これまでの「腕時計百科事典」では、高額な腕時計を一本持つよりも、手頃な腕時計を複数本使いまわしたほうが良い、ということを何度か書いてきました。通常、腕時計は一本ずつしか使わないので、使わない腕時計はどこかに置いておくことになるわけですが、腕時計はどうやって保管しておけばよいのでしょうか。
◎腕時計の大敵
腕時計の保管方法を考えるに当たり、腕時計が避けなければいけない三つのトラブルについて考えましょう。一つ目は衝撃です。精密機械である腕時計が衝撃に弱いのは、古いものでも新しいものでも同じです。二つ目は水です。液体の水だけでなく、目に見えない湿気も大敵です。三つ目は磁力です。とくに古手の機械式時計は磁化しやすいことを知っておきましょう。
◎衝撃を避ける
腕時計が壊れる原因ナンバーワンは、腕時計を落としてしまうことです。これを避けるために、保管時は箱に入れたり、クッション性のある布に包むなど、腕時計を保護するものに入れることおすすめします。
せっかく外側を保護しても、保管している箱自体を落としてしまうと元も子もないので、箱は安定感のある場所か、低い場所に置くほうが良く、布に包んだ上で箱に入れる方法がベターです。また、精密機械用のクッションを内蔵した携帯ケースなども便利です。
◎水を避ける
直接水がかかる可能性がある場所に、腕時計を置きっぱなしにするのは論外ですが、湿度の高くなる場所に保管してしまうことはよくあるようです。古い腕時計で、文字盤上にぽつぽつと見られる経年変化の、原因のひとつが湿気だと言われています。
保管環境だけでなく、腕時計が持っている湿度についても気をつけましょう。腕時計を腕につけた状態で一日過ごすと、それなりの湿度を含んだ状態になります。これをそのまま箱にしまってしまうと、その湿度が逃げることなく内部にとどまってしまいます。
使用した時計は、乾燥した場所に少なくとも数時間放置してから、保管場所に収めましょう。カメラなどで使用する調湿庫も、腕時計の保管場所としてはおすすめかもしれません。衣類や部屋用の除湿剤を併用するのもアリです。
◎磁力を避ける
磁力を避けることについては、以前に比べるとそれほど気を使わなくてもよくなりました。厚みのあるブラウン管テレビの上や、ステレオセットのスピーカーの上などは、外した腕時計を置いておくのに格好の場所でした。
いずれも腕時計が磁化しやすい危険な場所です。現在では、スマホなどで利用できるワイヤレス充電器の近くが、避けるべきポイントです。
自動巻の腕時計を巻き上げることができる巻上げ機は、モーターが内蔵されているのである程度の磁力がありますが、良心的な商品であればきちんと磁気対策がなされているはずなので、それほど気にしなくてもよいでしょう。
◎化粧箱
腕時計を購入したときに付属している化粧箱は、腕時計の保管場所としておすすめしません。見栄え重視のデザインなので使い勝手が良くないものが多い上に、何度も開け閉めすることを想定した設計ではないからです。
以上のことを念頭に置いて、腕時計用の保管ケースとして市販されているもののなかから、自身のコレクションがうまく収まるものを探してみてください。
おそらく、納得できるものを見つけるのは、腕時計本体を探すよりも難しいはずです。結果、他のケースで代替することになると思いますが、その過程も楽しんでいただければ幸いです。
【吉田貴之】info@nowebnolife.com
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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。