再評価大百科[009]ラジオを再評価する
── 吉田貴之 ──

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「ラジオを再評価する」となると、再評価も何も、登場以来評価され続けているメディアなのでは? という疑問が浮かびます。

ちょっと調べてみると、メディアが言うところの「若者のラジオ離れ」は確実に進んでおり、1975年には10代の4割以上が聴取していたラジオは、2010年代後半にはほぼ0になっていました。





□ラジオの長所

ラジオが持つ長所は色々あります。まず、聴取するのに複雑な機械が必要ないことが挙げられます。

登場当時は大きかったラジオも、トランジスタの登場で辞書かお弁当箱くらいのサイズになり、以降、技術の発展とともに薄く、小さくなっていきました。現在ではスマートウォッチや、ワイヤレスイヤホンに内蔵できるくらいに小さくなっています。

□日常と非常と

ラジオ放送は映像を伴わない分、言葉だけで情報を伝えようとします。そのため、「ながら作業」にうってつけのメディアです。仕事中にラジオを聴いている職場も少なくないはずです。

一方で、阪神淡路大震災以降、災害の際の情報取得ツールとして見直されています。省電力で必要な情報を得られるラジオは、日常でも非常でも役に立つツールです。

□ラジオの短所

他方、ラジオの短所も挙げてみましょう。まず、テレビなどと同じように、好きなタイミングで好きな番組を聞き始められないのは問題です。

録画視聴やオンデマンド試聴に慣れたユーザーには、時間を決めてラジオを聴くというのはハードルが高いかもしれません。

また、「音声ですべての情報を伝える」というメリットの裏返しで、音声情報の取得が難しいユーザーには全く役に立たないツールになってしまいます。

□視聴スタイルの変化

昨今、多くのユーザーはスマホアプリでラジオを聴取しているようです。スマホアプリでは、本来であれば電波の入らない別のエリアの番組を楽しめたり、好きなタイミングで好きな番組を聴いたりと、ラジオの短所を見事に補っています。

「聴く本」やいわゆるポッドキャストのように、インターネットを使った、ラジオと同じ長所を持ったメディアも複数登場しており、それらとラジオの差別化が難しくなっているように思います。

□若者にどう訴求するか

ラジオにはどこかノスタルジーを感じる要素があり、聴取者の大半は中年〜高齢者です。若者の聴取率が0に近い現状、若者にどう訴求するかが鍵となっているのは間違いないでしょう。

単純に、「インターネットがなくても聴くことができる」というのはすごいことなのですが。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。