crossroads[58]小学校のICT環境事情
── 若林健一 ──

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こんにちは、若林です。

いま京都のとある小学校で、プログラミング教育に関するお手伝いを進めようとしています。具体的な内容はまだこれからなのですが、まずは地域内でモデル校的な位置付けの学校で、先生向けの研修会や指導案を作るための勉強会を実施することになりそうで、とても楽しみです。

しかし、この取り組みで現在の学校のICT環境に多くの問題があることも、あらためてわかりました。一般的にはあまり知られていないと思いますので、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。





細かいことを挙げだすとキリがないのですが、まず知っておいていただきたいのは、学校のPCにはソフトウェアを自由にインストールすることができないということです。

学校の共有物なのであたりまえと思われるかもしれませんが、学校の先生ですらインストールすることが許されません。

新しいソフトウェアのインストールには教育委員会の許可、場合によっては教育委員会の担当の方が作業しなければなりません。担当の方の都合が合わなければ、すぐには対応してもらえないこともあります。

2020年のプログラミング導入に向けて、新しいツールを試行しようとする動きがあるにもかかわらず、インストールが障壁となって、先生方の取り組みを妨げる要因になっているのです。

インストール済みのソフトウェアにも、制限がかかっている場合があります。例えば、学校のWindows PCではInternet Explorerしか使えないようになっています。

Windows10をお使いの方ならご存知かと思いますが、Windows10の標準ブラウザはedgeというブラウザで、Internet Explorerはメニューからわざわざ探さないと使えないようになっています。

これは、Internet Explorerが最新のweb技術であるHTML5への準拠レベルが低く、より準拠レベルの高いedgeへの移行を、Microsoft社自身が進めていることが背景にあります。

しかし、学校のPCではInternet Explorerのアイコンがタスクバーに常駐しており、edgeを起動しようとすると、起動できないように制限がかかっているのです。みなさんが会社や自宅で使っているWindows PCとは逆ということですね。

学校のPCでは、そんなブラウザしかつかえないように「わざと」設定されています。中には、Microsoft Officeに拡張機能をインストールしているものがあります。

これはMicrosoft Officeの機能がわかりやすいように、メニューの表示などを変えるものでなのですが、そういったソフトウェアのメーカーの方には申し訳ありませんが、子供専用にカスタマイズされたOfficeなんて、社会に出た時に触れる機会なんてありません。学ぶ必要がないことを学ばされているわけです。

子供達が学校で勉強するのは、社会にでる準備をするため。でも、学校で使えるPCは社会に出た時に使わない機能ばかりが搭載されている。

これで何を学べというのでしょうね?

そして、そういった環境を作るために、一般的なPCを導入するよりも多額の予算が使われている。その予算をもっと他のことに回せば、もっとよい環境を作ることができるにもかかわらずです。

もう、なんだかな〜って感じです。

このシステムを作った人たちは、いったい何を目標にしているのだろうか?完全に自分たちの都合だけで「子供向け」を定義していて、本質的に子供達のことを考えているとは思えません。

行政側の仕組みも面倒なことが多そうで、一筋縄では行かなさそうですが、子供達のためになる環境づくりを頑張ってみます。


【若林健一 / kwaka1208】
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子供のためのプログラミングコミュニティ「CoderDojo」
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貧困問題に取り組みお寺の福祉活動「おてらおやつクラブ」
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