グラフィック薄氷大魔王[682]2年ぶりの液タブ再導入「WACOM Cintiq 22」
── 吉井 宏 ──

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●液タブなしで2年間

Cintiq Pro16インチと27インチを、2018年秋に手放した。以来、約2年間は「液晶タブレット無し」期間になった。

液タブと板タブを併用する煩雑さに疲れ、「板タブだけでなんとかしたい!」と強く思ったのが大きな理由。そのへん、自分で梯子を外した反動による板タブへのこだわりは、この連載にもしつこく書いてたとおり。

それでも液タブを使いたい時は、iPad Pro12インチをSidecarやAstropad Studioで使用した。iPadとMacは無線接続またはUSB一本で、取り回しが非常に快適。Procreateなど使ってiPad単体でも出来ちゃうし。でも画面が狭い不満はあった。

そんな時、2019年7月に「Pro」でないエントリーモデルの、Cintiq 22(正確には21.5インチ)が発売された。スペック的にProよりは落ちるものの、解像度はフルHDで普段の使用には問題なし。色域がsRGBもカバーできてないほど狭いのはちょっと心配だが。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000077.000016902.html





●再導入を決心

以来1年間、本当に、ず〜〜〜っと迷ってたw 今までも、購入しても思ったほど活躍させられなくて悩む。無ければ悩まないってことで手放してしまう。ずっと、買っては手放しの繰り返し。

届いた瞬間に「またイヤになって手放すんだろうな」って考えるほどの、ほとんど液タブ恐怖症。2年間は液タブなしで平和だったのに、また心穏やかでない日々が来るのか、とw

(最近では13インチの格安エントリーモデル「WACOM One」の存在感が強烈。あの鉛筆を模したペンで使ってみたいなあなどとも思ったり)

仕事のラフを大量に描く作業が続いてた今年夏、ついにポチってしまった。Cintiq22は、モノクロのラフやスケッチ描き用途に限れば活かせるはずだ! と。

●使ってみた

届いた。MacとPCの計3台にHDMIで接続、どれも問題なく使える。Cintiq Proとくらべるとガラス/アクリルが厚いので視差は多少ある。サイズ的にはなんとか許容範囲のデカさ。もう2インチ小さければ、メガネ無しで使えるサイズだけどね(iPadや小型Cintiqは近眼メガネなしで見える範囲で使える)。理想的には18〜20インチくらいかな。

画面はツルツルではなく、アンチグレアのフィルムが貼り付けられていて多少の摩擦がある。僕的にはフェルト芯でちょうどいいくらいの摩擦。ペーパーライクフィルムも買ったけど、いつものように、貼り付けず仮止めで使ってる。ただし、ザラザラの表面より裏側の剥離フィルムのほうが描きやすかったりするw

色はちょっと頼りない。3D作業や2Dペイントで色を扱う場合、後でEIZOのディスプレイで見ると違和感あったりする。まあ、ラフやスケッチ作業には何の支障もない。Wacom Color Managerでいちおうプロファイルを作ってみたけど、あまり意味なさそう。

あと、Cintiq22はファンレス。それでも特に熱くもならない。以前使っていたCintiq Proには冷却ファンがついていて、静かな部屋ではファン音がシューシュー聞こえるのがすごく気になり、手放す理由の一つにもなったのだった。

●立てて、寝かせて、使う

Cintiq22には20年近く前の初代Cintiq15や17などと同じタイプの、可変スタンドが採用されている。スタンドの角度調整がラク。VESA規格のネジ穴で取り付けられており、着脱自由。ゴム足がついていて机に平らに置ける。
http://www.yoshii.com/dgcr/Cintiq22-01

写真、上から、「スタンドで使う」、「スタンドを取り外して完全に寝かせて使う」、「立てて板タブで使う」。
http://www.yoshii.com/dgcr/Cintiq22-02

しばらく使ってみた感じからすると、22インチでフルHDは、どの使い方でもしっくり来るサイズ。16インチでは小さすぎたし、27インチでは大きすぎたことを改めて実感。

液タブユーザーのみなさん、たいてい「手前に液タブ、奥に普通のディスプレイ」という置き方されてる(写真はその再現)。資料を表示したり、液タブの色が不安だったり、板タブ的に液タブを使ったり、いろんな都合だろう。しかし、大きなディスプレイ2枚を使うのは、見るからに無駄だし机が狭くなる。ペンタブを使う上では非常に煩雑。1枚でなんとかしたい。
http://www.yoshii.com/dgcr/Cintiq22-03

将来的にはCintiq Pro 24に買い換えるべきかも。他のCintiq Proと同様、AdobeRGBを90%カバーする広い色域。27インチのProを使ってたときは、Wacom Color Managerを使ってキャリブレーションしてたけど、EIZOのColorEdgeと比較しても遜色なかった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000016902.html


24インチを寝かせて液タブ用途、立ててディスプレイ用途で使用するのは理想に近い。机の上が液タブ1台で済む。次に買い換えるときはそうしようかな。

●僕的「液タブがイヤにならないコツ」

今回気がついた重要ポイント。今まで、せっかく購入した液タブなのに、「ツルツルがダメ」「姿勢がツライ」「思ったほどうまく描けない」など、定期的にイヤになってた。使わない大きな液タブが机を一つ占領しててさらにイヤになり、それで手放すことが多かった。

2年の液タブ不在期を経て、「液タブがイヤになるのは当たり前」って気構えができてた。「ぜったい使わなくちゃいけない」じゃないのだ。「どうしても大きな液タブを使いたいときにだけ使えばいい」のだ。年に数回しか使わなくたっていいじゃないかw

いつもは机の下にしまっておき、必要なときだけ引っぱり出す。そりゃ多少は面倒だけど、いつも目に入って「使いこなせてない敗北感」を醸し出されるよりはマシ。モノを置くスペースの問題なのかもしれんけどw


【吉井 宏/イラストレーター】
http://www.yoshii.com

http://yoshii-blog.blogspot.com/


2011年からの「なぜか観てない映画を観るシリーズ」の続きの「観てない映画、落穂拾いシリーズ」。夏頃までに終了するはずが、シリーズ的にはずせないものを追加したり、昔作った別のリストが発掘されたり、どんどん増えてしまった。現状、残り80本ほど。

最近はペースが極端に落ちて1週間に1本くらいになってて、このままだと2021年いっぱいかかっても観きれないかも。「落穂拾いシリーズ」の後、「なぜか観てない」ドラマシリーズやアニメなどが控えてる。

○吉井宏デザインのスワロフスキー

・十二支(丑年)OX
https://bit.ly/37gbNEN


・三猿 Three Wise Monkeys
https://bit.ly/2LYOX8X


・幸運の象 LUCKY ELEPHANTS
https://bit.ly/30RQrqV