HDDレコーダーとタブレットがそれぞれ異なるメーカーであっても連携して、「HDDレコーダーに録画された番組を、Wi-Fi接続されたタブレットで観る」ことができます。
一方、同様の機能を提供するメーカー独自の規格に、Appleの「AirPlay」があります。これも、ある機器の中の動画をWi-Fiで接続された別の機器で再生できるインターフェース仕様ですが、こちらはApple独自のためApple製品もしくは、Appleからライセンスを受けた製品でなければ利用することができません(現実には独自に解析してサポートしている機器もありますが、それらの動作は保証されていません)。
このふたつの規格、最終的にできることはほぼ同じなのですが、以下の点において「AirPlay」の方が使いやすいものになっています。
1)機器同士が繋がって、再生できるようになるまでの時間が短い
「AirPlay」は接続可能な機器が限定されているため、ネットワーク上に存在する目的の機器をすぐに見つけられる。
「DLNA」は接続可能な機器の性能が異なる可能性を考慮しているため、機器探索に時間がかかる。
2)再生できる動画が探しやすい
「AirPlay」は動画などのコンテンツが機器内のどこに入っているかまで決めているため、機器が繋がればすぐに動画のリストを利用者に提示できる。
「DLNA」は、ほとんどの機器でコンテンツの置き場所は統一されているものの、機器によって異なる場合があるため、利用者が自分で機器内を探して表示しなければならない。
このように、一般的に規格を標準化すると冗長性が生じ、速度や使い勝手の面で悪い影響が現れます。
冗長性の少ない規格で標準化すれば解決するのですが、そうすると規格通りのことしかできなくなり、どのメーカーが作っても同じもの、つまり各メーカーの特長が出せなくなってしまうという作り手のデメリットが生じます。
規格の標準化には、このような「ジレンマ」があり、これを解決できなければ「単機能の複数のデバイスを連携する機器間インターフェースの標準化」は進まないかもしれません。
そして、このジレンマを破るのは大企業ではなく、ユニークな単機能のデバイスを作る小さな企業かもしれません。
これまで大企業からの出向者で構成された「業界団体」が「規格の標準化」を推進し、そういった企業がジレンマに陥っていること、現在は小回りのきく小さな企業が増えていることを考えれば、小さな企業同士が連携してものづくりをし「既成事実」的に標準化が進んでいくかもしれない、そうなれば面白いなと考えています。
【若林健一 / kwaka1208】 kwaka1208@pote2.net
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