グラフィック薄氷大魔王[668]マーク・コスタビ、ピーター・シュイフ
── 吉井 宏 ──

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●マーク・コスタビ

今知って衝撃を受けたんだけど、80年代後半から90年代初頭にかけてブームだった、マーク・コスタビってまだ59歳! ほぼ同世代なんだ。マーク・ライデンが1963年1月生まれで同学年と知って以来の衝撃。あ、二人ともマークだw

二人のマークの活躍は80年代後半から見てたから、当時25〜26歳の僕的には少なくとも10〜20歳は年上だと思ってた。





ドキュメンタリー映画「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」(続編のほう)を観てたら、マーク・コスタビ本人が出てきたのでした。助手を大勢雇って工房で制作することについて、けっこう長くしゃべる。2012年時点ではまだまだ何人も使って量産してた模様。

80年代と違って、今は助手を雇って制作したり外注するのは普通のことだし、同映画にもソル・ルウィットが設計図を書いて、工場に発注する形で作品制作する話も出てくる。

(ただ、「絵画作品」の場合、コスタビがいくら「ルネッサンスとか巨匠はみんなそうやって大勢雇って制作してた」とか言っても、「投資目的じゃなく、好きな絵を買いたい」って人は「隅々までアーティスト本人が描いた絵」しかほしくないだろうな、とは思った。)

コスタビ、最初は広告や有名作家の小説の表紙とかで、 ド〜ン!って出てきたんじゃなかったっけ。80年代後半には職場で、「コスタビみたいな」って言い方されてたの覚えてる。

日本では1992年頃にセゾン美術館や三越が展覧会やってブームの頂点だったようだけど、その後あまり聞かなくなった。バブル時代の匂いも纏ってる。

ミニマルアートとコンセプチャルアートしか買わないハーブ&ドロシー夫妻が、多数のドローイングを買ってたのが意外。

ドキュメンタリーの中でガイドが言うには「無名のアーティストを雇って自由に描かせ、気に入ったものに自分のサインを入れる点で、コンセプチャルアートの最たる例」だそう。ただし、夫妻が買ったのは助手を雇う前の84〜86年の作品、とコスタビは言ってる。

「ハーブ&ドロシー」の佐々木芽生監督のブログに、映画のためにコスタビにインタビューした件について書かれてた。
http://megumisasaki.com/?p=390


『あれから25年後の今、彼の名前がメディアに出る事はほとんどない。それどころか、彼の評判はがた落ち。何年か前に、Con Artist- Rise and Fall of Mark Kostabi(ペテン師アーティスト マーク・コスタビの成功と凋落)なんていうドキュメンタリー映画が作られたほど。』

僕的にコスタビ作品は、いいな! って思えるものも多いし、一人のアーティストが作り上げた平面絵画の「様式」としては最高クラスと思う。しかし、やはり世間的にはそういうイメージなんだ。それでも佐々木監督は、自分のやり方を信じ、正直で開けっぴろげな態度のコスタビに好感を持った、と。

その映画はYouTubeに全編あったけど、リンクはしない。

「ラッセンとは何だったのか?」っていう本の、「日本とラッセンをめぐる時空を超えた制度批判の(ドメスティックな)覚書」(大山エンリコイサム著)を思い出した。2056年の日本で大規模なラッセン展が開催されている、という設定の論考。

内容は、「アート界に無視され続けてきたラッセンが『再発見』され、21世紀を代表する現代アーティストとして、不動の地位を築いている理由や根拠」で、アートに関するテキストのパロディみたいなもの。しかし、読むうちに、ホントにそうなんじゃないか? と思えてくるw

状況や見方によっては、コスタビが「再発見」されることもあり得るのかもしれないな。

●ピーター・シュイフ

「ハーブ&ドロシー」から、もうひとつ。名前と作品が出てくる多数のアーティストたちは、ミニマルやコンセプチャルがほとんどなので、知らなかった人が大半。メモっていったら114名もいた。

