crossroads[17]シンプルさを失うApple
── 若林健一 ──

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こんにちは、若林です。日本時間の13日深夜(14日の早朝にかけて)、Appleの開発者向けイベント「WWDC」の基調講演が行われます。このメールが配信されている頃には、その内容が明らかになっていることでしょう。

開発者向けイベントの基調講演ということもあり、ここで発表されるのは新しいOS、新しいサービスが中心ですが、もしかすると新製品の発表があるかもしれません。

最近のAppleの業績低下からか、リーク合戦が凄まじかった数年前に比べるとやや落ち着いた感がありますが、それでもAppleファンとしては楽しみなイベントのひとつです。

巷では新しい製品に驚きがない、魅力がないと言われるAppleですが、私自身は最近のAppleの一番の問題点として「ラインアップの複雑さ」が挙げられると考えています、それも年々ひどくなっている。

シンプルさがAppleの特徴であり、 シンプルさこそがAppleの武器であり、Appleのシンプルさが好きだった自分にとっては、今の製品ラインアップはとても残念な状態になっています。




●「i」の意味

iPhone、iPad、iTunesなどAppleの製品やサービスは「i」で始まるものが多いことは知られていますが、これらのネーミングが行われた始めた頃、「i」には「個人向け製品」という意味がありました。

iMacの発売後、ノート型iMacとも言える「iBook」が発売されたことによって、個人向け製品には「i」、プロ向け製品には「Power」がつき、ノート型の「Book」デスクトップ型の「Mac」との組み合わせで、すべてのMacが表現されるようになったのです。

個人向けデスクトップ:iMac
プロ向けデスクトップ:PowerMac
個人向けノートブック:iBook
プロ向けノートブック:PowerBook

その後、CPUがPowerPCからIntel製CPUに切り替わったタイミングで「Power」は使われなくなり、代わりに「Pro」が使われるようになりました。

また、ノート型は「MacBook」となったことにより、次のように変化しましたが、それでも4種類に分類されることには変わりがありませんでした。

個人向けデスクトップ:iMac
プロ向けデスクトップ:Mac Pro
個人向けノートブック:MacBook
プロ向けノートブック:MacBook Pro

●複雑になる製品ラインアップ

Steve Jobs復帰後にこのように整理された製品ラインアップの考え方が、最近はまた複雑なものになりつつあります。

従来は1モデルだけだったiPhoneも、今は画面サイズの異なる3つのバリエーション「SE」「6s」「6s Plus」があり、iPadはiPad Pro 12.9インチ、iPad Pro 9.7インチ、iPad Air 2、iPad mini 4、iPad mini2が現行製品として販売されている状態。

「iPad Pro」に至っては「i」と「Pro」の両方を冠するというカオスぶりで、「節操がない」としか言いようがありません。

●Appleは再びシンプルさを取り戻せるか?

現在の状況になった要因を一言でまとめるなら、「製品のコモディティ化によるユーザーの多様化」といったところになるのでしょうけれど、そんなのまったくAppleらしくない。

Apple Watch以降やや焦りの見えるApple、この焦りが現状の複雑さを生んでいるような気がします。

ユーザーに媚びない、自分たちが世界を作っていく、そんなAppleが好きだった。病的なまでにシンプルさを追求するAppleが輝いていた。

最近、ジョナサンアイブ(Appleのデザイン担当副社長)が製品発表時、あまり前面に出て来ないけど、もしかするとAppleにとてつもなく大きな変化をもたらす何かを生み出すことに集中しているのかもしれない。

その発表が今回のWWDCであるのかもしれない、などと勝手な妄想を抱きながら基調講演のニュースをチェックしたいと思います。


【若林健一 / kwaka1208】
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