再評価大百科[004]扇風機を再評価する
── 吉田貴之 ──

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昨今、夏に気温が35度を超えることは珍しくもないですが、昭和の終わり頃、1980年代には一日の最高気温が30度前後でした(参考:https://weather.goo.ne.jp/past/)。

当時、エアコンの普及率は4割程度で、うちわや扇風機で暑さを凌いでいた家庭も多かったようです。扇風機はエアコンに取って代わられてしまったのでしょうか。




◇エアコンのパートナーとして

エアコンか扇風機か、どちらかしか使えないのであれば、多くの人はエアコンを選ぶことでしょう。しかし、実際には多くの家庭ではエアコンと扇風機とを併用しているはずです。各メディアでその併用のメリットが取り上げられたことの効果であると推量しますが、部屋の空気が循環していることや、風が直接当たると気持ちがよいことを経験的に知っていたのだと思います。

◇換気

エアコンとの併用、という視点でいうと、扇風機と構造が近いサーキュレーターも話題に出しておくべきでしょう。空気を循環させることに特化したサーキュレーターは、室内の空気を効率よく均質にします。また、室外に向けてサーキュレーターを稼働させ、室内の空気を排出し、室内の気圧を低くすることで、新鮮な空気を取り入れる、という使い方もできるようです。コロナ禍にみまわれた2020年、換気の重要性が再度認識されることになりました。

◇高機能化

エアコンの普及率が高まるに連れ、扇風機の低価格化がすすみました。2000年代中頃まで、多くの扇風機が2,000円から5,000円程度で販売されていたように記憶しています。筆者の実体験では、「500円+税」で有名メーカーの扇風機を購入したことさえあります。

その反動なのか、現在販売されている扇風機は高級化/高機能化が進んでいます。空気の流れが整えられ、自然なリズムで風が送れるようになり、首振りは縦横無尽に可能で、モーターが変更され消費電力が少なくなりました。価格は一気に3万円から6万円に跳ね上がりましたが、高機能化によって「一年中使える家電」になりました。

◇ハンディータイプの普及

エアコンのパートナーとして、一年中使える家電に変貌した扇風機ですが、これはあくまで室内での話です。2010年代後半には、室外でも扇風機を使う流れがうまれました。持ち歩けるハンディータイプの扇風機は、若い女性を中心に広がりました。

背景には、スマホの普及によるモバイルバッテリーの性能が高くなったことや、猛暑日といわれる35度以上の気温になんとか対応したい市場の要求があったのでしょう。ジャケットにサーキュレーターを組み込んだ空調服も、扇風機の一種であるとみなしてもいいかもしれません。

一度はエアコンにポジションを奪われたかに思われた扇風機ですが、小型化や高機能化により再評価されているようです。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。