そんな中、ピーター・シュイフ(Peter Schuyff)は知ってた。ものすごく久しぶりに思い出した。1990年の上京直後か、もうちょっと前か、銀座のどこかのギャラリーで見たことある。薄い画集かパンフみたいのがどこかにあるはず。

ピーター・シュイフは、僕の立体的表現のルーツの一つなのです。立体や浮き彫りを絵で表現する時、色分けすることでボリューム感アップするのと、隣り合う色との相乗効果。めちゃくちゃカッコエエ! と思った。
https://bit.ly/3aLwlVm


まあ、シュイフを知るよりずっと以前から、SFアーティストのクリス・フォスが宇宙船を色分けするのがめちゃくちゃカッコエエ! って思ってたんだけどw
https://bit.ly/2EoBjLJ


要するに、絵として立体感を表現しづらいライティングや形状でも、第二の手がかりとしての色分け模様を描くと、ググッと浮き上がってくるというところに惹かれたんだけどね。

●「ハーブ&ドロシー 」について

いちおう映画の説明。現在、YouTubeムービー(有料)で配信されてます。

・「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」(2010年)

現代アートのコレクションを寄贈した夫妻のドキュメンタリー。佐々木芽生監督。

ニューヨークに住む郵便局員と図書館司書の公務員夫婦。1960年代から、生活に無理のない範囲で、アーティストの若者たちから少しずつ小さな作品やドローイングを買い続ける。黎明期からのミニマルアートとコンセプチャルアートに絞り、何十年も。

時が経ち、狭いアパートに買い集めた4000点以上の作品は、とんでもない価値を持つ一大コレクション「ヴォーゲル・コレクション」と呼ばれるようになり、最終的にワシントンのナショナルギャラリーに寄贈される。

・「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」(2013年)

その後の二人と寄贈されたコレクションを追う続編。同じく佐々木芽生監督。1LDKの部屋に溜め込んだ現代美術作品は、ナショナルギャラリーでさえ1000点を引き取るのが限界。

ドロシー曰く「一つの美術館に収まらないのはわかってた」ってw 

考え出されたのが「50x50プロジェクト」。50の州の美術館にそれぞれ50点ずつ寄贈。全米の寄贈先を巡る二人の旅と、コレクションがどのようにそれぞれの美術館で展示されてるかについて。

二人が寄贈したコレクション「VOGEL 50x50」はネットで見られる。写真が未のものも多いけど。
https://vogel5050.org/



【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com

Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/


しかし、二人のマークを含め、みなさん若い頃から活躍してるのね。古谷徹が星飛雄馬やったの15歳の時だったのか! と、天童よしみが「大ちゃん数え歌」を歌ったの16歳なんだ! くらいの衝撃w (同じく「いなかっぺ大将」関連で、最近判明したのが、声優の声でいちばん好きだった岡本茉利がキクちゃんやったのも16歳!)。あ、どちらも川崎のぼる作品。

っていうか、知ってる声優が70年代でほぼ止まってる。

◯所属してるパリのエージェントCostume3piecesの毎年恒例の展覧会、今年は新型コロナの影響で、バーチャルで開催(9月末まで)。仮想ギャラリーで33名のアーティストの作品が見れます。今回のテーマは「小屋(cabanes)」。僕は回して見れる3D作品を出してます。
https://www.costume3pieces.com/cabanes/


◯ウォーキングアプリ「STEP ISLAND」

ミクシィのゲーム感覚のウォーキングアプリ「STEP ISLAND」(現時点 iPhoneのみ対応)。歩き回るキャラクターを数十匹提供してます。6月初旬にアップデートされ、キャラも増えてます。

App Store https://apps.apple.com/jp/app/id1456350500

公式サイト https://stepisland.jp


○吉井宏デザインのスワロフスキー

・三猿 Three Wise Monkeys
https://bit.ly/2LYOX8X


・幸運の象 LUCKY ELEPHANTS
https://bit.ly/30RQrqV