わが逃走[220]ビヨンドをつくる。その2 の巻
── 齋藤 浩 ──

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先日、『世界ポスタートリエンナーレトヤマ』から封書が届いた。

「わが逃走[217]ビヨンドをつくる。の巻」でお披露目した、自主制作ポスター「超」が、見事落選したとのこと。

しかしその陰で、ほとんど何も考えずノリと勢いだけで作った「超-X」が入選したらしい。

このポスターは情熱云々よりもシャレというか、ただ作りたくて作ったものだったので、入選の喜びよりも「へぇー」という感じ、意外性による戸惑い?の方が強かった。世の中たぁ、わかんねえもんだな。

ビジュアルは、X型の超という字が空中に浮かんでいる、というもの。

https://bn.dgcr.com/archives/2018/07/05/images/001





そもそも「超-X」というタイトルからして手抜き感丸出しである。そのまんまやんけ(注・ビジュアルは手抜きではない)。

ネーミングの元ネタはYMOのベスト盤「X-∞」や北斎の別名「画狂老人-卍」など、本人はかっこいいと思って名付けたのであろう、中二病っぽさをにおわせるものたち。

果たして私には、恥ずかしい名前にしようという意思があったんだかなかったんだか。うーん、ありましたね。

ちょうどこの「超-X」を作ってる頃(今年の春)は、“空飛ぶ円盤”がマイブームだったのだ

・わが逃走 第215回 円盤はロマン の巻
https://bn.dgcr.com/archives/20180412110200.html


時間のあるときは、ただぼーっと空を眺めていたわけだが、待ってても何も飛んで来ないので、仕方ないから描いた。

そもそも円盤にかぎらず、何だかわからんものが飛んでるってだけで面白いと思う。

不思議なもの、何かを超越したもの=“beyond”な存在は、いつの世もたいてい空からやってくるのだ。

ところで、プラモデルの中には空飛ぶ円盤というジャンルが昔から存在する。

ただの円い皿をわざわざ組み立てて、何が楽しいのかと甚だ疑問だが、ある一定の需要が見込まれるからこそ、多くのマスプロダクトが存在しているのであろう。

そしていずれのパッケージにも、「1/72」「1/864」などの縮尺表記がプリントされている。

「誰が測ったんだよ!」とツッコミを入れるも、「ほほー、実物は5階建てのビルくらいの大きさか……」などと妙に納得している自分に、あとになってから気づくのだ。

ちなみに最近の未確認飛行物体のトレンドは円盤型に限らないようで、三角形やら多面体やらいろいろある。

だったら今回制作した「超-X」もプラモデルにしてくれないか??

実際、立体として破綻のない形状だし、6パーツくらいでできるかもしれない。

3Dプリントするまでもなく、プラ板切り抜いて貼り合わせるだけで見本はできちゃうから、こいつをプラモメーカーに自主プレしてみようかな!!

「1/144」ってことにすれば300円のガンダムと同縮尺だ。

8センチ角で作ったとしたら、実物は一辺11メートル52センチということになる。そんなものが空飛んでたらそりゃ驚くね。

などと考えている私は今年で49歳になります。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。