グラフィック薄氷大魔王[569]「Mini Moogと中学生の僕がほしかったモノ」「新しい音楽」
── 吉井 宏 ──

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●Mini Moogと中学生の僕がほしかったモノ

1年前のニュースだけど、Mini Moogが復刻されたそう。本物の新品!
http://rittor-music.jp/products/2017/05/60595?ch=sound


学生時代は時間があれば名古屋のヤマハの2階のシンセ売り場に行っては、買えるはずもないこのMini Moogとか、高いポリフォニックシンセとか眺めたり、わけもわからずいじってた。高嶺の花を通り越して夢の世界。

バイトもしてたけど、自分がそれを手に入れるのなんて考えられないような値段だった。10万を切るKORGのMS-20さえ無理と思ってた(友達に安く譲ってもらったMS-10は持ってた)。

こういうモノって、大人になった今なら買えなくもないじゃん?





この復刻Mini Moogは特別に高いけど、たいていの楽器はMacBook Proに較べりゃ安いし。でも、高級シンセを単体で一台手に入れたって、意味ないことくらい学習しちゃったんだよなあ。究極的にはプライベートスタジオと、機材一式を丸ごと用意しないと活かせない。

パソコン上のDTMなら全部、本当に安く一式揃うけど、リアルの機材も信じられないくらい安くなってる。ポリフォニックのアナログシンセや、16chや32chのマルチトラックレコーダーだって、数万円で買えるんだよ!

高い機材をローンで買い込んで苦しんでた、二十代前半の僕が地団駄踏んで悔しがってる。

大人になった今なら、中学頃にほしかったプラモやラジコンだってラクラク買える。そういう趣味を復活してみたい気持ちはないわけじゃないけど、そのための時間を費やすこと考えたら現実的じゃない。

そもそも、お金より時間が惜しくなってる。

で、おもしろかったのが昨年実家に長期滞在して、たくさんの用事をしてたときのこと。いろいろ入り用でお金も使ったんだけど、親父が実費や立て替え分の数万円を渡してくれようとする。

一瞬、感覚がギュルルル〜って昔に戻って驚いた。中学生の僕が突然何万円ももらった感覚というか。思わず「プラモやラジコンが買えるぞ!」ってww (お年玉の数千円以外にそうやってお金をもらったことない)

その何万円を持って、自転車漕いで買いに行く様子がリアルに浮かんでクラクラした。88ミリ砲セットが買える! 四号戦車が買える! フタバの4chプロポだって買える!

「あれ? もうプラモやってないし、模型屋さんもずいぶん前になくなったし」って我に帰って悲しくなったw

●新しい音楽を探さなきゃいけないの?

「ほとんどの人は30歳になるまでに新しい音楽を探さなくなる」英国人対象の調査結果
http://amass.jp/106231/


これも同様の記事。

「新しい音楽を探さなくなる年齢について調べた調査結果が明らかに」
https://nme-jp.com/news/56379/


「探さなくなる危険性」って何w ほとんどの人が探さなくなるのなら、30歳を過ぎて探してる人のほうが危険だw 無理に新しい音楽を追いかけるのは不自然かも。

僕はといえば、「最新の音楽を追っかける」は、昔からほとんどやってない。歌謡曲もロックもフォークもニューミュージックも聴いてなかった。「今流行中の」とか「同時代性」という概念がほとんどなくて、恥をかいたりもした。カラオケ大嫌いだし。

リアルタイムで聴いてたのは、YMO周辺や事務所のFMラジオで流れてた80年代の洋楽くらい。特にPWL関連か。やはり二十代後半までということになる。

最近は、YouTubeやiTunesストアやApple Musicのおかげで、昔から好きな音楽の周辺や前後の時代とか、広く探索するようになった。Apple Music探索中に気になったものは全部「+追加」ボタン。あとで聴いて気に入ったものを残して削除、って感じ。

Apple Musicでは関連やおすすめが表示されるので、そっちへ探索の足が進むこともある。本屋で「偶然手に取った本が大当たり!」と同じ。

なので、僕の中での新曲は50〜80年代の音楽ばかりw エンニオ・モリコーネなんてApple Musicがなかったらちゃんと聴いてないはずだし、セサミストリートの音楽も同様。

ごく最近で言えば、「スイッチト・オン・バッハ」のウェンディ・カルロスから飛び火して、ジョアン・ジルベルトのボサノバを聴くようになったりとかも(カルロスが自らプロデュースを申し出て制作されたのが、「三月の水」という1973年のアルバムだそう)。

っていうか、ちょっと前に「14歳頃に聴いてた音楽で好みは形成される」って話もあった。それが自然ならば、やはり逆らう意味もない。昔から好きな音楽を一生聴くのがやっぱ自然だろう。
http://fnmnl.tv/2018/02/19/47697?articleview=more


僕的には14歳の1976〜77年頃に、何を繰り返し聴いてたかといえば、「JAWS」のサントラ盤やテレビから録音した映画音楽ってことになるな。最近ジョン・ウィリアムスやロン・グッドウィンが、やたら僕の中で存在感を取り戻しつつあるのはそういうわけだったか。


【吉井 宏/イラストレーター】
http://www.yoshii.com

http://yoshii-blog.blogspot.com/


新しいCDが出たら無条件に買ってたといえば、例外的にピチカート・ファイヴがあったな。2001年の解散まで。これもやはり元をたどれば、細野晴臣プロデュースだったからデビューアルバムを買ったんだった。

・スワロフスキー「招き猫」と「HOOT HAPPY BIRTHDAY」も出ました。
https://bit.ly/2qWbmZh


・rinkakインタビュー『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii