昨今、カセットテープの価格が高騰しているそうです。すでにカセットテープの製造はほとんど終了しているため、音楽の記録媒体として主流だった頃、つまり1990年代後半くらいまでに製造/販売されたカセットテープが取引されているようです。
20年以上前のカセットテープが現在も「未使用」で残っており、その残存数や流通数よりも欲しい人の数が上回っているため、価格が高騰しているということなのでしょう。音楽を聴くためだけなら、便利な手段が色々ある現在、カセットテープを欲しがる人がいるのはなぜでしょうか。
◇ネガティブなイメージ
実際にカセットテープを使っていた私が思い浮かべる、カセットテープのイメージは次のようなものです。頭出しができない、伸びる、切れる、絡まる、などなど。どうしてもネガティブなイメージが先行します。
◇音質の問題
使っていて一番気になったのは、カセットテープに録音された音楽は、少しこもったような、例えるなら薄い膜を一枚かけたような音になってしまうことでした。特に、CDが普及してからは、音質の違いを明確に意識するようになりました。
◇問題を逆手にとる
しかし、デジタルでの録音や再生が一般的になった現在、この「少し劣化したような音」に魅力を感じる人も多いようです。カセットテープを経由した音は、カセットテープを使っていた世代にとっては懐かしく感じるし、カセットテープを知らない世代にとっては体験したことのないエフェクトとして、新鮮に受け止めているのではないでしょうか。これまでデメリットだと思っていたものが、実は特徴だったというのは、再評価の醍醐味でもあります。
◇モノとしての魅力
カセットテープは、「モノ」としての魅力にも優れています。レコードほどは仰々しくないし、かといってスマホで音楽を聞くよりは面倒な、音楽の詰まったモノとして「ちょうどいい」のがカセットテープなのです。プラスチックの素材感、回転部の機構、ネジ止めのソリッド感などもモノとしての魅力を高めています。
◇カセットテープの今後を予想する
カセットテープはビデオテープなどと同じ、磁気テープの一種です。カセットテープやビデオテープは家庭からは消えてしまいましたが、デジタルデータの保管には大容量磁気テープが使用されることもあります。容量あたりの価格も安く、条件さえ整えばハードディスクなどよりも長期に保管することができるそうです。
ということは、どこかに保管している数十年前のカセットテープが、まだ再生できる可能性は十分にあるのです。このような、古い音源を収録したカセットテープが掘り出されて、流通に乗る……などということもあるかもしれません。
【吉田貴之】info@nowebnolife.com
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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。