再評価大百科[003]セダンを再評価する
── 吉田貴之 ──

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昭和では当たり前だった「車を所有すること」は、平成を経て、当たり前ではなくなりました。なかでも「セダン」と呼ばれるタイプの車は、SUVやミニバン、トールワゴンなどの新しいタイプの車におされ、かなり少なくなりました。そんな「セダン」を評価するポイントについて探っていきます。





◇セダンの定義

車が好きな人であれば、「セダン」と聞くと想像する形があります。ボンネットとキャビン、リアデッキが明確に分かれた、いわゆる3ボックスタイプの車です。しかし、広義には2ボックス(キャビンとリアデッキが分かれていないもの)も含まれ、また前述のSUVやミニバン、トールワゴン「以外」で、2ドア(いわゆるクーペ)を除いた、背の低い車を総称することもあります。

◇乗り降りしにくい、運転しにくい

セダンが選ばれなくなった理由はいくつかあります。ひとつは乗降のしにくさでしょう。車高の低い車は、特に年齢を重ねるにつれて、乗り降りが面倒なものです。また、乗車した際の目線が低くなるため、身長の低い女性などには運転しづらいのも理由のひとつだと思われます。タクシーは、ドライバーも利用者も、いろいろな人が乗る可能性がある乗り物ですが、背の高いタクシーが徐々に増えていることからも、車高が高いことの利便性が推し量れます。

◇年寄りくさい

さらに、「いつかはクラウン」という言葉に象徴されるように、昭和の時代にはセダンの高級車に乗ることがステイタスであった時代がありました。これを知っている世代にとっては、セダンがおじさんくさい、年寄りくさい乗り物である印象があり、敬遠する傾向にありそうです。

◇安定感がある

このように、選択肢の増加とイメージの低下に伴い、徐々に需要が減っていったセダンですが、それでもセダンが良いと思うユーザーが少なからずいるはずです。その理由を分析してみましょう。ひとつは、その「安定感」にありそうです。高速度で巡航する自動車は、横風などの影響を受けやすい乗り物です。橋の上や、台風のときなど、トラックや軽自動車が風に煽られてひっくり返るシーンを見たことがある方も多いでしょう。車重がそれなりにあって、車高の低いセダンは、走行安定性に優れた自動車です。

◇燃費が良い

また、車高が低いということは、空力性能にも優れていることになります。正面から見たときの面積が少ないほうが、風の抵抗を受けずスムーズに走行できるであろうことは感覚的にも理解できます。また、SUVやミニバンに比べると車重が軽いので、同じ人数を乗せたときの燃費はセダンに歩があります。

◇機械式立体駐車場に強い

都会のマンションや有料駐車場などで採用されることの多い機械式立体駐車場では、車高に制限があることがあります。車高の高い最近の自動車では、利用できる台数に制限があったり、駐車料金が割高になったりする場合もあります。セダンが一般的だったころに作られた機械式立体駐車場もまだまだ多いので、駐車場で困らないのはセダンのメリットの一つかもしれません。

◇格好いい

しかし、一番の評価ポイントは「格好いい」ことです。格好良さは主観が強い評価基準ではありますが、車高の高い車の「格好いい」は、「威厳がある」とか「圧倒される」という言葉に代替される格好良さではないでしょうか。ひとつのモノとして「格好いい」と思わせてくれるのは、セダンタイプの形状であることは多そうです。

その証拠に、昭和のセダンが「旧車」として人気を集めていますし、現在でもスポーツタイプの車のほとんどがセダン的な車高で登場しています。車をもつことが当たり前ではなくなった昨今、ファッションや趣味として車を持つのであれば、セダンの数々のデメリットも愛おしく感じるのではないでしょうか。


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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。