crossroads[35]未来の車の前に今やるべきこと
── 若林健一 ──

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こんにちは、若林です。

ここ数年来、問題視されている高齢者による交通事故、最近もそんなニュースを頻繁に見かけます。

高齢者運転でまた悲劇 「生活の足」…進まぬ免許返納
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161113-00000054-san-soci


問題が高齢者特有のものなのかどうかはよくわからないのですが、老若とは関係のない、最近の車のユーザーインターフェースの分かりにくさも、要因のひとつなのでは? と思うところがあり、その点について触れてみます。




●分かりにくい近頃のオートマティック車

よほどの車好きやこだわりのある方を除けば、ほとんどの方はオートマティック車に乗ってますよね。

現在市場に出回っている車のラインアップもオートマティックが基本ですし、マニュアル車を探す方が難しいぐらい。

従来のオートマティック車のシフトレバーは、奥から手前方向に向かって、次のような並び順で、モードを切り替えて操作するものがほとんど。

P:パーキング
R:バック
N:ニュートラル
D:ドライブ

最近の新しい車もこの並びは同じです。しかし、最近の車はこのシフト操作が直感的でなく、誤操作しやすいと感じています。

従来の(旧型の)車は、モードを変更した時、レバーが各モードの位置で止まるようになっていました。

一方で、最近の車はシフトレバーにゲーム機で使われるようないわゆる「ジョイスティック」型を採用しているものがあり、前後に倒してから手を放すと、元の位置(中央)に戻るようになっています。

従来の操作方法だとレバーの位置が動くので、モードを変えているという感覚があったのですが、「ジョイスティック」型ではそれを感じにくく、むしろ「後ろに動くためにレバーを前に操作する」「前に動くためにレバーを後ろに操作する」という、車の動きとレバーの動きの不一致に違和感を感じてしまいます。

「ジョイスティック」型であれば、車を前に動かす時にレバーを前に倒し、後ろに動かす時にレバーを後ろに倒す方が、よほど直観的ではなないでしょうか? 

言葉だけではなかなか伝わりにくいと思いますが、実際に操作してみるとその違和感は理解していただけると思います。

以前、車検の代車として利用した車がこの「ジョイスティック」型で、間違って前に飛び出してしまわないか、不安で何度も確認するほどでした。

これは、いわゆる「操作と動作の対応付け不一致」による、悪いユーザーインターフェースの一例であると思います。

●改善案

もちろん、従来と操作の方向が反対になることで混乱される方もいるでしょうし、前に倒せば前、後ろに倒せば後ろに動くというのが万人向けというわけでもありません。

むしろ、そういった対応付けに慣れているのは、ゲームで遊んだことのある比較的若い世代で、もしかすると年配の方にはかえって分かりにくいかもしれません。

このような状況に対応するひとつの案として「レバーの操作と動作の対応付けを設定で変更できるようにする」というものが考えられます。

車の中で、カーナビなどの機器の動作を設定することとはあっても、車そのものの動作を設定するという考え方はあまり聞いたことがありませんが、現在の車はほとんど電子制御となっていますので、技術的には難しくないはずです。

●新たな問題

設定できるようにすることで生まれる新たな問題もあります。それは、同じ車種でもオーナーによって設定が違う可能性がある。

車を借りて運転したら操作が違ってて混乱した、誤操作で事故してしまった、ということも起こりそうです。車を共有する家族の中で、好みの設定が違っていても不便ですね。

ではどうすればよいか? 個人ごとにキーを持つようにして、使うキーによって設定が変わるようにする、そもそも乗った時に毎回設定するようにする、どれもまだまだ新しい問題を生みそうで、100点満点は取れそうにないですね。

●どうしてそこまでして変えなければならないのか?

あれこれ考えて行くと、行き着く答えは「従来の操作方法でいいじゃない」ということになりそうです。

車メーカーもこの問題に気づいていないわけではないと思うのですが、車内部の制御が電子的に行われるようになったこと、電子制御の方が可動部分の多い機械式よりも故障率が下げられるというメリットがあるから、あえて変更しているのではないかと想像します。

今は、その過渡期なのですね。

●自動運転と並行して考えなければならないこと

車のIT化、進化は凄まじく、完全な自動運転も技術的には可能になってきていますし、完全な自動運転が実現されればレバーの動かし方なんて取るに足りない話。

しかし、自動運転をみんなが自由に利用できるようになるのはまだまだ先の話ですし、自動運転の前にソフトウェア的アプローチで対応すべき課題がたくさんありそうです。


【若林健一 / kwaka1208】
http://kwaka1208.net/aboutme/


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