わが逃走[242]西米良の構造美 の巻
── 齋藤 浩 ──

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宮崎と熊本の県境に、人口1100人の村がある。四方を山に囲まれたこの美しい地・西米良出身の写真家小河孝浩さんが宮崎県立美術館で個展を開催、写真集を発表するというので、ちょいと行ってきた。

会場を訪ねると、小河さんは以前と変わらず元気に迎えてくれた。展示や写真集については、多くのメディアで取り上げているのでここでは書かないが、彼にしか撮れない写真がずらっと40点並んでいる様は圧巻であり、そしてまた見る者はいずれの作品にも感情移入してしまう。

小河さんとネット上で知り合ったのは今世紀に入ってからで、実際にご本人と会ってからまだ10年も経ってないのだが、まるで子供の頃からの付き合いのような気がするから不思議だ。

で、オレも図々しいなと思いながらそのまま村までついていって、温泉につかって旨い料理をご馳走になって、そのまま家に泊めてもらったのだった。

今回はそのときにふらっと散歩してみつけた「構造美」を紹介しようと思う。





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一ツ瀬川の対岸から、村の中心「村所」を見る。前も山だが、後ろも山。鉄道橋のようなこのトラス橋は「村所橋」。

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村所から橋を越えると、細い路地が入り組んだ風情のある風景が続く。西米良の尾道と勝手に呼んでいる。尾道と違うのは、水が豊富なところかな。水路と路地と農地と住宅が続く。

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国道と役場の間にも、細い路地がある。路地は歴史であり、文化だ。これは街灯を支える木製の柱だが、補強角材の緑化っぷりが素晴らしい。緑が濃いから、空気も濃い。

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かりこぼうず大橋を渡り、対岸を撮影。いつか歩きたい道。

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詠み人知らずのアートを鑑賞。トタンの垂直のおかげで、整然と積み上げられたボトルコンテナのナナメが際立つ! これぞ勾配アート界における知られざる名作といえるのではないか。

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竹原のバス停からひょいっと山側に入ってみた。棚田の脇をうねる道。光を浴びる稲も美しいが、粘土造形のようなマッス、この量感はどうだ!

というわけで、西米良カメラ散歩でした。交通の便は良いとは言えないけど、散歩したり、ぼーっとしたりするには最高です。こんどは紅葉の頃に行きたい


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
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1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。