再評価大百科[011]固定電話を再評価する
── 吉田貴之 ──

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固定電話を持っていないなんて社会人としてけしからん、というような時代がありました。携帯電話やインターネットが普及した今でも、その感覚を持っている中高年は多いようで、しばしばSNSでも話題として取り上げられます。固定電話を持つ意義や用途は残っているのでしょうか。





□固定電話とは

そもそも、固定電話が電話の主流だった頃、「固定電話」というような呼称は使われていませんでした。携帯電話が開発、実用化されてからも、「電話」といえば固定電話のことを指していました。

2000年に携帯電話の契約数が、固定電話の契約数を上回ったそうですので、その前後に「固定電話」の呼び方も一般的になってきたように思います。

□固定電話の普及率

携帯電話がこれだけ普及しているからといって、固定電話の契約数がどんどん減少しているかといえばそうでもなく、現在も世帯普及率は6割〜7割程度はあるようです。ただし、世代による差が明確になってきており、世帯主の年齢が40代では7割程度であるのに対し、20代では1割未満だそうです。

□固定電話の現状

仕事ではまだまだ現役感のある固定電話ですが、現在、個人が固定電話を使うシーンはかなり少なくなっているように思います。先程紹介した固定電話の普及率も、IP電話やひかり電話などの設置数も踏まえて計数されているようですので、実際に連絡手段として固定電話を使っている人の数はもっと少なくなるのではと推量します。

ただし例外があって、高齢者は固定電話をメインに使っている場合が多く、営業や勧誘のターゲットになっている、というデータもあります。

□固定電話のよいところ

固定電話の優れているところをみてみましょう。ひとつは音質の良さです。携帯電話での通話や、インターネットを使った通話の品質が良くなった、といっても、固定電話の音声品質には及んでいないようです。

また、固定電話は地域ごとに番号が割り振られており、アイデア次第で防災やビジネスなどに活用することができます。前述したように、固定電話は世帯単位で設置されています。逆に言うと、携帯電話は個人に紐付いているのです。ビジネスなどで代表番号として使う場合は、固定電話が好まれます。

□固定電話のよくないところ

固定電話の一番のデメリットは、「専用の電話回線が必要である」というところでしょう。電話回線の維持には相当の手間や費用がかかっていることは、想像に難くありません。現在の電話回線を使った固定電話の運用は、2020年代半ばにはなくなる予定になっており、前述のIP電話などへの置き換えが進んでいます。

□固定電話は残る

回線は置き換わり、重要度も変化していきますが、固定電話がゼロになることはしばらくなさそうです。会社や家族など、場所に紐付いたコミュニティがあるかぎり、連絡手段としての固定電話は残っていくのでしょう。コミュニティのあり方も変容している昨今、その保証は難しいのも事実ですが。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。